99話 訪問

 読者様へ:長くなったので分割します。


 ★☆★☆


 冬柴美香ふゆしばみか視点


 ブーブ ブーブ


 うちは、学校に行く準備をしていると、突然携帯の通知が鳴った。


「うちにメール?誰からだろう。狂歌ちゃんかな?」


 うちは、よく狂歌ちゃんとメールのやり取りをする。


 話がよく合うからだ。根暗でボッチな私にとって数少ない1人の友達。


「あっ。またうちって言ってる。直さないとな。」


 前までは一人称はうちだったけれど、今は私に変えている。クラスメイトに痛いって言われるからだ。


 だから、出来るだけうちと言わないようにしているが、ついつい癖で言ってしまいそうになる時がある。気を付けないと。


 いつものようにメールが来たと思いスマホを手に取ると、メールの相手はなんとシンジ君だった。


「え、どうしてうちなんかに?」


 うちは、びっくりした。好きな人からメールが来たからだ。


 メールを送ってくるなんて珍しい。でも、どうしてだろう。思わず疑問を浮かべてしまう。


 今までそんなことなかったのに・・・


 気になってLIMEを開いてみると


『なぁ大事な話があるんだ。俺の家に来てくれないか?』


 とメールが送られていた。


「一体何の話なんだろう。」


 登校するにはまだ時間に余裕がある。それにここからシンジ君の家へは、5分もかからない。


『うん。出来るだけ早く向かうね。』


 だからうちは急いで返信をすると


「行ってきまーす。」


 支度を済ませ、シンジ君の家に向かう事にしたのだった。




 ★☆★☆


「やっとついた。」


 うちは、久しぶりにシンジ君の家を見た。小学生の時以来かな。


 ずっと避けていたうちは、懐かしい気持ちになる。


 ピンポーン


 インターホンを鳴らすと


「はーい。」


 中から女性の声が聞こえる。


 ガチャリ


 ドアが開かれると、中から時雨さんが出てきた。


「あら!久しぶりね美香ちゃん。」


「こ....こんにちは....」


 嬉しそうな表情を浮かべる時雨さん。久しぶりの再会に思わず下を向き、答えてしまう。コミュ障のうちにとってこれが精一杯なのだ。


 慣れれば普通に話せることが出来るのだけれど、久しぶりの相手や好きな相手、初対面の人にはこういう反応を取ってしまう。そして敬語で話してしまうのだ。


(いつか直さないとな。なにかきっかけがあればいいのに)


 内心でそう考える。


「今日はどうしたの?」


「あ....あの....シンジ君に呼ばれて....」


 質問する時雨さんにそう答えるとー


「なるほど。そういう事なのね!ささ。中にいらっしゃい。」


 納得する様子を浮かべる時雨さん。背中を押され、家の中へと入れられた。


「お....お邪魔します....」


 緊張しつつ中へ入ると、あることに気が付いた。ローファーがあったのだ。それも女性用の。


「あ....あの....時雨さん....今日は....ほかにも誰か来てるんですか?」


「あっ。そうそう。先に狂歌ちゃんが来てるわよ。」


 うちは時雨さんに問いかけると、既に狂歌ちゃんが来ているという事を教えてもらった。つまり、私だけを呼び出した訳では無かったみたいだ。


「少し待っててね美香ちゃん。シンジ呼んでくるから。」


「は....はい....」


 私はリビングに案内されると時雨さんは二階へ行ってしまった。


 シンジ君の部屋へ向かったのだろう。


「なんで....うち....呼び出されたんだろう....」


 疑問に思いながらも、うちはシンジ君が降りて来るまで、静かにその場で待っているのだった。




 ★☆★☆


 秋山真二あきやましんじ視点


「そうか、もう美香が来たのか。」


「リビングに待たせてあるわ。早く行ってきなさい。」


 美香を待たせるなと言ってくる母。気配察知をすればリビングに居ることが分かった。


「狂歌悪いが少しここで待っててくれ。」


「分かったわ。」


 承諾を得ると、俺はすぐに1階に降りることにした。


 階段を降り、扉を開けてリビングに入るとそこには美香がいた。


「待たせて悪い。結構待ってたか?」


「い....いいえ....だ....大丈夫ですよ?」


 オドオドしながら、自信無さげに敬語で話しかけてくる美香。


 魔人化する前はこんな感じだったなと今更ながらに思い出す。


 そして生きている事に対し、思わず感動して、抱きしめたい衝動に駆られてしまう。


(今は我慢するんだ。)


 そう心を落ち着かせながら、美香に話しかけることにした。


「大事な話があるんだ。俺の部屋に来てくれないか?」


「わ....わわわわかりました....」


 両肩を掴み真剣な表情で見つめると、顔を赤くして返事をする美香。


「ふぇ?」


 承諾を貰えた為、美香の手を引き部屋に向かう事にした。


「あ....あの....シンジ君....その髪はイメチェンですか?....そ....それに....その筋肉も....」


 向かっている最中急に美香から話しかけられた。声が少し高くなっている。恥ずかしいのだろうか。


「お前を二度と失いたくないからな。」


「ふぇ?そ....そそうですか///」


「まぁそんな感じだ。あまり気にすんな。」


 赤面する美香。質問に返事をしているとすぐに部屋の前へとついた。


 ガチャリ


「きゃあああ何それ。そんなことを?」


「そうなんです。お義母さん。」


 扉を開いて美香を中に入れると、母さんと狂歌が恋バナらしき話で盛り上がっていた。


「あら美香じゃない。久しぶりね。10連休ぶり?それとも300年ぶりかしら。」


「そ、そうだね久しぶり。狂歌ちゃん。」


 よく分からないといった表情を浮かべる美香。曖昧な返事をしていた。


 油断している美香を俺が見逃すハズも無く


「『五感遮断ブラックアウト』」


 すぐさま闇魔法で気絶させた。崩れる身体をすぐさま受け止める。


「ちょっと美香ちゃん大丈夫なの!?」


「平気だから。」


「大丈夫ですよ。お義母さん。あれはただ魔法で気絶させただけですから。」


 いきなり倒れた美香を心配する母。狂歌が平気だと伝える。


「そ、そうなの?いきなりだったから吃驚したわ。」


 胸をなでおろしホッと息をつく。


 その間に美香をベッドに寝かせ、異空間から未来の美香を取り出した。


 ベッドには今、過去と未来の美香がいる。


「こ、これが未来の美香ちゃんなの!?」


 驚きっぱなしの母。さっきから少しうるさい。


「私の時もこんな感じで融合させた訳ね。」


「まぁな。説得できる自信が無かったからな。それに、この方法が一番手っ取り早いだろ。」


「なるほどね。」


 自分もこうなって融合されたのだとすぐさま理解し、納得した表情を浮かべる狂歌。


「そんな訳だから。部屋から出て行ってくれないか?2人共。」


「ええ分かったわ。行きましょうお義母さん。」


「え、ええ。」


 手を引かれ行く母。この後何をするのか見たかったのだろうが、狂歌に引っ張られ、すぐさま俺の部屋から出て行くことになった。


「邪魔者は居なくなったな。」


 俺は心を落ち着かせるとー


「【融合】」


 2人の肉体を融合させた。溶け合って1つになる肉体。


 成功したようだ。美香は、未来の身体へと変化していた。


「蘇生魔法-『復活リザーレクション』」


 そう唱えると部屋は明るい光に包まれ、思わず目を瞑ってしまうのだった。

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