戦闘奴隷の少女-消えない過去と消えた笑顔-
kiriyu
プロローグ
──ただ、私はあなたとっ
握りしめていたのは赤く染め上げられた鎌。眼前に倒れるのは、小さな子供。腹に一線が入っており、そこからは血飛沫が上がっている。
──私は……なにをっ
日に日にぼんやりと意識が掠れていく頭を抑え、少女は
「早く諦めて呑まれてしまえば楽だぞ、アカツキ」
その者は、この惨状を起こした奴隷商人である。少女、アカツキの主でもある。そんな主を睨みながら、頭を抑え、痛みに耐えるアカツキ。
「いやだ! 諦める方がもっと苦しいのっ」
アカツキは、対抗心が強かった。痛みで従わせることが出来なかったのだ。
しかし、先程小さな子供の腹を切ったのはアカツキである。彼女の持つ鎌がそれを物語っている。その時の記憶は、アカツキにはない。あるのは切ってしまった後の手に残る、血肉を裂いた後の感触だ。
「まぁ、時期にお前は忘れる。奴隷には必要のない感情を」
アカツキには、一つの強い魔法がかけられている。自分の意志ではない行動を取ってしまうのもその所為だ。
「私はっ私は、誰?」
──あなたは私っ
自分の声が、頭に響く。しゃべっていないはずなのに、頭に言葉が響く。
「なんで人を殺さなきゃ行けないのっ」
──楽しいからに決まってるでしょ?
「たの……しい?」
頭に響く声は、アカツキの意識を混濁させる。次に見せた瞳は澄んだ紫紺の瞳ではなく、爛々と戦意に満ちた漆黒の瞳。黒髪を揺らし、再び炎で覆われた村へと足を踏み入れた。
「楽しいでしょ? 私はあなたっ」
その行動に主は満ち足りた笑顔を見せる。次にアカツキの意識が戻った頃には、村は跡形もなく消え去っていた。
「私は、何も失いたくないっ! 大切な人をっ」
──失わないように戦うのっ楽しいでしょ?
頭が割れそうなほどの痛みに耐えていたアカツキだが、開かれた瞳は混濁した瞳。
「楽しくなんかっ……たのしぃ」
──いつから私は変わってしまったのっ
アカツキの頭の中で、響く声。それはアカツキのものへとなりつつある。
──お願いっ誰か私を……消してっ
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