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幼き頃、少女は父親と妹と離れ、山の中に建てられた小さな古びた小屋に、母親と二人でひっそりと暮らしていた。母親は少女に何も告げず、少女もまた、何も聞かなかった。何故、離れて暮らすのかを。幼いながらも少女は、気づいていたのだ。母親と同じものの事を。父親と妹と違うものの事を。母親との暮らしは、貧しいながらも楽しく、笑顔が絶えなかった。
十歳になって間もない頃、それは唐突に訪れた。
「ここです! ここに
突然、山の
母親は、少女を押入れへと隠したが、その頃には扉がこじ開けられていた。少女は、震えながら押入れの隙間から外の様子を伺う。錆びついた鎖を手につけた男が二人、右腕がない男が一人、小屋の外に村人が多数。一人の鎖をつけた男は、母親を地へと押さえつけた。そして、もう一人の男は少女のいる押入れへと歩み寄る。開かれた戸、少女は恐怖で立ち尽くし、母親を見つめた。
「お、かあさん?」
まともに呼吸が出来なくなるほど、張り詰めた空間。そう呟いた少女の声は、母親へ届き、母親は
「逃……げてっ」
少女の頬を優しく撫でた手は、力なく落ちていく。その手を掴もうと少女は手を出すが、それを阻止するかのように少女の手には、鎖が付けられた。
「今日からお前に自由はない。この
この日、少女の運命は天地一変した。未来永劫、自由は訪れないのだから。
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