183話 リョウ将軍

「ぬおおおおおおおおおお!」


「は、離せ!」


 増援に来たと思われる厳ついオッサンは、未だに俺の腰に抱き着いている。


「シンジさまぁああああああ!!」


「あ、あのリョウ将軍が.......」


 この行動には、仲間であるミカエルも流石にビックリしている様子だった。


「お、おい。あんた誰だよ。なんで俺の名前を知っている」


 俺がオッサンに誰何するとー。


「ふむ、そうでしたな。ワシも随分と年を取った故、覚えて無いのも無理は無いでしょう」


 腰から離れ、素に戻る。このテンションの差は何だろうか。


「何処から話せばいいのやらーー」


 いや、知り合いに魔人なんて居ないんだがな。


 居たとしても人間だけだ。300年前になるし、とっくに皆死んでる。


 なんでコイツ等は俺の事を知っているのだろうか。


 そもそも俺達以外にも魔人がいた事に驚きだと言うのに。


 ん?いや待てよーー。


 ミカエルにさっき、『始祖の魔人』って呼ばれてたよな?


 ほぼ確定だが、”最初の魔人”として俺が認定されたのであれば、魔物の脅威にさらされていたあの時代であれば、俺の様な異質な存在を作り出そうと人類が躍起になったのかも知れない。


 ーーつまり他にも魔人が居るのって、もしかして俺に原因があるって事なのか?


 出来るかどうかは分からないが、ヒーローという先天的に超能力が備わってる個体数の少ない超人よりも、量産が可能で後天的に能力が得られる魔人ならば、圧倒的に後者を選ぶだろう。


 だが、そんな危険な実験を人類がするだろうか?第二の魔物である『魔人』を作り出すという事に。


 被験体が力を手に入れた途端暴走したり、必ずしも従順になるとは限らない。


 現状に不満を持ち、野心を持った奴が必ず現れるハズだ。


 そうなれば戦争にーー。


 いや、そういう事なのか?だから人類の文明が退化したのか?


 道中でユーナの言っていた言葉を思い出す。


 ーー最後の砦ラストフォートはね、全人類が魔人達の支配から逃れるために建てた最後の砦なんだよ。国が次々と滅びていく中、大昔にいたヒーロー?って呼ばれる人たちが集まって砦が出来たんだって!その人達の血をみんな受け継いでいるから、皆『スキル』が使えるんだよ。それにね、こっちの味方をしてくれる一部の魔人さん達もいるから、今まで何とか生きてこられたんだ!


 現状、情報が不足してる為断言出来ないが、少なからずあっているハズだ。


 ーーと0.4秒の間に脳内で思考加速させていると、


「実は子供の時に助けて頂いた事がありまして。覚えてませんかな?サインを貰った少年が、嬉しさのあまり道路を飛び出して車で轢かれそうになったのを。ーーって覚えてませんよね。300年前の出来事ですし」


 過去の記憶を思い出し、助けた少年の名前を告げる。


「あぁー。もしかして、山田亮君?」


「なんと!?」


 すると、号泣したオッサンにまたもや抱き着かれる事になった。


「覚えていて下さったのですねぇええええ!黒騎士さまぁああああああ!!」


「鬱陶しいぞ。離れろ!」


「敵では無いみたい....?」


 ミカエルは何とも言えない表情でそう呟くのだった。



 ★☆★☆


 読者の皆様へ:今更の登場。ちなみにリョウ君の初登場は35話です。

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