100話 美香

 冬柴美香ふゆしばみか視点


「あれ。ここはどこ?」


 気が付くとうちは、知らない空間に立っていた。


 何処までも続く真っ黒な空間。自分が何故こんな所にいるのか、見当もつかなかった。


 しばらくその場でウロウロしていると


「あれ?おかしいな。何でうちが2人いるんだろ。それにうち死んだハズじゃなかったっけ?」


 後ろから声が聞こえた。


 振り返るとそこには、猫耳の生えた深紅の瞳がある女性が立っていた。よく見ると尻尾が腰辺りから2つ生えている。胸も大きく、とても魅力的な女性だと思った。


(コスプレイヤーの人かな?尻尾が凄いリアル。綺麗な人だな。)


 そう思わずにはいられなかった。


「あ....あなたは....誰ですか?」


 初対面の人に対し、思わず敬語で話しかけてしまう。コミュ障のうちにとってこれが精一杯だったから。


「あはは。本当にこれどういう状況なんだろうね。」


 困ったように苦笑いを浮かべる女性。なんだかうちと、同じ雰囲気を感じる。


(気のせいなのかな?)


 そう思った。するとー


「ん~。どういう状況なのか分からないけど、あなたが過去のうちで。これが未来姿だって言えば分かるかな?」


「え?」


 あり得ないことを急に言い始める女性。うちは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


「まぁ急にこんな事を言っても、信じられないよね。ハァ」


 ため息を吐きながら、どうしたらいいか分からないといった様子を見せる。


 うちは、その場で戸惑っていると


「分かった!過去のうちの秘密を暴露したら信じるよね?誰にも言ってないし。」


「え?あ....はい....」


 名案を思い付いた女性。うちはそのままの勢いで流された。


 うちは誰にも秘密を言ったことが無い。これで真偽が付くと思った。



「じゃあいくよ。まずは、小学生の時からシンジ君が好きだった。」


「は、はい。」


「実は家に遊びに行った時に、寝ちゃったシンジ君にキスをしたことがある。」


「...はい....」


「本を読むフリをして、授業中いつもシンジ君を見つめていた。」


「...はい」


「遊びでもいいからシンジ君と一線を越えたいと思ってた。そしてあわよくば側室になれたらいいなと。」


「.....はぃ///」


「実は中学生の時に、育乳サプリメントを箱買いして飲んでみたけど、結局効果が無かった。」


「は....ぃ....」


「通販で買った媚薬を使ってシンジ君に襲われるように頑張ったけど結局意味が無かった!」


「.........」


「そして極めつけは!寝る前にいつもAVを見て喘ぎ声の練習をしていー」


「わ、分かりました!もうやめてください。」



 うちは、どんどん暴かれていく秘密に段々恥ずかしくなって、思わず大声を出してしまった。


 こんなの誰にも言ったことが無いのに・・・


 もう信じるしかないみたい。


「ほ、本当にあなたが未来のうちだったんですね。」


 そう言った瞬間ー


「あれ?うちの身体がー」


「な....なんですかこれは....」


 突如身体が光始めた。


 どんどん消失していく身体。未来のうちも同様だった。


 その時、知らない誰かの記憶が流れてきた。


 家族が魔物に殺された記憶。シンジ君に魔人にされた記憶。


 獣人のような。人型のライオンに殺される記憶。


 どれもが知らないものだった。


 頭を押さえ、その場で蹲っているとー


「過去のうちに1つだけアドバイスね。もうオドオドするのは辞めた方がいいよ。もっと自分に自信を持って。未来のうちが出来たんだから、あなたにも出来るハズよ。」


 未来のうちからのアドバイスを貰った。


「うん....わかった...」


 その言葉を最後に、私は意識を失うのだった。




 ★☆★☆


「あれ?ここは」


 気が付くとベッドに寝かせられていた。


「お?ちょっと目覚めるの遅かったな。」


 シンジ君が上から覗き込んできた。


 その瞬間ー


「シンジ君。会いたかったよ!」


 抱きしめたい衝動に駆られ


 うちはシンジ君に飛び込んだのだった。

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