第19話

「というわけで、王都に行ってくる。帰りは、明日か、今日の夜遅くになる。」

「折角、新しいトレーニングを考えたのに、、、残念です」


屋敷の玄関で、屋敷の主であるマドウとメイドのリリィは向かい合った。リリィは肩を落としている


「新しいの思いついたのか、、、」

「ええ。本当に残念。今までにない画期的かつ、辛いトレーニングだったのに。」

「帰るのは、おそらく明日になる。今日は帰ってこれないな、うん。」


マドウが、今日帰るのは不可能、というか帰りたくないので明日にすることにした。わざとらしく頷きながら伝える


「そうですか、、」

「そういうわけだ。留守は頼む。騎士団を待てさせているから、俺はもう行く。」

「はい。大丈夫でしょうけど、一応気を付けてくださいね。貴族は、冒険者を良く思っていないものが多いですから」

「分かってるさ」


マドウは。屋敷のドアを開け騎士団と合流し、王都に向かって出発した。

王都までは、全員走りだ。全員かなりのスピードがある


「やはりと言うべきか。流石に早いな」

「大したことは無い。」


先頭は、マドウとステッド二人が走り、後ろに他の騎士が何とかついてくる。彼らはすでに限界の様だ


「速すぎ、、」

「ちょ、ちょっと待って。」

「まず何で走るんだよ!」


騎士たちの弱音をステッドが聞きいったん止まった。


「これは、お前たちの訓練でもある。きついのは当然だ。

そうでなければ意味がないからな。だが、仕方ないいったん休憩だ。」

「よっしゃー!」

「俺もう無理。」


バタバタと倒れこんでいく、騎士たちステッドはやれやれと言う顔をする。

一方マドウは、1人余裕の表情。


「疲労が全く見えないな。」

「疲れていないからな。当り前だ。」

「貴殿はいつから、冒険者を?」

「五歳だな」


ステッドは分かりやすく驚いた顔をした。若すぎる、普通じゃない。しかし、同時に納得した。


「なるほど、強いわけだ」

「そうでもないさ。」


(やはり五歳から冒険者をやっていたのは、驚かれるな。今後もどんどん言って行こう。)



「良し休憩は終わりだ。王都まで、あと少し走るぞ!」


ステッドの呼び声で、騎士たちは立ち上がりそれを見計らって再び走り出す。結果。何とか王都には全員で着くことが出来た


王都に着いてからは、直ぐに王の住む城に案内された。城の中は、豪華な物で普通ではない。派手なデザインに下には赤いじゅうたんが引かれている。

王城は外よりも警備が厳重の様で、騎士たちが何人も待機している。

騎士たちは、ステッドを見ると挨拶や頭を下げる。


しかし、マドウには、挨拶する者もいるが殆どが複雑な目線を向けていた



「すまんな。複雑な心境だろう」

「気にするな。向けられる理由も分からなくはない」


騎士とは、騎士学院を卒業しさらに試験に受からなければならない。長い年月と苦労を掛けた先にようやくなれるのだ。

そして、国の治安維持、王城の護衛などを引き受ける。王城は誰でも入れるものではない。

反対に冒険者は誰でもなることが出来る。

王国では、彼らは気品がない苦労も大してしてないという風潮がある。


別名、<無法者>

 

実際には、苦労して強い冒険者も居るのだがこういう風潮で下に見られている。

だからこそ、いきなりそんな輩が王城に足を踏み入れ、更にはパーティーに呼ばれたなどすれば良く思われないのも当然なのだ。騎士でも一部しかパーティーに参加は出来ない


(騎士たちの気持ちもわかる無くは無いな。冒険者がいきなり王城に来て、パーティーに呼べれたら気難しいだろうな。)



城の中をしばらく行くと、とある部屋の前でステッドは足を止める。かなり豪華なドアを開ける。


「今、帰ったぞ。」

「お帰り。早かったね」


中は、そこそこ広い。そこに大きな机が置いてありその上には、資料がたくさん置いてある

そこに一人の青年が椅子に座って資料を手に持っていた。ステッドが来たのが分かると資料を置いた。


「ああ。すぐに来てくれたんで助かった」

「それは良かった。」


青年はマドウに向って行き目を合わせた。その後手を差し出す


「騎士団団長の、ジーク・ドラーリ。初めまして、マドウ殿」

「冒険者の、マドウ・ロッタールだ。」


二人はがっちりと握手を交わす。マドウは手を握っただけで強いと確信した。硬いのだ手が、自身ほどではないが積み上げた者の重みを感じた


(強いな。これがジーク・ドラーリ。騎士最強クラスの実力で現団長。しかも、イケメンで女性人気も高い。だが、、、それよりも。緊張して俺の手から手汗が出てる!)


マドウは緊張していた。王城なんて入ったことなどないのだから当然なのだ、今までは気にしないようにしていたが実際は凄い緊張していた


「うん、凄く強いね。握手で分かるよ。」

「その言葉そっくり返してやろう」


マドウは平静を装うが、内心大変だった。その後、お互いに手を放し本題に入るとジークが話し出す。その時軽くズボンで汗を拭いたのをマドウは確認した


(あ、手汗ふいた。俺のふき取ったよ!ナチュラルにふき取ったよ。もっと隠れてやってくれよ!気まずいわ!)



