69話 ゴミムシ風情が!

 縄張りだと思われていた大森林が玄武の背中から、焼け落ちていく。


「許さんぞぉー。ゴミムシ風情がー。」


 縄張りを荒らされたのと、大蛇を切り落とされたことに対して、腹を立てているのだろう。


 咆哮をあげながら膨大な魔力を高めていく巨大な亀。否、玄武。


「おい。何か分からないが、とにかくヤバいぞ。」


 魔眼で魔力の流れを確認するが見たことも無い魔法を放とうとしてきている。


(何だその魔法は...見たことが無いぞ...)


 初見の魔法に警戒をする黒狼。


(未来視発動!)


 多少魔力を持っていかれるが、攻撃を食らうよりはマシである。


 数秒先の未来を見通したが、もう駄目だった。玄武がすでに魔法を放とうとしてきていたからだ。


 


「悪いなエレナ。」


「へ?」


 黒狼は、突然の行動に呆然としているエレナをくらった。


 その直後


 ズシン


 突如地面に叩きつけられる黒狼。地面が陥没し、1メートルほどのクレーターが出来る。


(お、重い。)


 立ち上がろうと踏ん張るが、その場の空間に押さえつけられ、身動きが取れない。


 まるでその場のかのようだった。


『マスター大丈夫?』


『ギリギリアウトだな。動けん。』


 【念話】の能力で話しかけてくるエレナに対し、正直に答えることにした黒狼。


 その間にも、玄武は切り落とされた尻尾である大蛇を再生させていた。


 キシャアアアア


 切断面から肉が盛上り、うねりをあげるとすぐに復活する大蛇。


『エレナ。今回はお前がいないと無理だ。』


『でも、私は何をしたらいいの?』


『合図を送ったら、吸収することだけに専念してればいい。』


『分かった。』


 2人で念話している間にも、玄武は魔力をため攻撃をしようとしていた。


(少しぐらい待てよ。)


 内心でそう思いながらもいつでも動ける準備をする黒狼。


「【傲慢】全力解放!」


 玄武の周りにある岩などが宙に浮かび始める。


 玄武は黒狼を正面に捉えると、浮かばせた大量の大岩を黒狼目掛けて衝突させてきた。


()


「【限界突破ァァァァ】」


 黒狼はその場で叫び、立ち上がった。


 その直後


 大岩が衝突し、土煙がその辺り一帯を覆うこととなる。


 玄武は風魔法で煙を晴らすと、そこには岩に押しつぶされ身動きの取れない黒狼がいたのだった。




 ★☆★☆


 玄武視点


 岩に押さえつけられ、未だに抜け出そうとする黒狼。


(言いザマだな。余の縄張りに勝手に入ってきたのだ。こうなって当然。)


 玄武はニヤリと笑い、嗜虐的な表情となる。


 口に魔力を収束させて特大の光魔法を放つ寸前となっていた。


「ゴミムシ風情が、余の眠りを妨げた罪。死して償え。『滅殺光撃』」


 その瞬間口から発した膨大な光のエネルギーは


 黒狼の居た場所を一直線に貫き、大爆発を起こした。


 ズドォォォン


 その場には、あまりの高熱で土が溶けガラスと化した地面と、跡形もなく消滅した大地のみがあった。


「ハハハハハ。言いザマだ余の邪魔をすー」


 気分が高まり、玄武は笑って次の言葉を発するが


 ズシャーン


 あまりの痛みに悲鳴をあげ、次の言葉が発せなくなる玄武。


「Goaaaaaaaaa」


 身体が片方に傾き、地面に倒れた。


 痛みを感じた部分を見ると


 そこには切断された尻尾と、右側の両足を喰らうスライムに


 笑いながらこちらを見てくる黒狼がいたのだった。

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