モテるのは俺の友達
Joker
モテるのは俺の友達
第1話
俺の友人はモテるが俺は一切モテない。
そうだ、いつだってモテるのは俺の友人、真木高弥(まき たかや)だった。
そんな友人を持った俺、島並平斗(しまなみ へいと)は大変だ。
女子からは「これ、真木君に渡して!」とラブレターを託され。
好きな女子からは「私、真木君の事が好きなんだけど……どうやったら仲良くなれるかな?」なんて相談を受けた。
モテる友人を持つと大変だ、自分がいかに女にモテないかがわかってしまう。
そんな友人を持った俺は、高校二年生になっても彼女が出来ず、今日も高弥と一緒に放課後の時間を過ごしていた。
「おまえ、また女の子振ったんだろ?」
「あ、やっぱり知ってた?」
「まぁな、いいよなぁ~モテる奴は」
家に帰る道すがら、俺は隣のイケメンにそんな皮肉を言う。
「僕はモテないよ、平斗と同じ普通の高校生だよ」
「普通の高校生は月に三回も告白されねーんだよ」
高弥は日本人の父親とロシア人の母親を持つハーフだ、顔立ちが整っておりモテるのもわかる。
それに加えてスポーツ万能、勉強も出来て人望も厚い。
それに引き換え俺は……。
顔立ちは平凡、スポーツも普通、学力も普通、友人と呼べる存在は高弥のみ……。
こんな俺と高弥がなぜ友人なのか本人の俺にもわからない。
「てか、なんでお前は誰とも付き合わないんだ? お前なら選び放題じゃないか?」
「え? うーん……僕が誰かと付き合ったら、平斗は誰と放課後遊ぶの?」
「そりゃあ、一人で寂しく下校して、部屋に籠ってゲーム三昧だろうな」
「だろ? そんな平斗を放ってなんておけないよ」
「別に俺なんか気にするなよ」
「もちろん、それだけが理由じゃないよ。僕は女の子と付き合うより、平斗と一緒の方が楽しいからね」
「男にそんなことを言われてもうれしくねーよ」
「あはは、そうだよね」
こいつは本当にいいやつだ。
俺みたいなひねくれた人間にも優しいし、裏表が一切無い。
友人としては、俺なんかに構わず誰かと付き合って楽しい学園生活を送ってほしいものだ。
こんな良いやつだから、好きな相手を取られても俺は許せてしまう。
*
私立東條学園、俺の通う学校の名前だ。
偏差値普通、部活も普通の本当に普通の高校だ。
放課後、俺は先生から呼び出された高弥を教室で待っていた。
他の生徒は部活や委員会など、放課後の活動に向かい、教室には俺が一人だけだった。
「はぁ……高弥おせぇな……」
教室でスマホを弄りながら、高弥を待っているといきなり教室に誰かが入ってきた。
「ん?」
「あれ?」
入ってきたのは女の子だった。
茶色っぽい髪にウェーブ掛かったショートカットの可愛い子だ。
一言で言ってしまえば、今時の女子高生って感じのチャラチャラしてそうな感じの子だった。
「あれぇ~? あのぉ~? 真木先輩ってもう帰っちゃいましたぁ?」
なんだこのむかつく話方……。
そんな事を俺は思ったが、俺は彼女の質問に答える。
「あぁ、あいつなら今先生に呼び出されて職員室だけど」
「あ、そうなんですか……残念」
わかったらさっさと帰れ。
そう俺が強く願っていると、彼女はあろうことか俺の机の前にやってきた。
「えっと、先輩って真木先輩といつも一緒にいますよね?」
「……そうだけど」
あぁ、このパターンはあれだ……手紙を渡してくれと頼まれるやつだ。
俺はそんなことを思いながら、スマホから視線を移して女の子の方を見る。
目が大きく、スタイルの良い可愛い子だった。
正直、今まで高弥に告白してきた女子達とはレベルが違う。
まるでテレビから出てきたアイドルのようで、俺は正直彼女を見たときドキッとした。
「あの……お願いがあって……」
「あぁ、手紙を渡してくれって話し? いいよ、渡しておいてあげるから」
ため息を吐きながら俺がそういうと、彼女は首をかしげて俺にこういった。
「え? 違いますよ?」
「は? じゃあ何のようなんだよ」
そう俺が聞き直すと、彼女は俺に頭を下げてこういった。
「お願いします! 私に協力してください!!」
「……は?」
俺は何が起こっているのか全くわからなかった。
「え? は? いや、ちょっと待て、なんだ協力って」
「私が真木先輩と付き合えるように、先輩に力をお借りしたいんです!」
「なんで俺なんだよ……」
「先輩が真木先輩とよく一緒にいるのは知ってます! だから、先輩に協力してもらって、告白を成功させたいんです! お願いします!」
そういうことか……もしも俺が高弥と出会ってなくて、性格がひねくれていなかったら、この子の頼みを受けていたかもしれない。
しかし、残念ながら俺は高弥と出会っているし、性格もひねくれている、だから答えはこうだ。
「なんでだよ、面倒臭い……大体俺にメリットがない」
「え!? ま、まさか断るんですか……」
「あたりまえだ、なんで俺がタダ働きみたいなことをしなくちゃならんのだ」
俺が彼女にそういうと、彼女は顎に手を当てて考え始めた。
「えぇ……私からの頼みですよ……」
「いや、君が誰か俺は知らないし」
「美少女からのお願いですよ!」
「自分で自分を美少女っていう奴にロクな奴はいない」
なんかこいつ、だんだん本性を現してきたな……。
こいつは自分で自分が可愛いってことを理解してる人間だ。
本性は絶対わがままで自分勝手な女だな……俺が一番嫌いなタイプだ。
「えぇーお願いしますよー……先輩~」
「人に物を頼むなら、その人の名前くらい把握してから来い」
「いやぁー正直真木先輩しか見えてなくて」
「お前、どんどん素が出て来るな……」
「てか、別にいいじゃん! 協力して下さいよ先輩」
「慣れ慣れしいな……絶対に嫌だ、面倒臭い」
「えぇ~お願いしますよぉ~」
彼女はそう言いながら、上目使いで俺の顔を覗き込んでくる。
こんな可愛らしい仕草をされたら、世の男子のほとんどはこの子のお願いを聞いてしまうかもしれない。
しかし、俺はういう感じの子は嫌いだ。
「いい加減にしろ、お前みたいなやつに協力する義理はない」
「えぇ~先輩って冷たいですねぇ~」
「あぁ、そうだよ」
俺は高弥には幸せになってほしいと思っている。
だから、この子みたいな軽い子と高弥には付き合ってほしくなかった。
まぁ、最終的に判断するのは高弥だが。
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