第二章 トライキャット編
第18話
四天王騒ぎから、数日が経過し、マドウは、ギルドに向かっていた。
以前の様な、尊敬の視線が戻り非常に歩きやすい
(この感じ、久しい。誰もが注目をしている。やはりこうでなくてはな、、、)
すると、子供がマドウに寄ってきた。女の子だ色紙とペンを持っている
「マドウ、サイン頂戴!。」
「、、いいだろう」
すらすら、と書き始める。手際が大分いい普段からやっているのではと思わされる
「名前は?」
「ルル!」
まるで、スターのようにサインをさらりと書き手渡す。
「ありがとう!」
女の子は知って何処かにいった、マドウは内心でやはり、日ごろの成果だな、と感じた
(サインの練習していて、良かった。癖字をすらすらかけたからな)
場所は変わってギルド。マドウの登場で、空気ががらりと変わる。
彼は何時もの顔で掲示板の前に立つ
(この感じ、いい!俺が来たことで空気が変わる強者にありがちな展開。、、素晴らしいな)
「お、英雄様じゃねえか」
「リーゼン、良い加減その呼び名は止めてくれ」
(いいぞ!もッと言え!)
「謙遜するな。魔王軍四天王を退けたお前は、英雄とそん色ない。」
「確かに退けはしたが、本物かどうかはわからない。アイツらが勝手に名乗っていたという可能性もある。」
「いや、あれは間違いなく本物だ。あんな化け物はそうとしか思えない。」
リーゼンは、少し恐怖が戻ってきたのか、手を震わせた。あれは天災と言っても過言ではないほどの敵であった
「そうか、、もし、本物だとしたら俺自身も驚きだ。四天王に俺もあそこまで戦えるとは正直思ってもみなかった」
これは、本当の事だ。彼は自分を強いと思っていたが四天王を圧倒できるほどとは考えていなかった。
その場のノリで、カッコよく戦ったが彼自身も少し驚きだった
「良く言うぜ、あんなに余裕で倒したのによ、」
「実際は、そうでもなかったさ。」
マドウは依頼を持って、受付に向かう。
(さて、、、どうするか?ミナミさん、それともツバキさんか。、、久しぶりのミナミさんだな)
「おはよう。マドウ君」
「ああ、」
「マドウ君がこっちに来てくれたの久しぶりだから、嬉しいな。」
「そうか。依頼頼む」
マドウは、依頼を渡す。モンスターの巣の討伐だ。何てことないように渡すが、、
「やっぱりマドウ君は、頭一つ抜けてるね、凄すぎだよ。」
「そうでもないさ、、」
しっかり驚いてくれるミナミが褒めてくれるが、僅かに目を閉じて、全然大したことないですよ感をだす。
「、、わかりやす。」
本当に小さく彼女が呟いた。独り言よりさらに小さい声良く聞こえない。
「何か言ったか?」
「うんうん、何も言ってないよ!」
せっせと、依頼の承諾を終える。一瞬幻聴が聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
「そう言えば、聞いた?怪盗トライキャット?」
「ああ、最近王都を騒がせている。三人の怪盗の事だな?」
トライキャット。王都によく現れる三人の怪盗。特に貴族の家に入り、色んな物を盗んでいくらしい。何やら国の重要書類を盗まれたと大騒ぎだ。
「そう、そう、物騒だよね。怖いな~。誰か守ってくれないかな?」
チラチラとマドウを見る。流石のマドウも何かに気づく。
(これは、、もしかして好意を向けられているのか?でも、違う場合ただの痛い奴だ。、、、、常識的なアドバイスを返すか。)
「トライキャットは、王都に出るから特に心配はいらないだろう。もし、心配なら普段から戸締りをしっかりすることだ。それと、大事な物はどこかに隠す、もしくは番犬を飼う等も効果的だろうな、、」
「、、そう言うことじゃねえよ。」
下を向きながら何か、小さい声で何かを言ったような気がした。が良く聞こえない。
「何か言ったか?」
「いやー。マドウ君はいろいろ知ってて、流石だな、凄いな、って思っただけだよ。」
「そうか、、」
(なんか、あんまり嬉しくないな、、、褒められてるのか?、、、)
本能的に、褒められていないことを感じたのかマドウは、少し首をかしげる
ミナミはニコニコしているが、何処か怖い
「それでは、依頼頑張ってくださいね。」
「ああ、、」
何か、気まずいが気にせずに依頼に向かおうとした時、ギルドのドアが開く。
白い鎧を着た騎士が数人入ってくる。
「失礼する。Sランク冒険者。マドウ・ロッタールはここに居るのか?」
冒険者たちは、皆マドウに視線を向ける。その視線に騎士も気づいた
「貴殿が、マドウ・ロッタールか?」
「ああ。そうだ。」
「俺は、スターリン王国の騎士団。五将の一人、ステッド・オーイルだ。」
おっさんだが、かなり有名な騎士だ。五将、騎士団の中でも選ばれた者に授けられる称号。
「ビッグゲストじゃねえか?」
「五将か、、」
「わざわざ出向くなんて、、」
一気にギルド内が、ざわつき始める。五将のステッドは、マドウを眺めた。
「ほう、、強いな。やはり、噂は本当なのか?」
「そうかもしれないし、そうでないかもな、、」
「どういうことだ?」
「四天王を名乗ってはいたが、あれは本当にそうなのか、確証はない」
