part.2


 私の名前はクリス。アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州生まれ。年齢は、もう七十五歳になるだろう。空軍所属、NASAに転属して、様々の部署に転属となった。有人ロケットでもう何回宇宙を飛んだことか。

 いや、このクリスという名前はある意味、正確では無い。何故ならは、もう二十三年五ヶ月十二日、五時間五分二十三秒の前に、不慮の事故で死亡しているからだ。

七十五歳という年齢も、七十五年時間が過ぎただけの事だ。

 私が調べた限りでは、「クリス」が亡くなったのも、どうも彼が操縦する飛行機の不慮の事故によるものらしい。

 これは、あくまでニューハンプシャー州のニュースや、SNS等の様々な情報から、私が拾い集めたものである。定期的に送られている、NASAからの情報からでは入ってこない。

 『私』は、言うなれば「クリス」のコピー、といえば分かりやすいんじゃないだろうか。私は「クリス」の人格や記憶を、全てそっくりそのまま今のコンピュータに移した、一つの「疑似人格」に過ぎないのだ。

 そして「クリス」という疑似人格は、私という「頭脳」の一端でしかない。

「クリス」も、単なるコンピュータのメモリの記憶でしかない、と言えばいいのだが、ここまで「疑似人格」として認識されてしまえば、まるで「クリス」が生身の彼とは別に、この場所にもう一人存在するようなものだ、と考えていいのではないだろうか。

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