第21話

貴族達が、殆どと言うかそれしかいないのだろうが服装が派手な物が多い。高そうな装飾品も付けている。ザ・貴族と言うのがヒシヒシと伝わってくる


(貴族だな。分かりやすい貴族だな。こういう時先ずは、、、、どうしよう。会場を騒めかせたいけどこういうの初めてだから、緊張もしてるんだよな。)


貴族達は、ジークの事は知っているがマドウの顔は見たことないがここに居ると言うことは、近くの者同士で話している。そして、噂のあの男だと結論が出る


「もしや、あれが、、」

「そうでしょうね。四天王を退けた、、」

「マドウ・ロッタールと言ったか、、」

「Sランク冒険者の肩書もあるらしいですね」


(よし!俺の噂をしてるな。もう満足した。)


貴族達の噂声が思ったより大きいので、すぐに聞くことが出来た。それでもうここにいる必要がない。ここに来た目的は何か噂されたいだけなのだ。


(緊張が少し和らいできたな。そうだよ、緊張する必要はないんだよ。だって俺四天王二人も退けたし、Sランク冒険者だし、臆する必要などないんだ。堂々としてればいいんだよ)


心臓の鼓動が自然整う。マドウは、いつもの堂々と村を歩く姿を己を思い出す。いつものようにただ優れたものオーラをだす


「どうする?僕が、貴族達紹介しようか?」

「頼む。折角来たのだから色んな貴族に挨拶くらいしておかなくてはな」


ジークは、マドウがこのままだとパーティーに馴染むことは難しいと考えた。貴族からわざわざ無法者に挨拶などには来ない。

プライドが彼らにはあるので、決して自分からはこないだろう


「それじゃあ、誰からにしようか、!」

 

ジークが僅かに動揺して一点を見つめていた。マドウの後ろを見つめて固まっていた。気になってマドウも後ろを向くと

真っ赤な燃えるような髪と目の男が近づいてくる。恐らくだがこちらに用があるというのをマドウは感じた

彼がマドウ達に近づくと周りの反響が大きくなる


「初めまして。マドウ・ロッタール殿。私はガエン・スカーレットという者だ」

「マドウ・ロッタールだ。」


(四大貴族<エレメンタル>の一つ。炎のスカーレット家か、、、めっちゃ有名な所だな。)


「君の噂は聞いているよ。敢えて光栄だ」

「そうか、、」


(まぁ、王様じゃないしため口でいいよな?)


かなり偉い人だが、ため口でいいなと勝手に思っていると小さな声でジークが


「マドウ君、一応口調は気を付けて。」

「何故だ?騎士は良かっただろう?」


騎士とは、殆どが騎士学院を卒業した貴族であるため先ほど騎士たちと話した時は何も言われなかったのだが今は、何故言われるのかマドウは分からない。


「ごめん。言ってなかったね。こういうパーティーは、何と言うか、、

かなりのお偉いさんしかいないんだ。一応マドウ君は、位はそんなに高くないからいろいろ言ってくる人がいるんだよ。後騎士団は、堅苦しいのが苦手な人が多いから騎士の間は気にしなくていいようにしてるんだ」


「なるほどな、、」

 

マドウは、咳ばらいを数回して一度リセットとした。その後深呼吸で準備を整える

そして、目線を合わせて会話を再開する。


「私の名前はマドウ・ロッタール。知っていてもらえて光栄です。」

「君は、今や国中が知っているからね。」

「そうですか」


先ほどは無かったことにして、テイク2を開始する。ガエンも先ほどの事は無かったことにしてくれたらしい。

 

「お久しぶりです。ガエン殿。」

「ジークも久しぶりだね。騎士団を上手く引っ張ていると聞いている、流石だね」

「四大貴族<エレメンタル>である貴方にそのように言っていただけるとは、恐縮です」


二人はどうやら知り合いの様で、かなり仲が良さそうに見える。二人とも顔立ちが整っている

(この二人と並ぶと、顔面偏差値がもろに出るな。明らかに俺が負けている、貴族達に背を向けよう、、、)


こそこそとナチュラルに立ち位置をずらし、貴族たちに背を向ける。あまりこの二人と並んでいると見られたくないのだ。彼は負けず嫌いであるため負けているのを見られたくない



「魔王軍四天王を二人を退けた時の話が聞きたい。どうだったのか聞かせてもらいたい。」

(どうして、立ち位置をずらしたんだ?彼は、、)


「僕も聞きたいな。」

(何で立ち位置を変えたんだろう?あまり気にしない方がいいな)


ガエンとジークは意味を悟れないが特に言うことでもないので、心の中で疑問はとどめておいた


「構いません。しかし、本人たちが四天王と名乗っていただけで本物かどうかは、分かりませんがそれでもよろしければ、、」

「是非お願いしたい。情報は聞いていたが、生の声はまた違うだろうからね」

「僕もお願いするよ」



会場の貴族たちも、こちらに意識を向けているのが分かった。四天王を退けたマドウの話を聞きたいらしい


(どうやら、俺の話が聞きたくて仕方ないようだな。話してやろうではないか、、、、少し盛るかそっちのほうがカッコいいからな!!)