「、、、面白い男だ。ただ、強いだけではないようだ。謙遜でも傲慢でもなく、ただ冷静に物事を分析とは、、」
ステッドは、興味深そうに簡単の声を上げる。こんな反応をするとは、彼も思わなかったのだろう。予想の斜め上をいったのだマドウは、、、、
「当然だ。それで、騎士団が何の用だ?単なる事実確認では、無いだろう?」
「もちろんだ。単調直入に言わせてもらう。貴殿を、王国主催のパーティーに招待したい。」
王国主催のパーティー。名のある貴族と騎士しか、呼ばれない高貴な者が集まる。
冒険者は誰でも、なれるため難関な試験を受けた選ばれしものが集まる騎士団より下に見られていたため、冒険者が未だに、招待されたことは無い。
「「「「えええええ!」」」」
「史上初じゃないか?」
「冒険者が呼ばれるなんて。。」
「いま目の前で、伝説が起こっている」
「ふむ、、なるほどな、、」
(是非出たい所だ。こういう集まりは、俺みたいな普段いない奴が行くとざわつきが起こる。それを体験したい、だがすぐに行きます。と言うのもな。
何かダサくね?、、それと、驚いてくれた冒険者達、気持ちいいありがとう。)
「個人的には、出てもらいたい。と言うか、オーケー貰うまで帰ってくるな、くらいまで言われてるからな、、」
少し困った感じで、ステッドは告げた。それなら仕方ない、この人が困ってしまうなら出てやろうとマドウは考えた。
「仕方ない。俺は全く、これっぽちも王国主催のパーティーなどに興味はないが、お前がそこまで言うなら出てやろう。」
うんうん、仕方ないと首を縦に振る。ステッドは良かったと胸をなでおろす
「助かったぜ。俺も帰らなくなるのは、御免だからな、、」
「それで、パーティーはいつだ?」
「今日の夜だな」
いくらなんでも唐突すぎると、思った。普通はもっと早く知らせるものではないのかと不満な顔をする
「いきなりだな、、」
「すまん、、冒険者を本当に呼ぶのかどうかで議論が纏まらなくてな。昨日ようやく決まったんだ」
「だとしても事前に話くらいは、、、いや、何でもない。つまり、俺は夜に行けばいいのか?」
「いや、今から来てもらいたい。色々あるんだ」
「わかった、、」
マドウはそのまま受付に向かった。ミナミと向き合う、彼女も用事は分かっているようだ
「すまない。依頼はキャンセルしてくれ」
「うん、そうだね。それにしても、信じられないよ王国主催のパーティーに招待なんて、、」
「勝手な理由で、依頼を投げ出してすまないな」
「ううん、仕方ないよ。行かないとだめって感じなんだから。」
花のような笑みをマドウに向けてくれる。マドウも心が少し和やかになる
「助かる。」
「あとで色々聞かせてね。」
「ああ、、」
やることは、終えたとステッドの元に向かう。ステッドも良しと、向かうかとマドウを見た
「いろいろすまんな。だが、向かおうか」
「わかった。その前に家のメイドに、伝えても言いか?」
「わかった。早速行こう」
ステッドや騎士たちと、ギルドを出ると。例の彼と鉢合わせする
「あれ、この人達なんだろう?」
ハクトが、1人でギルドに来ていた。取り巻きは、四天王の時に全員、ハクトを見捨てて逃げたので少し、溝が出来たようだ。
ハクトが命を落としそうな時も、助けずに逃げてしまった。悪い事ではない、自身の命を優先するのは。
しかし、自分の為に命を自分に預けた者に好感が生まれるのは当然。
あの後、ハクトは今まで以上に色んな人と接するので中々取っつき難いのだろう。
ハクトが仲良くする者の中には、モンスターの群れ事件の時に、逃げた自分を良く思っていないものも居るからだ
ハクトはマドウを見つけると、目を輝かせた。反対にマドウは苦虫を嚙み潰したような、顔になる
「あ、、師匠!」
「その呼び方は、止めろと何度言えばわかる。」
「この人たちは、どうしたんですか?」
「話を聞け。」
「もしかして、王国の騎士ですか?」
「そうだ、、」
これが、彼の最近の悩みの一つ。天道ハクト、師匠呼びである
(こいつに、師匠って言われてもな。弟子とか取るきないし。先ず俺より強くなりそうな奴、あんまり好きじゃないし)
四天王の後、やたらと彼は絡んでくる。剣の使い方を学びたい、弟子になりたい等と言うがすべて断っている。
しかし、彼は勝手に師匠と呼ぶ
「貴殿の弟子か?」
「違う。こいつが勝手に言ってるだけだ」
「一番弟子の、天道ハクトです」
その名を聞くと、おおっと騎士たちが驚き始めた。<ドラゴンスレイヤ->の名は王都まで響いているようだ
「貴殿が、、あの<ドラゴンスレイヤ->か。魔法が段違いに強いらしいな」
「いや、僕なんて師匠に比べたらまだまだです」
「俺は、もう行くぞ、、」
マドウはこれ以上話してもらちが明かないので、1人歩き出す。そうすると騎士たちも自然とついて行かなければならない
「おっと。確かにそうだな。それじゃあな、<ドラゴンスレイヤ->」
「はい。それと、師匠留守は任せてください!」
後ろから声が聞こえているが、マドウは無視して一人屋敷に向かう。
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