154話 ???年後【完結】

 とある一軒家の寝室の前で、4人の少女が立っていた。


「パパ、そろそろ起きて!パパ!」 


 4人を代表して、銀髪の少女が何度も呼びかけるも、父親はまだ寝ているのか、中々返事が返ってこない。


「こうなったら…」


 まだ起きる気配が無いなと察した銀髪の少女は、実力行使で扉を開けようとすると――すかさず黒髪と金髪の少女が止めに入る。


「や、やっぱり、やめようよ狂夜キョウヤちゃん」


「もう少し寝かせてあげよう?」


 だが銀髪の少女は、左右に異なる瞳で2人を見つめると、同調を求めるかのように言い返した。


春香ハルカちゃんとミラちゃんはそれでいいの?パパのせいで遅刻するかもしれないんだよ?早くシズクお姉ちゃんに会いたくないの?」


「うっ…。で、でも!」


「疲れてるのに可哀想だよ!」


 すると、今まで沈黙を保っていた赤髪の少女がようやく口を開く。


「”不眠不休”の能力を持っているパパなら大丈夫。早く起こしに行こう」


「そうそう!依恋エレンちゃんもそう言ってるんだし、早く起こさないと!」


 その言葉を待ってました!と言わんばかりに、銀髪の少女はニッコリと笑うと、を引き連れて寝室の中へと入っていった。



 ★☆★☆



「……パ」


 ん?なんだ?


「パパ……」


 誰かに身体を揺さぶられているような――それも複数人に呼ばれている様な気がする…。


「…パパ」


 もう少し寝かせてくれ……。今日は4人の相手を朝までしてたんだぞ…。


 アイツら毎晩毎晩、気絶するまで求めてきやがって…。


 不眠不休の能力を持っていなかったら死んでる…。既に枯れて死んでる…。


「起きてパパ!起きないとジャンプするよ!!」


 その宣言通り、数瞬後にお腹へと衝撃が走る。


「おはよう狂夜キョウヤ


 目を覚ますと、狂歌との子供である狂夜キョウヤが、俺のお腹の上でニッコリと笑いながら座っていた。俺の血を受け継いでいる影響か、瞳が左右に異なっている。


「早く起きてよね!!今日はグレンお爺ちゃんの家に遊びに行くんでしょ!ウイリアムお爺ちゃんも来るんでしょ!」


 それにしても悪びれている様子はないな。俺だから良いが、他の人にやったら大問題だ。一般人であれば、口から臓器を吹き出して軽くショック死するくらいには、十分な威力が込められている。


「パパ、大丈夫?」


「痛くない?」


 心配になったのか、今度はベッドに美香との子供である春香ハルカが登ってきた――続けてサラとの子供であるミラも登ってくる。


「「痛いの痛いの飛んでけー。どう?治った?」」


 上目づかいでそう聞いてくる、うちの可愛い天使達。


「かわいいー」


「きゃはは」


「くすぐったいよー。パパー」


 俺は思わず2人に抱き着いてしまった。


「パパ。お腹空いてない?」


 さり気なくそう聞いてくる赤髪の少女――依恋エレンは、英玲奈エレナとの間に出来た子供だ。母親譲りであるのか、食に関する欲が子供たちの中で突出して抜きんでており、一番の食いしん坊である。


 その一言で、エレンなりに心配しているのだと分かる言葉が投げかけられる。


「パパは、お腹が空いちゃったぞー。エレンを食べちゃうぞー。むしゃむしゃ」


「きゃはは!」


 エレンに抱き着いてうなじの辺りを口でパクパクすると、くすぐったそうに身をよじった。


「ちょ、ちょっと!私にもやってよね!!」


 ――すると俺達のやり取りに嫉妬したのか、狂夜もそうねだってきた。


「狂夜も食べちゃうぞー」


「きゃははは。パパ、くすぐったい~」


 子供達との遊ぶ時間は幸せそのもので、何にも代えがたいものだ。


「あなたー。そろそろ支度をして」


 寝室で子供達と遊んでいると、狂歌に支度をするよう急かされた。


 そして不意に思い出す――まさか復讐から始まった俺の物語が、最後にハッピーエンドで終わるとはな、と。


 この小さな幸せをずっと守っていこう。命果てるその時まで…。


「ああ、今行くよ」


 俺は今の幸せを噛み締めると、急いで支度を済ませるのだった。


 ~(完)




 ★☆★☆


 読者様へ:番外編でもう少し続きます。

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