囚われの1週間

うらら

あの日

「あの日、ぼくが殺人現場を見ていた?そんなはずはない!あの日は友人宅で誕生日会をしていたんだ!殺人現場を見るひまなんてない!」

そう答えた羽場ゆうじの顔から嘘は見受けられなかった。

「くっそ!殺人のことすら覚えてないのかよ!お前以外犯人の顔を目撃していないんだぞ!捜査は難航しきったままだ。」

羽場に取り調べをしている葵かいとがしびれをきらしていた。

警察の調査によると事件が起こったのは5月19日午前7時。あるお金持ちな家族が4人揃って殺されていた。社長の伊藤雄一、その秘書である伊藤みかん、長女の伊藤かずえ、次男の伊藤るかである。伊藤グループの財力は凄く日本の国家予算と闘えるほどである。その殺害現場をみたのが羽場だったらしい。らしいと言うのはあくまでその時間に殺人現場の近くにある防犯カメラにうつった人物が羽場だったからだ。そのあと羽場が勢いよくは走る姿が見えたから警察は羽場が事件を目撃したに違いないと確信していた。その日は羽場の友人である小林誠の誕生日で小林の家で誕生日会を開いていた。羽場の他に生見花、髙橋みつひ、湯川ひろとが参加していた。羽場はこいつらと朝まで飲んでいた。酒豪で有名であった髙橋と湯川がつぶれるまで飲んでいた。警察による取り調べの収穫はゼロに等しかった。

「あの日お前はどこでなにをしていた?」

「小林の家で誕生日会をしました」

「他には?」

「ランニングを30分ほどしました」

「、、、他には?」

「特になにもないです」

この調子である

「羽場さん、筒森恭華の家から伊藤一家を刺したと思える刃物が見つかりました」

「筒森恭華のアリバイは?」

「自宅付近のコンビニに15分ほどいたそうです。防犯カメラで確認済みです」

「筒森の自宅から殺害現場までは何分ぐらいだ?」

「かかって10分ぐらいです」

「筒森恭華をこの事件の重要参考人として、」

「待ってください!恭華は人殺しなんてしません!絶対違うひとが」

先程まで黙っていた羽場が口を挟んだ。それもそのはずである。羽場と筒森は交際していた。葵もその事は知っていた。だからこそ本当は筒森をかばっているのではないかと思っていた。

「だが筒森の自宅から出てきた凶器についてはどう説明する?」

「う"、、、それは、、、」

「な?筒森が犯人以外信じられないんだよ」

「じゃ、じゃあ僕に一週間時間をください!なんとしてでも事件の記憶を取り戻して真犯人を暴きます!お願いします!」

「しかしなぁ、俺が許しても上が許してくれるとは限らんぞ!」

「上の方々に『もしあなたが犯人だった場合凶器をあんなに分かりやすく机の上においておきますか?』とお聞きください。ぼくはその殺人現場とやらにいってみます!何かつかめるのかも知れないので」

そう言って羽場は元気よく取調室を出て現場へ向かった。



「頑張れよ、ゆうじ」

葵は小さな声でそう言うと取調室を出た。なぜ下の名前で呼んだのかはわからない。


羽場に残された日数・・・・7日

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