それから、まずは自身の活躍を話した。若干盛って、、、魔王軍四天王の魔法が全く効かなかったこと。

颯爽と現れ、赤子の手をひねる用に倒したこと。

しかし、話してるときに気づいた


(これ盛らなくても、俺カッコよくね?盛る必要がないな。だってそうしなくてもカッコいいからな。)



その話をわざと大きめの声で話す。周りの貴族に聞こえるように、案の定話が耳に届く。


(聞こえているな。少し大きめに話して、周りが反応するのは気持ちいいな。)


まるで英雄譚のように、童話を話すように、、

最後に自身の抜刀術で、武器を破壊したことを告げた

 

「ありがとう。参考なったよ」

「僕も、興味深い話をありがとう」


ガエンと、ジークは最後まで話を聞いていた。黙って。ガエンは自身の持つ情報と大きな齟齬が無いことを確認した


「こんな話でよければ、いくらでもお話いたします」

「そうだね。ただその前に、僕の娘を紹介してもいいかな?」

「娘さんですか?」

「そうなんだ。多分君と気が合うんじゃないかな?」


「「「「「!」」」」」」


その時周りの貴族たちが大きく反応した。ジークは苦笑いを浮かべていた。

気が合うなんて、普通は言わない。しかも、わざわざ娘を紹介させるなんて、冒険者に対する対応ではない。ジークや貴族たちは、隠された意図を感じた。

自身の娘と、良い関係を持たせたい。


(わざわざ四大貴族<エレメンタル>が娘を冒険者に紹介何て普通はしない。それにガエンさんは今まで娘をどことも関係を持たせなかった。それなのに、ここで、、か)


ジークは、流石だと感心した。行動の早さと思い切りの良さ。他の貴族とは段違いであった


(マドウ・ロッタールが、これから大きな立場になって行くのを感じ取ったのだろうか?それともすでに調べ上げていたのか?彼については、、、どちらにしろ行動力と判断力が凄まじいな)



「エンナ。来なさい」


ガエンが呼ぶと、ガエンと同じく燃えるような赤。長い髪と目はルビーのようにきれいだ。顔立ちも大分整っている

 

(控えめに言って美人だな。ちょっと待ってくれ顔面偏差値が、ドンドン高くなっている。これ足して割ったら平均落ちるな、勘弁してくれよ。)


マドウは、ただ顔面偏差値を気にしていた。

エンナと呼ばれる少女は、赤いドレスを見にまとっておりガエンの隣に立った。

近くで見ると、更に容姿の良さが引き立つ。


「初めまして、エンナ・スカーレットです。、、、」

「初めまして、マドウ・ロッタールです。、、、」


「「、、、、、、」」


(ここからどうしろと?と言うか、この子目つき悪!あ、この子もしかしてあれか?。)

 

マドウは、エンナを見てある考えが浮かんだ。マドウが大好きなお決まりの奴。


(下々を見下す貴族様キャラか?だったら望むところだ。決闘をしろ負けたら奴隷に慣れ。的な感じなら俺の大好物。別に奴隷が欲しいわけではないが強さを見せつけるのは嫌いじゃない。)



二人は無言のまま、数秒が経過する。目は合っているのだが、だからと言ってどちらも口を開かない。


「すまないね。マドウ君、エンナは人と話すのが苦手なんだよ。」

「、、そうなんですか。」


(下々を見下すわけでは無いのか。詰まらないな。)


ガエンが、娘であるエンナの欠点を説明するがマドウ的にはその欠点は好きな物ではない。よって自然と元気がなくなる。


「エンナと少し話してあげてもらえないかい?人見知りを克服させるいい機会なんだ。」

「別に構いませんが、、」

「よろしく頼むよ。ジークは少しいいかな?話があるんだ」

「はい、わかりました」


ガエンがジークを連れてその場から、離れていく。マドウとエンナの二人きりだ。両者口を中々開かない

これは気まずいので、マドウから口を開く


「自身より位が低いものを、見下す気はありますか?」

「、、別に、ありませんね」

「そうですか、、、」


(詰まらん。実に詰まらん。これではただのコミュ障同士の会話練習ではないか。

、、とは言っても他に話すことは無いな。どうしようこの空気)


「、、、朝ごはんは何を食べましたか?」

「パンと卵を、、、」

「右利きですか?左利きですか?」

「右利きです、、、」


エンナは回答はするものの、そこから発展がなく一問一答形式になってしまう。マドウも何を話したらいいのか良く分からない


「昼食は何を食べましたか?」

「パンとスープを、、、」


「どんなスープでしたか?」

「色んな具が入った、トマト風味の、、」


「、、、それは美味しそうですね」

「、、、美味しかったです」



全く、一ミリも盛り上がらない。ここまで上がらないと逆に清々しいとも思えるくらいでありこれ以上話す気無くなった


「「、、、、」」




「会話続いてないようですね」

「想定内だよ。二人の空間を作ってあげるのが大事なのさ、周りの貴族に僕の意図が伝わればいい」


少し離れたところで、ジークとガエンがやり取りを眺めていた。手には酒の入ったグラスを持ち、偶に口に含みながらずっと見ている。

この二人以外も、マドウ達の事は会場にいる全員が意識を向けていた


「そんなに、気に入ったのですか?」

「気に入ったのは確かだね。ただ、気に入らなくても問題ないよ。」

「彼がスカーレット家に有益をもたらせば、それでよいと?」

「そうだね」


ガエンはマドウが、スカーレット家に有益をもたらすと確信しているようだった。

相変わらずだとジークは苦笑い


「マドウ殿は、位はかなり低いですよ?」

「高いからって、必ずしも良いわけではないよ。裏で何かと暗躍してる貴族も居るからね。」

「確かにそうですね。しかし、マドウ殿は有益をもたらしますかね?」

「五将の一人を圧倒して、勇者の育成まで任せられる実力者が有益でないはずがないよ」


ジークに向かって、そうだよねと笑いかける。やっぱり全部知っていたのだ彼は、ガエンの情報網に脱帽。

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