死と再生のシムカ

椎名まじめ

世界には、男女差別、人種差別、カースト制度など挙げれば切りがないほど、平等不平等が蔓延している。

そのなかで生と死は、誰にでも平等な稀有なものであるといえる。だが、与えられた生の長さを持ち出すと話はいささかややこしくなる。僕がこれから関わることになる組織は、そんな問題を一笑に付すものなのだが。

一介の高校生である、僕こと雨宮行成がおよそ関わりになることはないだろうそんな組織に、しかもその中心に肉薄していくことになるとは、このときの僕には知る由もない。


始まりはそう、僕が街にある図書館で一冊の本を借りたところからだ。

思春期特有である、オカルトに僕はこの頃ご執心であり、本の背表紙に『死と再生』と書かれてた本を僕は何気なく手に取り、貸し出しカウンターに向かった。


家に帰ってから僕はその本をさっそく読みはじめた。と、その本の隙間からひとつのメモリースティックが、まるで栞のように挟まっていることに気づく。

それは、まるでピストルの引き金のような役割を果たすことになるのだが、僕は無頓着にもそれを栞にして、本を読み進めることにした。


そして週明けの月曜日。僕と妹のありすは、学校へと向かう。

僕とありすは、同じ高校に通っているのだが、そこは思春期真っ只中の二人である。別々にその足取りを向ける。


授業中も、僕は昨日図書館で借りた『死と再生』を読んでいた。

一応断っておくが、僕は高校三年生のいわゆる受験生なのだが、進路も将来への展望もまったくなく、親には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

友達には、デザイナーになりたいんだよね、と名前さえ書けば受かるような専門学校に行くと嘯いている。

そうこうしているうちに、授業は終わり、僕はメモリースティックを栞として本に挟み、ひとつ伸びをした。


その頃、学校ではひとつの噂が流れていた。

この街には死神がいるという。

なんとも物騒な話だが、高校生というものは、少しの危険と多少の刺激を好むものなのである。僕もそのなかのひとりであることは、認めよう。

死をもたらす死神。

チープだけれど、興味が惹かれるワードである。会えるものなら会ってみたいものだ。まあ、だからといって、僕は自殺志願者でもなんでもないことは、一応言っておくことにしよう。



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