第186話

「だからちげーって言ってんだろうが!」


「本当ですかねぇ~?」


「あぁマジでこいつうぜぇ……」


 やっぱりこいつ誘わない方がよかったかもしれないな。

 

「蓮花ちゃん、もうその話は大丈夫だから」


「まぁ、被害者の瑠華ちゃんがこう言ってるしもう勘弁してあげましょう」


「お前は一体城崎さんのなんなんだよ……」


「ほら、早く私と瑠華ちゃんの分の飲み物も持ってきてくださいよ」


「自分で持ってこいアホ」


「じゃ、じゃぁ私が……」


「あぁ、城崎さんが行くことないよ。俺が行くよ」


「わかればいいんですよ、わかれば」


 いつかこいつをグーで殴りたい……。

 俺はそんなことを考えながら再び席を立って、飲み物を取りに向かった。

 




「初白さん、気持ちはわかるけどあんまりあんな事を言っちゃだめだよ? 平斗に嫌われちゃうよ?」


「べ、べべ別に私はそれでも……」


 はぁ……この子はまだ少し恥ずかしさが抜けていないというか、少し意地っ張りなところがあるんだよなぁ。

 このままじゃ、目の前のライバル二人に先を越されてしまう気がする……。


「なんかごめんね蓮花ちゃん……」


「瑠華ちゃんは悪くないわよ、悪いのは先輩だもん」


「あれはない……」


「光音さんもそう思いますよね?」


「あれは島並が悪い」


「ですよねぇ!? 全く先輩には少しデリカシーってものを学んで欲しいです」


 この子たち本当に平斗が好きなんだよね?

 なんでこんな生き生きと悪口を話すんだろう……。

 

「で、でも……頼りになるし、それにあの……カッコいいですよ」


 素直なのは城崎さんくらいか。

 やっぱり彼女のこの性格はかなり有利だよな……逆に初白さんのあの性格は平斗に誤解を与える場合もあるから少し厄介だな。

 光音さんはまだわからないな。


「うん……いつでも助けてくれる」


「ま、まぁ……確かに来てほしい時に来てくれるかも……」


 全員ライバルだという認識はあるのだろうか?

 好きな人の話題で女子が盛り上がるのは知っているが、対象者が同じ男子でも盛り上がることは知らなかった。

 まぁ、それだけの魅力が平斗にはあるんだろうな……。


「誰とくっつくか……僕にもわからないや……」

 

 やはり類は友を呼ぶという言葉は会っているようだ。

 平斗を好きになった女の子たちは平斗を通じて仲良くなっている気がする。

 あ、でも城崎さんと初白さんはまだ光音さんが平斗を好きな事を知らないのか。

 というか、光音自体自分の感情に気が付いていない可能性もあるな。

 まぁでも……光音さんを見ている感じ間違いないとは思うけど。

 僕がそんなことを考えていると平斗は両手にドリンクを持って戻ってきた。


「ほらよ」


「ありがとうございま~す」


「っち……はい城崎さん」


「あ、ありがとうございます」


「なんか態度違すぎません?」


「自分の胸に手を当てて考えてみろ」


「うーん、まだ成長途中って感じですかね?」


「誰がテメェの胸の発育の具合を聞いたよ!!」


 なんだか初白さんと平斗はこういう感じの方が良いのかもしれないな。

 初白さんが平斗をからかって、平斗がそんな初白さんに怒って……。

 やっぱり城崎さんは村谷に似てるな。


「はぁ、初白と二泊も一緒とか気が重いよ」


「楽しそうじゃないか」


「何を言ってんだよ、あいつのアホに付き合うのは大変なんだよ」


「ふふ、そう言いながらも平斗は初白さんに毎回付き合ってるじゃないか」


「好きで付き合ってるわけじゃねぇよ、はぁ……」


 平斗、君は中学時代にも同じことを言っていたね。

 一番近くに居た僕は分かるよ。

 君はもう初白さんに何か特別な感情を抱いている。

 それが友情なのか愛情なんかはわからないけど、君は毎回そのことに気が付かない。

 前は僕はそんな君に対して何もしなかったけど、今回は僕なりに行動させてもらうよ。

 一応僕は初白さんに頑張って欲しいからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る