偽り妃の後宮騒動〈2〉
萩原なお
【嫌がらせ】
序章
「お前は馬鹿だろう」
絶対に言われたくもない相手からの罵倒に玉鈴は苛立ちながらも否定出来ずにいた。
「馬鹿だ」
明鳳は不機嫌というよりは呆れに似た表情で二度、同じ言葉を繰り返す。
「本当です!」
ぽかぽかと玉鈴の胸を叩く豹嘉はすすり泣きながら同調した。嫌悪する相手でもその言い分は納得できる内容であり、主人の物臭な性格に非難の声をあげる。
困った玉鈴は助けを求めるべく、入り口に立つ尭を見た。彼ならきっと自分の味方をしてくれると思ったが無表情が売りの宦官はその顔貌を憎悪に歪ませていた。
それを見て、無理だと察した玉鈴は続いて明鳳の付き人として蒼鳴宮を訪れていた貴閃へと視線を投げる。けれど、自分を毛嫌いしているはずの貴閃すら何やら悲しげな目で見るので居た堪れなくなった。貴閃の隣に立つ、新たな侍女となった翠嵐も涙目だ。
玉鈴は悟った。今、この空間には自分の味方がいないのだと。
どうこの状況を打破するか考えを巡らせていた時、明鳳が玉鈴の名を呼ぶ。
「何か言い分はあるか」
その問いに玉鈴は首を左右に振った。言い返そうと思ったがこの状況では非難されるのは自分だろう。
それに、こうなったのは十中八九、己の怠惰が招いた結果だと理解していた。
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