クリームソーダの向こう側 6

見開きページに現場のカラー写真が載っている。

他の安い印紙のくたくたになったページと違い、すっと端を指先でなぞるとちりりと痛む。

真っ昼間の日差しが、容赦なく手前の錆の浮いた遊具を照らしている。

奥は鬱蒼とした雑木林で、視界が悪い。不可解なモノが潜むには、うってつけといわんばかりに。

次のページには、公園の怪奇現象や噂について書かれていた。


現場となった春日公園は、以前からも不審者が出没したり神隠しの噂や事件、写真やホームビデオに不可解な物が写り込むので、近寄る人があまり居ない。

雑木林で発見された男性は誘拐未遂の容疑が掛けられていた。

本誌は今後、男性から逃げた後、神隠しに遭い公園で発見されるまでの記憶を無くした、篠崎あさひちゃん(11)へのインタビューを行いたい!


胡散臭い話だと流し読んでいたが、最後の一行に目が止まった。

被害者の篠崎という名字。

確かに珍しいが、黒い上下のジャージを着て、煙草をふかしている彼女とイメージが重ならない。

「杉ちゃん。これみてや。」

どかっと雑誌を下敷きにして広げられた古地図。

「ここがその公園や。」

何を聞いたとしても、一切答えないつもりなのは、態度から分かった。

「春日公園ではなく、神社...?」

「ずっと昔は守り神様が祀れて、立派な社もあったんねん。」

遠い昔を見つめている。机の上に置いた手をぐっと握りしめて。

「なんでそんな事まで知っとるかは秘密な!」


「さっ!行くで!調べるのはここまでや!」

先頭に立ちコンクリートの階段を、レディさんはかつかつと音を響かせ昇る。

肩が少し震えていた。

「関係者以外立ち入り禁止」の前まで来ると、ここまで見送りに来てくれたあられさんに、軽く会釈をした。

図書館の一階は、変わらず「お静かに」を粛々と守っている。

「この世界で大切な事その2。見えてるものが全て正しいと思うな。常に注意深く観察。」

3歩進んで、そっと耳打ちされた。

顎先を軽く振るのは、口に出さず「後ろを見ろ」と、言っていた。

階段を降りて行くあられさん。

白いタートルネックのセーターを着た背中は、肩から腰にかけて斜めに大きく引き裂かれ、滴る血は紺色のデニムパンツを裾まで黒色に変えていた。

「今はまだ堪忍してや。」

レディさんは真っ赤な唇をぎゅっとつむる。

また振り返ると、階段は僅かに剥落のある白い壁に変わっている。

「おっと、ティンカーは一流やけどお前は相変わらずドジやなぁ。」

僕の肩についた透明なゼリーを摘まむと、床に落とす。

もぞもぞとナメクジの真似して壁を這っていくと思えば、剥落した箇所にくっつき欠のない壁になった。

叫び声の先端が口から漏れた。

受付の向こうで作業する司書さん達が手を止めて、こちらを注意する意味でじっと睨んでくる。

誰も首からネームプレートを掛けていなかった。












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