第216話
「ん? あぁ、高弥か平斗に用事か?」
「お久しぶりです竹内さん、平斗はどこに?」
「あぁ、今頃シャワーを浴びてるぞ思うぞ」
「ありがとうございます。それじゃぁ行ってみます」
道場に行くと、そこにはシャワーを浴びさっぱりした様子の竹内さんが居た。
平斗の兄弟子で相当な実力者だ。
前に一度だけ平斗との組手を見た事があるが、次元が違うと肌で感じた。
敵に回したくない相手でもある。
「お? なんだ高弥、お前彼女出来たのか?」
「え? いや、違いますよ」
竹内さんが僕の後ろの初白さんを見てそう言う。
そう言えば竹内さんは初白さんを見た事がないのか。
「こんにちは、初白蓮花です」
「おう、竹内慎太郎だ。彼女じゃねぇってことは友達か? 君も平斗に用事か?」
「あ、はいそうなんです。実は何回か家には来たことあったんですけど、道場の方には来た事なくて」
「あぁ、そうなのか。あ、平斗に会ったら言っておいてくれないか? ゆっくり休めって」
「え?」
「じゃあ、俺はバイトだから」
「はい、また今度是非手合わせでも」
「お、もちろん構わないぜ、平斗と二人でまたかかってこい」
そう言って竹内さんは道場を後にしていった。
昔、平斗と一緒に僕はあの人に挑んだことがあった。
二対一であそこまで遊ばれたのは初めてだった。
腕には自信があった。
なのに、二対一でも歯が立たなかった。
化け物、平斗がそう言っていた意味がその時分かった。
「さて、それじゃぁ行こうか」
「はい、あの人って真木先輩と島並先輩の道場の先輩ですか?」
「まぁ、そんなところだね」
「へー……やっぱり強いんですか?」
「あぁ、強いさ……比べ物にならないくらいね」
「へぇ~それって島並先輩よりもですか?」
「それは平斗本人の聞いてみるのが早いと思うよ」
僕はそう言いながら、初白さんと一緒にシャワールームまでやって来た。
シャワーを浴びているかもという事だったが、男子用のシャワールームからは人の気配を感じない。
「平斗?」
ノックをしてシャワールームに入るが、そこには誰も居ない。
「居ない……どこか行ったのか?」
「まだ道場の方に居るとかですかね?」
「そうかもしれないね、道場の方に言って見よう」
初白さんとそんな話をしていると、誰かが僕たちの方にやって来た。
「ん? なんだ、高弥に初白じゃねぇか」
やって来たのは平斗だった。
道着姿で汗をかいてある。
恐らく直前まで稽古をしていたのだろう。
「どうしたんだよ」
「やぁ、ちょっと用があってね」
「初白は?」
「私は暇だったので」
「あっそ。あ、あんまり俺に近づくなよ、かなり汗かいてくせぇから」
「随分頑張って稽古してるみたいだね」
「先輩早くシャワー浴びて来てください、そして私にご飯奢ってください」
「相変わらずお前は図々しいな初白」
平斗はそう言いながら、シャワールームに入っていく。
「じゃぁ、浴びながら僕の話を聞いてくれるかい?」
「あぁ、良いぞ。初白、そう言えば城崎さんも来てるぞ、もしかしたらまだ居るかもしれねぇから、会ってきたらどうだ?」
「え? 本当ですか? じゃぁ行ってこようかな~」
初白さんはそう言って道場の方に歩いて行った。
僕と平斗は男子用のシャワー室に入り、話を始めた。
「平斗、相手の正体がわかったかもしれない」
「早いな、俺はまだ全然準備なんて出来てねぇぞ」
「あぁ、でもさっき襲われた、恐らく相手も僕が色々調べている事に気が付いている。もしかしたら平斗も襲われるかもと思ってね」
「襲われた? どんな奴らだ?」
「最初は金で雇われたチンピラ、その後はヤクザの下っ端だった。正直そいつらからはあんまり有益な情報は得られなかったよ」
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