184話 シズク

 読者の皆様へ:1章を適当に読み返すとゴミみたいな文章力の数々で驚きました。今更ながらに一章で読者離れする理由を把握。それと同時に最新話まで読んでくださってる読者様に感謝の念が堪えません。本当に有り難う御座います!!



 ★☆★☆


 最後の砦ラストフォートにて、シンジがヴァンの検問を受けていた頃ー。


「起きろ。起きろ」


「……」


 荒廃したビルがそびえ立つ場所で、気絶していた雫は誰かに身体を揺さぶられていた。


「なぁ。ソイツ、死んでんじゃねーのか?」


「いや、脈はある。心臓も正常に動いてるし、意識を失っているだけのハズだ」


「うーん…あと、ちょっとだけ…」


 断続的に聞こえてくる声に、雫はもう少しの惰眠を要求する。


「ほらな?」


「あーあ。コイツも運が悪いな。死んでれば、この後地獄を見る事も無かったハズなのに」


 片方は得意げな表情を、片方は憐みの表情をそれぞれ浮かべていた。


 雫が中々起きない事に焦れたのか、起こしていた方が大声を上げる。


「起きやがれー!」


「ひゃ!?」


 突然の声量に驚き、飛び起きるシズク。


 寝ぼけまなこを擦り、雫は意識を急速に覚醒させるとー


「なぁ?コイツ、どうするよ」


「いや、どうするも何も献上するしか…」


「へ?」


 ーー目の前に2人の魔人が立っていた。


「かなりの上玉だしーーバレない程度に味見してくか?」


「リド、お前マジで言ってるのか?」


「なんだよー。かったいなームアは!」


 リドの提案に、驚愕の表情を向けるムア。


「お前この間、魔人王様に半殺しにされてただろ。『使い物にならなくなった人間を献上するとは何事だ』って。幹部だからどうにか許されたものの…」


「そ、そう言えば、そうだったな。アブねぇ忘れてた」


「あんな痛い目に合ったのに忘れるとか…マジかよ」


 雫は怯えた様子で2人のやり取りを見ていた。


(何々!?なんで魔物が喋っているの?人間みたいに知能があるし、一体どういう事!?魔物の出現はもう無くなったんじゃないの!?)


 突如として現れるハズの魔物が、15年前ほどから見かけなくなった事をシズクは思い出す。


(リドって呼ばれる赤い蜥蜴みたいな生き物と、色違いのムアは何者!?)


 身の危険を感じたシズクは、2人の注意が逸れている隙にその場から逃げようとするもー


「逃げようたって無駄だ。残念だったな嬢ちゃん」


 ムアが緑色の尻尾で叩き割ったアスファルトを見せて警告した。


「お前を今から魔人王様の元へと連れて行く。痛い目に合いたくなければ、無駄な抵抗はするな。俺達に見つかった時点で、もうお前は詰んでるんだ。諦めろ」


「い、いやあああ!離して!!」


 掴まれた腕がビクともしない事に、雫は内心驚く。


(う、嘘!?男たち数人に掴まれても平気な私が動けないなんて)


「チッ、面倒だな。リド黙らせろ」


「了解」


「ぶへ!?」


 お腹に衝撃を受け、見悶える雫。


「ば、馬鹿、お前!?やり過ぎだ!手刀で良かったのに」


「あ、悪い」


 あまりの痛みに雫は胃の内容物を全てぶちまけてしまう。


 意識を失う直前、雫は訳の分からぬ状況に助けを求める。


(おにぃ助けて…怖いよ…)

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