第6話

「まず、重要なのはシチュエーションだと思うんです!」


「んなもん関係あるか?」


「ありますよ! 例えば、放課後教室で二人きりとか……」


「この前の俺たちじゃん」


「え、ちょっとやめてくださいよ、シチュエーションが汚れる」


「意味は分からないけど、侮辱されてることは分かった」


「しかし、これは相手が好きな人だと、女の子は緊張してしまうので、ダメです」


「お前は何も話せなくなるしな」


「なので、もっと聞き出しやすいシチュエーションを探します」


「そんな都合の良いシチュエーションあるかよ」


「ありますよ! 例えば、入学したての時、クラスのみんなで連絡先を交換するじゃないですか! そんな感じです!」


「そんなことするか? 俺はしたことなんてないぞ」


「え……あ、先輩あの……ごめんなさい」


「なぜ謝る。あとその可哀想な人を見る目をやめろ」


 クラスのみんなで連絡先の交換なんてするか?

 俺は仲が良くなった奴としか連絡先は交換しないんだが……。

 てか、そんなあんまり仲が良くない奴と連絡先交換しても無駄だろ。


「えっと……先輩ってもしかして……真木先輩以外に友達いないんですか?」


「え? あぁ……まぁ一緒に遊びに行くような奴は高弥だけだな」


「あ……そうなんですか……で、でも友達がいないわけじゃないですからね……い、良いと思いますよ……深く狭くの関係も……」


「だからその可哀想な人を見る目をやめろ」


 まぁ、陽キャっぽいこいつから見たら、俺は陰キャだろうし。

 理解出来ないんだろうな、俺の考えが……。

 一人で居るのも好きな奴がいるっていうのに……。


「聞きたきゃ勝手に聞けばいいんじゃねぇの?」


「それが出来ないから、先輩なんかに相談してるんじゃないですか、馬鹿なんですか?」


「お前は俺を罵倒することしか考えてないのか……」


 こいつは俺を年上として扱っていないのでは、無いだろうか?

 そんなことを考えながら、俺は仕方なく意見をだす。


「こんなのはどうだ? お前と高弥の共通点は俺だ、だから俺を使って連絡先を交換する」


「どういうことですか?」


「まぁ、簡単に言うと二人同時に俺に連絡しなきゃいけない状況を作るんだ」


「ん? 全然わからないんですけど……」


「まぁ、実践してみればわかるだろ、さっそく今日の放課後に実行するぞ」


「はぁ……」





 放課後、俺は初白に何をするかを説明した。


「いいか? 高弥は恐らく俺を探している」


「え? どうしてですか?」


「放課後にゲーセンに行く約束をしたんだが、俺は放課後突然教室から消えている。あいつの性格上、俺を探して学校中を駆け回っているだろう、電話にもずっと出ていない」


「それと私が連絡先を聞くのと何が関係あるんですか?」


「お前も俺を探しているってことで、高弥に話掛けろ、そうすれば高弥も俺を探しているから、きっと見つけたら連絡してくれと、自分の連絡先を教えるはずだ。あいつは必要だと思えば女子とも連絡先を交換するからな」


「なるほど! それなら自然ですし、真木先輩が連絡先を教えてこなくても、連絡先を聞く口実になるってことですね!」


「まぁ、そういうことだ。わかったらさっさと高弥を探しに行け、俺はどっかに隠れてるから」


「はい!」


 初白はそういって、高弥を探しに行った。

 俺は屋上にでも隠れようと、一人屋上に向かって歩いていく。


「あ、あれって並島じゃん」


「え? だれ?」


 屋上に行こうとした瞬間、すれ違った女子二人がコソコソと俺のことを話していた。


「知らないの? 中学の時あいつ……」


「え!? マジ!?」


 彼女が何を言ったか、俺には聞こえなかった。

 でも、何を言ったか俺にはわかる。


「……中学時代か………」


 今の俺を作ったといっても過言ではない俺の黒歴史。

 同じ中学出身の子だったのだろう、俺は名前も知らないが。

 まさか高校に入っても言われるとは……。


「さて、屋上に行くか」


 俺は屋上に向かって足を進めた。

 しかし、その途中で高弥と初白が話をしているのを見つけてしまった。


「うぉっ! も、もう遭遇してたのかよ!」


 俺は物陰に隠れ、その様子を見ることにした。

 まぁ、あいつがちゃんと連絡先を聞けるか心配でもあったし……。


「え? 初白さんも平斗を探してるの?」


「は、はい……ちょっと急用があって……見ませんでしたか?」


 お!

 結構いい感じに話せてるじゃないか!

 そのまま行け!!


「いやぁ~僕も探してるんだけどね……連絡しても出ないし……」


「そ、そうですよね……ま、全くどこに行ったんでしょうね?」


「そうだ! 見つけたら教えてあげるから、初白さんの連絡先教えてよ」


 よし!

 いい感じにシナリオ通りだぞ!

 あとは連絡先を交換するだけだ!


「は、はい! じゃ、じゃあ私のスマホ……あれ? な、ない!」


 あのバカ!!

 なんでこんな順調に言ってるのに、スマホを持ってないんだよ!!


「え? 本当? じゃあ平斗を探すついでに一緒に探そうか」


「え? い、良いんですか?」


 あれ?

 もしかして結果オーライ?

 まぁ、遠回りではあるが上手くは行きそうだな……。

 あとはあのバカのスマホだが……一体どこで落としやがったんだ?

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