第225話
*
大柄な男太田と小柄な男細谷は交互に僕に攻撃を仕掛けてくる。
「おらぁ!」
「くっ!」
トンカチを振り回す太田の攻撃を受け流し、同時に隙をついてくる細谷の相手をするのは少々骨が折れる。
「なかなかやるなぁガキ! だがいつまで避けていられるかな?」
「さっさと楽になった方が良いかもしれないぞ」
「あはは、お二人とも随分余裕なんですね。まぁそうですよね、そっちの方が二人で有利ですし」
「おいおい、卑怯なんて言うなよ? 俺達の世界じゃ卑怯は当たり前なんだよ!」
太田がそう言いながら持っていたトンカチを僕目掛けて投げつけてくる。
それと同時に細谷がドスを構えて素早く僕の懐に潜り込んできた。
トンカチを避ければドスが刺さる。
逆にドスを防げばトンカチが僕の頭を捕らえる。
だから僕は……。
「甘いよ」
「な!」
「くっ! 素手でドスを……」
トンカチを右手の木刀で払い左手でドスの刀身を捕らえた。
驚く太田と細谷に隙が生まれたのを僕は見過ごさなかった。
「ふん!」
「あがっ!」
「はぁっ!!」
「がっ!」
持っていた木刀を太田に向かって投げつけ、その後で細谷の頭に自分の頭をぶつける。
太田は倒れ、細谷も頭を押さえてフラフラし始める。
僕は細谷の持っていたドスを奪い取り刀身を細谷に向ける。
「さぁ、どうする? 続ける?」
「くっ……真木流の剣士め……」
太田は気を失ったが細谷はまだやる気だった。
懐から予備のドスを持ち再び構えて僕に向かってきた。
僕も細谷から奪ったドスで対抗する。
「くっ! お前の親父にはことごとく煮え湯を飲まされてきた! 何度も薬の取引を邪魔された! テメェらの一族が俺は憎くて憎くて仕方ねぇんだよ!」
「その薬のせいで一体どれほどの人間が苦しむか考えたことはないんですか?」
「はん! 知るかよ、欲しいっていう奴に俺達が提供してやってるんだ、感謝してほしいねぇ!!」
「………同情はしなくて良さそうですね」
「くっ! このガキ……ち、力が……」
遊ぶのも飽きた。
そろそろ本気相手しないと平斗が待ちくたびれて先に親玉のところに行ってしまうかもしれない。
「じゃぁ、そろそろ眠って貰いますね!」
「な! こ、こいつ動きが……ぐはっ!」
細谷の手からドスを弾き飛ばし、僕はそのまま細谷の背後に回って背中を思い切り殴り飛ばす。
倒れた細谷は気絶しそのまま動かなかった。
「はぁ~あ、やっぱりあんまり遊ぶのも良くないか、思ったより時間掛かっちゃった」
投げ飛ばした木刀を拾い上げ僕はドスを捨てて平斗と別れた場所に戻って行く。
もしかしたら平斗が手間取っているかもしれない。
そうも少しは思ったのだが、それは僕の考えすぎのようだった。
歩いていると向こうの方から平斗がなんだかスッキリした顔でやって来た。
「平斗」
「高弥、そっちも終ったのか?」
「あぁ、ちょっと遊びすぎちゃったよ」
「あんまり油断するなよ、命取りになるぞ」
「分かってるよ、だから次は本気で行くよ、そう言う平斗はどうなの?」
「あぁ、問題ない。早く先に進もう」
平斗の身体はところどころに汚れが付いていた。
恐らく結構な強者と戦って来たのだろう。
「また背中刺されたりしないでよ?」
「うるせぇ! 今日は大丈夫だよ!」
僕たちはそんな話をしながら屋敷の奥に進んでいく。
恐らくだがこの先には先ほどの奴らや表の奴らとは比べ物にならない強者が居る。
何となくそんな感覚を肌で感じていた。
それは平斗も同じだったようで、平斗は常に緊張状態を維持していた。
「多分、奥の部屋に二人居るね」
「一人は柳健三、そしてもう一人は……」
恐らく柳を守る最後の守護者と言った感じか?
それにしても屋敷内の警備がこれだけというのも不自然だ。
「なんだか胸騒ぎがするよ」
「あぁ、俺もだ……だが、ここまで来て引く訳には行かない。それにお前と二人で負けたことあったか?」
「小学生の頃に君のお父さんにコテンパンにされた」
僕がそう言うと平斗は笑みを浮かべ、僕にこう言った。
「背中は頼むぞ」
「あぁ、任せてよ親友」
そう言って僕たちは最後の部屋に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます