祭りの前のモチベーション

 晴れの日は続いた。

 もう、一生晴れでもいいと思った。

 雨を必要としてる人には、心から申し訳なく思いつつも。

 だが、一生続くモノなんてない。

 間違った、訂正。

 永遠に続くモノなんてない。

 木曜日辺りから少し雲が多くなって、金曜日には完全な曇天になった。

 明日は笹巻河童祭り。

 もう、こうなったら明日が勝負だ。

 怜悧と帰るのは嬉しいのだが、正直、盛り上がってはいない。

 怜悧は怜悧で、ボクに送ってもらうのは、どちらかと言うと、困惑しているようだった。

 それぐらいは、いかに妄想狂でも分かる。

 そして、ボクはボクで、まったく違うことを考えていた。

 送るとかそういうんじゃなくて、怜悧と付き合いたいと。

 だから、自然、お互いにぎくしゃくして会話が続かない。

 最初の内は、天気の話をしていたが、なんだかそれも変な気がして止めた。

 こういう時、恋人同士なら、どうするのだろう?

 多分、次のデートで行きたいところをニヤニヤしながら言い合ったり、まっすぐ家に帰らないで、無駄に公園行ったり、新しく出来たタピオカ屋なりパンケーキ屋なり行くんだろう。それが、いかに流行から遅れていても、恋人同士ならOKだ。きっと。映画に行くかもしれない。そして、キャラメルポップコーンをむさぼり食うかもしれない。同じジュースを、ドキドキしながら同じストローで飲むかもしれない。

 でも悲しいかな。

 今の2人は、恋人同士ではない。

 単なる幼馴染で、しかも、貴重な2年間を棒に振ったおかげで、何を話していいのか、それすら分からないときている。

 最近見たドラマの話とか、好きな漫画の話とかしてみたけど、食いつきは今ひとつ。

 こういう時役に立つ、岩舘と赤坂にヘルプを頼んだが、「まず告れ。そして、羽陽の友達でオレ好みを紹介しろ。話はそれからだ」「アイスくれ。話はそこから始まる」とにべもない、というか、よく分からない切り返しで断られた。

 まず告るのは無理な話だし、月の前半でおごりすぎて、アイスを奢る金が無い。

 そこで、明日の午前授業が終わった帰り道、前みたいに後ろからついて来てくれとお願いした。

 そこで、ボクは男になる、そう、微妙な匂わせ宣言をして。

 どうせ暇な連中だ。

 見世物としては面白いと思ったんだろう。

 動画を撮るから、逆にそう宣言して快諾してくれた。

 まあいい。

 ボクは告る。

 やっぱり怜悧の事が好きだし、あの不思議な事件が起こらなかったら、怜悧と一緒に帰る機会だってなかった。

 運命も努力も嫌いだけど、チャンスがあって、それは勇気次第で結果が変わるモノだってことは知っている。

 だから、告る。

 一緒に河童祭りに行く。

 最悪、失敗しても、岩舘と赤坂がいれば、ドン底には落ちないはずだ。

 言っただろ?

 ボクは予測と予感が特殊能力だって。

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