第197話



 結局俺はこっそり部屋に戻り、部屋で大人しくしていた。

 あんなことがあった後で城崎さんとどう接したら良いかわからないのもあるが、周りの奴らにそのことがバレるのは今の状況ではまずい。

 絶対ボロが出るだろうし、茜さんや初白に何を言われるかわかったもんじゃない。


「はぁ……まさかなぁ……」


 他の奴らも今はバーベキューを終え、風呂に入ったり、リビングでゲームをしたりとそれぞれ過ごしているようだ。

 下の階からは楽しそうな声が聞こえてくる。

 

「あれ? 兄貴下来ないんすか?」


 俺が考えことをしていると、大島が部屋に入ってきた。


「あぁ、悪い。先に休ませて貰うわ」


「え!? 一緒に大富豪やりましょうよ!」


「悪いな、お前らで楽しんでくれ」


「えぇ〜じゃぁ、麻雀なんてどうですか?」


「おっさんか! 大体四人居ないとあれって出来ねえんだろ? 知ってる奴居るのかよ」


「茜の姉さんと真奈美姉さんは知ってるって言ってましたよ?」


「あの二人なんで知ってるんだよ……」


「まぁ、でも眠いなら仕方ないっすね。また明日っす」


「あぁ、じゃぁな」


 大島はそう言って、部屋から出ていった。

 俺はベッドに横になり、窓の外から星空を見ながら色々考えていた。

 城崎さんがまさかなぁ……まぁ、でもあの子の学校は女子校だし、近くに居た異性が俺だけだったからって可能性もあるけど……。

 いっそのこと付き合ってみるか?

 いや、でも今は鍛錬に集中したいし。

 てか、そもそもの話、俺は城崎さんのことが好きなのか?

 わからん……自分の気持ちのことなのに、俺は自分がわからない。


「はぁ……難問だなぁ……」


 なんてことを考えている間に、俺はそのまま眠ってしまった。

 疲れていたこともあったのかもしれないが、ベッドに横になって直ぐのことだった。

 しかし、眠った時間が悪かった。

 今まで眠っていた時間よりも三時間も早かったため、俺は夜中に目を覚ましてしまった。


「ん……ふあ〜あ……何時だ?」


 俺はベッドの上に置いたスマホを確認する。

 スマホには2時3分と表示されていた。

 どうやらみんな眠ってしまったようで、周りは異様に静かだった。


「そうか、無人島だから俺たち以外誰も居ないんだ……」


 いつもなら夜中に起きても多少は外からの雑音が聞こえてくるが、今日はそうではない。

 本当に静かだった、聞こえて来るのは虫の鳴き声や波の音だけだった。


「喉乾いたな……」


 俺はそう思い、ベッドから立ち上がり飲み物を取りに一階の台所に向かう。

 すると、なぜか台所の電気が付いていた。


「ん、なんだ初白か」


「あ、先輩……どうしたんですか?」


「いや、喉が乾いてな」


「あ、じゃぁ飲みます? 麦茶ですけど」


「あぁ、サンキュー」


「じゃぁはい」


「いや、お前の飲みかけとか嫌だよ」


「えぇ〜間接キスのチャンスなのに〜」


「お前と間接キスとか死んでも嫌だね」


「あぁーひっどいなぁー」


 台所に居たのは初白だった。

 スマホを弄りながら麦茶を飲んでおり、持っていた麦茶のボトルを俺に差し出してきた。

 こいつも眠れなかったのだろうか?


「先輩なんでバーベキューの後来なかったんですか?」


「あぁ、ちょっと疲れてな」


「へぇ〜先輩でも疲れるんですね」


「当たり前だろ? お前みたいな奴の相手をするのはかなり体力が居るんだよ」


「それどういう意味ですか? 喧嘩売ってます?」


「あぁ、大安売りだぞ」


「うわぁーじゃぁ私買っちゃおうかなぁ〜」


「おぉ馬鹿やめろ、包丁を仕舞え」


 こいつは俺を殺す気か!


「まぁ、冗談はさておき……」


「冗談の顔じゃ無かったぞ」


 俺はコップに麦茶を注ぎ、それを飲む。

 初白は俺の隣でスマホを弄りながら俺に話掛け続けた。

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