第202話
楽しそうに話す光音と城崎さんをよそに俺はさっさと朝食を済ませ、リビングを後にした。
このままじゃいつかボロが出てしまう。
俺は一度着替えをするために部屋にもどった。
部屋には大島や悟、そして高弥が居た。
「あぁ、おはよう平斗」
「おはよう、お前どこ行ってたんだ? リビングに居なかったけど」
「あぁ、少し散歩にね」
「そういうことか……」
こっちはお前が居なくて大変だったというのに。
まぁ、悪いのは俺なんだけど……。
「兄貴! 今日は何をしますか!!」
「そろそろタイヤを使った稽古が始まるんですか!?」
「いや、そんな鍛錬始まらねぇよ」
コイツらはそればっかりだな。
まぁ、それだけ稽古が楽しいということだから良いことなのかもしれないけど。
「なんか、山ノ内さんがこの島を案内してくれるってよ」
「マジっすか!! 巨大アナコンダとか居ますかね?」
「居るわけねぇだろ」
「じゃぁ、人食いトラは!!」
「お前もか悟……」
コイツら無人島に一体何を期待しているんだ……。
「平斗」
「ん? なんだよ高弥?」
「ちょっと良いかい?」
俺は高弥に呼ばれ、部屋の外に出た。
「城崎さんとの件、一体どうするつもりなんだい?」
まぁ、そんな話だとは思った。
俺は高弥と歩いて外に出て、そのことに付いて話始めた。
「そうなんだよなぁ……旅行中にみんなにバレるのはちょっと嫌なんだよ、空気的にさ」
「まぁ、そうだね。ここはどうやって他のみんなにバレないように、明日の帰りまでやり過ごすかが問題になってくるね」
「あぁ、さっきも朝食の時はヒヤヒヤしたぜ、光音はともかく、山ノ内さんにはバレたかと思ったもんなぁ……」
「朝から大変だったね、まぁでもみんなに気づかれたくないんだったら、そのことを城先さんにも話しておかないと」
「そうだよなぁ……」
はぁ……確かにそれは仕方ないよなぁ……。
でもなんだか昨日の今日で城崎さんとは少し話しずらいんだよなぁ。
「ま、気持ちもわかるけど、そこはちゃんとしておかないと楽しい旅行が台無しだ」
「それもそうだな……じゃぁ後で城崎さんに話して来るよ」
なんて言ったら良いんだろうなぁ……。
✱
「城崎さん」
「え? あ、島並……先輩」
別荘に戻った後、俺は城崎さんを呼びにリビングに向かった。
城崎さんは顔を真っ赤にして俺の方にやってきた。
「な、なんですか?」
「あ、いや……ちょっと良いかな?」
俺は城崎さんを連れて別荘の外にやってきた。
そこで旅行中は昨日で出来事がみんなにバレないようにしようと提案した。
「みんな楽しい雰囲気なのに、変に気を使わせるのも申し訳ないしさ……」
「そうですよね……ごめんなさい、私が変なことを言ったせいで」
「いや、あの……全然それは良いよ。それに嬉しくはあったし……」
「え? あ……そ、そうなんですか……嬉しかったんですか……」
やっぱりなんか気まずい。
でも、このままじゃ初白や茜さんにバレかねない。
なんとかいつもどおりで居るように心掛けないと。
「ま、まぁ話しはそれだけ。旅行から帰ったらその……ちゃんと考えるから」
「は、はい……すいません……」
「いや、俺こそ……城崎さんの気持ちに気がつけなくて……ごめん」
良い子なんだよなぁ……。
元気で明るしい、礼儀正しいし、可愛いし。
この子に告白されて何が不満なのだと、第三者は思うだろう。
でも、俺は今彼女と付き合うことよりも強くなることを望んでいた。
もう二度とあんな風に誰かに心配を掛けないように、俺はもっと強くなりたかった。
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