「まずは、来てくれて感謝申し上げる。本来用があるならこちらから行かなくてはならないけど、色々申し訳ない。」

「そちらの事情も少しだが分かっているつもりだ。気にしなくていい」

「そう言ってもらえると助かるよ。」


ジークは、僅かに笑った。これは、人気の理由が分かる華やかで上品な笑いだ。

彼の周りにほんわかしたオーラが錯覚するほどだ


「それでね、早速で悪いんだけど。王様に謁見してくれるかな?」

「、、確かに国のトップには挨拶はすべきだな」

「いきなりで申し訳ないけど、お願いするよ。」

「わかった。」

 

王国の王には、挨拶するのは当然。しかし、ここで問題が発生する


(言葉気をつけないとじゃないといけないかな?キャラ的に俺は、ため口だからな。王様はさすがにダメだよな?、、)


「あっ、それと武器は預かってもいいかな?念のために、、」

「構わん」


(騎士って、殆どが貴族なんだよな。こっちはギリ、ため口行けそう。でも王様か~

謙譲語?、尊敬語?、にすべきか?)


刀と、剣を渡す。合計三本。こんなに持っていても意味はないが何となくで持っている。


「こんなに、武器を常に持っているのはどうしてなんだい?」

「、、自身に合うスタイルを探しているんだ。二刀流か一刀流か、刀か剣か。自身に合う本当の戦法を常に模索するためだ。」

「へぇー。意識が高いな。」


(まぁ、嘘なんだけど。その時の気分で使い分けたり、見栄えがカッコいいから余計に持ってるだけなんだけどね)


ジークは、マドウから預けられた武器を机に置いた。その後


「後、身体検査もいいかな?」

「構わん」


王に合わせるためのは、危険を出来る限り排除しなければならない。その事実をマドウも分かっているのでされるがままだ。

ジークはマドウの体を触ったり服をったん脱がせる。確認だ。


「凄い力を感じるよ。」


ジークが、マドウを調査しながら呟いた。驚きと賞賛を合わせた純粋な、好感だった。興味深そうに眺めている


(、、ホモじゃないよな?体見ながらそんな顔で言われると、怪しく思ってしまうんだが。、、、いや、相手は騎士のトップだ、何を考えているんだ俺は。

失礼しました。騎士団長。)


「大丈夫だね。それじゃ、行こうか。」


検査が終わり、ジークと、ステッドの後ろについて行きとんでもない大きな扉の前でジークがノックして返事が返る扉を開けた。

中には、数人の騎士。そして玉座には王冠を被った王様的な人が見えた。


「オールズ様。マドウ・ロッタール殿をお連れしました」

「うむ、良くやってくれた」


オールズ王は、結構年を取っているように見えた。服装も赤をベースにいかにもと言った服装だ


(王冠って、本当に被るんだな。落ちないのか?それに、頭蒸れると気持ち悪くて大変そうだな。服装も悪く言うとピエロ的な感じだな。)


ざっくりとした感想を、心の中で考えているとジークが少し声を落として言葉を発した


「とりあえず、王様の前で膝ついてもらっていいかな」

「わかった、」


王が座る玉座の前で、膝をついた。取りあえず頭を下げておく

オールズは、怖い顔をしながらも口を開いた


「よく来てくれた。顔を上げてくれマドウ・オールズ。わざわざ来てくれた事に礼を言わせてくれ」

「いえ、お気になさらず。私も、呼んでいただき光栄です」


(言葉使いこんな感じであってるよな?)


「そうか。では、まず一つ確認させてくれ。四天王を退けたのは本当か?」

「本物かどうかは、分かりませんが本人たちは、そう名乗っていました」


周りの騎士たちが、おお、思わず声を上げる。少し大きくなった声をジークが手で制す。声がぴたりと止んだ


「知っているとは、思うが我が国は勇者を異界から召喚したい。」

「存じています。」

「勇者召喚は、遥か昔から王族に受け継がれてきた。固有魔法。その使用には膨大な魔力が掛かるが、もうすぐ十分な量を確保できる。」

「何を言いたいのでしょうか?」


オールズの言葉の真意を読み取れず、マドウの眉が少し険しくなる。理解できないマドウを見ながら、オールズはそのまま話をつづけた


「貴殿に、召喚された勇者の育成を頼みたい。」

「、、!」


驚いたのは、マドウだけでなく部屋にいる者だった。ジークだけだ、知っているので平穏を保っているのは。


「それは、なりません!」


1人の騎士が大声で異を唱えた若い世代の男。目つきを鋭くしている

五将の一人。ダルブ・ハクザン。

実力高いが若干の差別主義を持っていいる


「無法者である、冒険者などに勇者の育成を任せるなど、この城に足を踏み入れているのも良いものでは無いというのに!」

「しかし、マドウ・ロッタールには実績がある。魔王軍四天王を二人も退けたのだ。」

「偽物と言う可能性のあります。もしそうなら、中途半端な者にこの世界の未来を託す勇者を育てさせることになります。どうかお考え直しを。」

「うむ、、しかし。」


頭を下げダルブは、マドウの勇者育成に反対する。王様も確かに一理あると、答えに困っているようだ。

周りの騎士も判断が難しい議題に頭を悩ませる


(テンプレじゃないか!好きだよこういうの。この後あの騎士が俺と決闘する流れだろ。お前の実力を見せてみろ。的な!)


「でしたら、決闘して実力を確かめればよいのでは?」


ジークが決闘を提案した。周りもそれならといいんじゃないかと納得し始める。

ダルブがマドウを吊り上がった目で睨んだ


「うむ、それがいい。決闘をしてその適正を見定める。これならどうだ?ダルブよ」

「分かりました。でしたら、決闘は私にやらせてください。」

「分かった。お主に任せよう」


ダルブは深々と頭を下げ、再びマドウに向き直った。そして剣を抜き先をマドウに向ける


「お前の実力見せてもらおうか!」

「、、いいだろう」


例の如く無表情でマドウは、返したが、、、


(テンプレってやっぱり好きなんだぁ~。)


心の中では、下らないことでいっぱいだ。そのことに気づきもの等いないのだが、、


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