151話 時の感覚
「今日で学校を卒業か。あっという間だったな」
感慨深い気持ちになり、俺はため息をついた。
あの時本当に頑張って良かった。
魔界で数百年過ごした日々は無駄ではなかった。
あの時の努力が無ければ、今ここには狂歌達はいないだろう。
俺はキングサイズのベッドに腰かけ、眠っている狂歌達を見つめた。
夜伽の相手で疲れたのだろう。
全員が一糸纏わぬ姿で眠っており、スヤスヤと寝息を立てている。
その姿を愛おしく感じながら、俺は全員の頭を撫でた。
あれから1年半ほど過ぎた。
成長によるものなのか全員の美しさに磨きがかかっている。
おかげで色んな輩につきまとわれた。
『狂歌さんはお前に相応しくない!』
『美香は僕が幸せにするんだ!』
『さ、サラ先輩。いやサラは俺が貰う!』
『エレナさんは、ぼぼぼぼ僕の物だぁ!』
釘を刺そうにも諦めきれない連中は居るもので、そのような反論をしてきた。
『あ?死にたいなら殺してやるぞ』
『『『『~~ヒッ!』』』』
ムカついたので、殺気を込めて警告するとあっさりと引き下がった。
殺気による警告を続けているうちに、付きまとうような輩はいなくなった。
その影響で、何故か”帝王”と呼ばれるようになったのは誤算だが・・・・
まぁ、それで消えてくれるなら安い物だ。
それにしても、同棲してから時間が経つのが異様に早く感じる。
ここに引っ越してから、体感ではまだ1週間も経っていない程度だ。
俺だけかと思い、昨日全員に問いかけたところ答えは同じだった。
つまり俺達の体感が変化してしまったという事なのだ。
俺達の寿命は分からないが、少なくとも数百年は生き続けることが出来るだろう。そうなれば世間にバレる。
今はまだいいが、数十年後には魔界で暮らすというのも悪くない。魔力の消えたあの場所は、綺麗な大地へと変化しているからだ。
5人だけで過ごす世界も悪くは無いな。まぁそのうち数が増えてしまうだろうが。それはそれでアリだな。
俺は密かに、隠居生活について考えていた。
「休憩はこのぐらいにして、そろそろ魔石を削って指輪を作るか」
俺はさっきまでしていた作業を思い出し、別の意味で重い腰をあげたのだった。
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