後輩と作戦会議
第5話
*
翌日、俺が登校すると門の前で最近良く見る一年生が仁王立ちしていた。
俺は何となく嫌な予感がしたので、彼女に気づかれないように気配を消して、彼女の前を通り過ぎようとする。
「あ、先輩やっときた」
「……」
「ちょっと! 無視しないでくださいよ!」
「あぁ、やっぱりバレた?」
「バレた? じゃないですよ! なんで無視するんですか!」
「別に無視したわけじゃない、お前と話をしたくなかっただけだ」
「先輩喧嘩売ってます?」
「あぁ、大安売りだ」
「じゃあ、私が全部買ってやりますよ。だからこっち向けおい」
「なんなんだよ……」
俺は初白に呼び止められ、仕方なく初白の方を向く。
あからさまに不機嫌そうな顔で初白は俺を見ていた。
「なんだよ、昨日は折角チャンスを作ってやったのに……」
「あんないきなりやられてもこっちにだって準備があるんです!」
「いや、お前のことだから、持ち前の慣れ慣れしさでどうにかなるかと……」
「好きな人の前だと緊張するのは当たり前じゃないですか!」
「にしても緊張しすぎだろ……まぁ、俺はどうでもいいけど。それより何か用か?」
「いえ、まぁ……昨日のお礼をと思いまして……ありがとうございました」
「……それで、本題は?」
「真木先輩からどうやったら連絡先を聞き出せるか、一緒に考えて下さい」
「うわぁ……やっぱりお礼ってのは建前かぁ……」
予想通りすぎて逆につまらないな……。
「なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ」
「だって、昨日は協力してくれたじゃないですか」
「昨日は気まぐれだ、今回は自分でどうにかしろ」
「なんでですか! 最後まで責任持ってくださいよ!!」
こいつは校門の前で誤解を招きそうなことを……。
見ろ、登校している生徒が全員俺を見ているじゃないか。
しかも、なんか軽蔑されてる気がするし……。
「言い方を考えろよ……連絡先なんて普通に聞けば良いだろ?」
「でも、真木先輩は女子に連絡先を教えないって有名ですよ」
「あぁ……そういえばそうだった気がする……」
確かに初白の言う通り、高弥は女子には自分の連絡先を教えることがなかった気がする。
中学時代にクラスの女子と交換して、大変な目にあったとか言っていた気がするが……。
「じゃあ、諦めろ」
「でも、ここで連絡先を知ることができたら、他のライバルに差をつけられるじゃないですか!」
「まぁ、連絡先を手に入れらたらの話だが……」
「……と言う訳で協力してください」
「いやだ」
「何でですか! もう私には何もしてくれないんですか!」
「だからお前は! 誤解を招きかねないことを言うな!!」
第三者が何も知らずに聞いたら、いろいろと誤解を招くんだろうな……。
ほら、登校中の女子生徒の視線が痛いし……。
「お願いします! なんでもしますから!」
やめろ!
これ以上お前は何も喋るな!
女子の視線が軽蔑の視線に変わってるんだよ!
「あぁ、もうわかったよ! ただし今回だけだぞ!」
「え、本当ですか!!」
「あぁ、だからもう余計なことを言うな……」
これ以上は俺の今後の学生生活に関わって来る……。
「じゃあ、先輩の連絡先教えてください! 作戦会議をしましょう!」
「はぁ……わかったよ」
俺は仕方なく、初白に連絡先を教えた。
ちなみに初白のメッセージアプリのアイコンは友達数名と撮ったプリクラだった。
なんか、女子高生って感じだな……。
対して俺のアイコンは去年の夏に買った限定アイスの写真。
なんでこれを設定したんだ?
俺は初白と連絡先を交換し、自分のクラスに向かった。
「おはよう」
「やぁ、おはよう。どうしたの? 今朝は遅いじゃないか」
「あぁ、いろいろあってな」
「もしかして、昨日の初白さんだっけ? その子と何かしてたの?」
「あぁ……まぁ……」
「え? そうなの?」
「自分で聞いたのに、なんでそんな驚くんだよ」
「いや、またなんか『アホか』とか言われるのかと思ったから」
「そこまで俺は辛らつじゃねーよ」
俺が高弥とそんな話をしていると、その初白から俺のスマホにさっそくメッセージが送られてきた。
【今日のお昼、屋上に来てください! 作戦会議しましょう!!】
「……面倒だな」
俺はそんなことを思いながら、スマホをポケットに戻した。
*
お昼休み、俺は高弥に今日は用事があるといって、一緒に昼食を食べるのを断った。
いつも一緒に食事をしているので、心なしか高弥は少し寂しそうな表情を浮かべていた気がする。
俺は初白に言われた通りに飯を持って屋上にやってきた。
屋上は生徒も入れるように常時解放されている。
しかし、屋上に来る生徒はあまりいない。
だからこそ、初白は屋上選んだのだろう。
「あ、先輩」
「おう」
屋上に行くと初白はフェンスにもたれ掛かって、俺を待っていた。
手には弁当を持っており、まだ食べていないのが分かった。
「さて、それでは作戦会議を始めます」
「勝手にどうぞ、もぐもぐ」
「先輩! 真面目にやって下さい! もぐもぐ」
「お前もな……」
まぁ、昼休みなんだし、そりゃあ飯を食うだろ。
なんてことを考えながら、俺は初白と飯を食い、食べ終わった段階で本題に移った。
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