第223話

「はぁ……はぁ……なかなかやるようになったな、でももう腕は使い物にならねぇだろ」


「……そうだな、ふん!!」


「なっ! なんで腕が動く! メリケンまでしてるんだぞ!」


 竹内さんに感謝だな。

 俺は昨日竹内さんからもらったアームガードを見ながらそう思う。

 俺の武器である腕をやられたら大変だと、竹内さんはどこからか耐衝撃仕様の特注アームガードを持ってきて俺に餞別だと言って渡してくれた。

 軽い上に性能もう上々だ。


「てめぇ、腕に何か仕込んでやがるな!」


「それはお互い様だろ!!」


 俺はそう言いなら、先ほどのラッシュで消耗した天田に拳を叩きこむ。

 腹、足、肩、次々に拳を打ち込み相手の体力を奪う。


「ぐっ! がはっ!」


「次! 次!」


 天田に拳を打ち込みながら次にどこに打ち込むかを考える。

 体制が崩れるように狙いを変えながら俺は拳を打ち込む。

 しかし、相手もやられっぱなしじゃない。


「調子にのんじゃねぇ!!」


「うぉっ!!」


 腕が駄目だとわかった天田は俺の顔面を狙ってきた。

 俺がギリギリでその攻撃をかわし、天田から距離をとり様子を見る。


「はぁ……はぁ……てめぇ……随分成長してんじゃねぇか」


「まぁな……」


 相手の体力はかなり削れたはずだ。

 相手は既に肩で息をしている。

 俺にはまだ余裕がある。

 いけるか?

 そう思った俺だったが、天田は深呼吸を一度して俺を睨み、そして再び向かってきた。


「今度はこっちの番だ!!」


「ぐっ!」


 あれだけ消耗しているはずなのに天田は俺に再びラッシュを仕掛けてくる。

 俺は腕で受け止めながら、天田の体力が限界に来るのを待つ。

 しかし、天田のラッシュは全く劣えない。

 それどころか、どんどん勢いを増す。

 

「くっ……な、なんだこいつ……」


「おらおら!! どんどん行くぞ!!」


 ヤバイ、このままじゃ俺の体力が先にそこを尽きる。

 そう感じた俺は何とか隙を見て天田を引きはがし、距離を取る。

 確かに体力は削ったはずなのに、なんであんな攻撃が?

 

「どうした……もう……終わりか?」


「はぁ……はぁ……」


 いや、体力は確かに切れている。

 だとするともともとの体力がかなりあるのか?

 どっちにしろ、あのラッシュはもう一回くらいしかできないだろう。

 こっちも体力を結構消耗してしまった。

 早く決着をつけないとヤバイな……。


「おいおい……随分疲れてるみてぇだな!」


「まぁな……」


 危なかった、竹内さんと稽古をしていたおかげで体力がついていたからここまで動けるが、今までの俺だったらここで疲れて判断が鈍っていただろう。


「やっぱり若いってのは良いよなぁ! 成長が早い! 歳は取りたくねぇぜ!!」


「だろうなおっさん。だからそろそろ降参してくれよ」


「はん! ふざけるな、こんな楽しいのは久しぶりだ! さぁ来い! お前の力を見せてみろ!!」


「なかなかあんたもイカれてるな」


 こいつ、竹内さんと少し似てるな。

 戦いを楽しんでる。

 そう言う人間がやっぱり強いのだろうか?

 なんてことを考えながら俺は稽古の成果を試してみようと思う。


「来いよ、おっさん」


「良い度胸だ! これで決めるぞガキィ!!」


 天田は再び俺にラッシュを仕掛けて来る。

 しかし、俺はもう防御の体制を取らない。

 直前まで天田を引き寄せそして感じる、自分がやられるかもという恐怖心を……。

 そしてその恐怖心の中で体を動かし感覚を研ぎ澄ます。

 そして、男の拳を受けるのではなく俺は避け始める。


「な! クソっ! なんで当たらねぇ!!」


 人は恐怖を感じると防衛本能が働く。

 圧倒的な恐怖で動けなくなる場合もあるが、俺は稽古でそれを克服した。

 恐怖を感じる事で俺の体は体を守ろうと攻撃を避けようとする。

 その本能に入れは従い、体を動かす。

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