第20話
「はぁ……朝から災難だわ」
「あ、平斗。どこに行ってたんだい?」
教室に戻ると、さっそく高弥が俺に話かけてきた。
「ちょっと、いろいろな……」
「いろいろ? あ、それよりも今日の放課後なんだけど……」
「え? 今日の放課後?」
*
時間は流れ、あっという間に放課後になった。
放課後は初白と高弥が一緒に帰るので、俺はゆっくり一人で帰宅しようと思っていたのだが……。
「じゃあ、帰ろうか、二人とも」
「あ、あぁ……」
「は、はい……」
どうしてこうなった……。
なんで高弥は初白だけでなく、俺まで誘ったんだ……。
初白に至っては今朝の生き生きした目から、完全に生気が抜けてんだけど……。
いや、まぁ……何となく高弥の事情もわかるよ?
おそらく、あんまり知らない、しかも後輩の女子と二人きりという状況で緊張しないように、俺も誘ったんだろうけど……。
てか、初白はいつまで俺の足を踏んでんだよ!
別に俺のせいじゃないだろ!!
「せっかくだし、どこか寄り道でもする? 少し話もしたいし」
「お、おう……俺は別にいいぞ」
「わ、私も全然大丈夫です」
「そっか、じゃあビター・バックスにでも行こうか」
俺たち三人で大人気コーヒーチェーン店である、ビターバックスに向かった。
「ねぇ先輩……どうしてあなたがいるんですか? 邪魔なので帰ってください」
「俺もそうしたいが……大事な話があるなって高弥に言われちゃな……しかもあんな真剣な顔で」
俺と初白は前を歩く高弥に気が付かれないようにコソコソと話をしていた。
朝、俺は高弥に放課後に大事な話がるとかなり真剣な感じで言われてしまった。
そんな高弥の頼みを断ることもできず、俺は仕方なく初白と高弥の帰宅に付き合うことになってしまった。
「むぅ……まぁ、私もいきなり二人っきりってシチュエーションよりは良いですけど……あ、やっぱり真木先輩カッコいい……」
「おい、目ん玉ハートにさせてる場合か、さっさとお近づきになって来い」
「わかってますよぉ~、蓮花ちゃんのトーク力をとくと見よ!」
「はいはい」
初白はそういって、前を歩く高弥の元に行き、高弥に話掛け始めた。
「真木先輩! 真木先輩はその……」
よし、行け!
お前から高弥とお近づきになれば、高弥もお前に話掛けやすくなる。
何とか上手いこと会話を続けろよ!
「ど、どんな男性が好みですか!」
あいつテンパって飛んでもないことを聞いてるぅぅぅ!
なんで好みの男を聞いてんだよ!
好みの女を聞け!
なんで俺の親友がホモになってんだよ!!
俺が心の中で初白に全力でツッコミを入れていると、初白も自分の聞いたこと場に気が付き、顔を真っ青にしながら俺に助けを求めてきた。
さっそくかよ!
「え? 好みの男性? なんで?」
そりゃあ、高弥もそんな困った顔するわな……。
好みの男性なんて聞かれても絶対わからんし……。
「あ、いや! これは違くて……」
初白が質問を訂正しようとアタフタしていると、その様子に気が付いたのか、笑顔で初白に答える。
「そうだなぁ……僕は平斗見たいな男が好みかな」
「ぶっ! おい! 気色悪いこと言ってんじゃねーぞ」
「あはは、ごめんごめん。初白さんが変なことを聞くからさ」
「まったく……初白、お前なんてこと聞いて……っておい、初白……なんで俺の脇腹をつねる」
「まさか先輩がライバルだったなんて……今日からは敵同士です」
「何馬鹿なこと言ってんの! お前が質問間違えるから、高弥がからかったんだろうが!!」
マジでこいつ、これから大丈夫か?
なんか二人きりにさせないほうがよかったみたいだな……。
俺がため息を吐きながら、初白を見ていると、ちょうど目的地に到着した。
こんな調子で大丈夫なのだろうか?
俺はそんなことを考えながら、二人に続いて店に入っていく。
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