今日も俺は生きる。死にながらも…

@syar

第1話忘れていた。死ぬと言うこと生きるという事

なんで俺は生きているだろう。


高校卒業してからも大学ではうまく行かなく大学も辞めた。

大学を退学するような人間は社会から受け入れられることなく就職活動はことごとく失敗。

街中でティッシュ配りのアルバイトをして生きている。

いや死にながら生きている。

営業スマイルを無理に作りティッシュを配る。

「生きづらい世界だ」

俺の口癖になりつつある。

人は俺を哀れな奴だと思うだろう。

大学にいくことも出来ず、就職を出来ない。

今を生きるのに必死で他のことなんか考えられない。

もう耐えられない。


「死のう」

マンションに住む俺は自殺に必要なものを限りないお金を使って買った。

紐にナイフに油にライター。死ねそうなものをあらかた買った。

マンションの住人には申し訳ないが今から俺は死ぬ。

事故物件として安くマンション借りられるとでも思って喜んでくれ。


ナイフだと死ぬまでに自分の力が出ないと調べて知りナイフで死ぬ事は諦めた。


窒息死で死ぬと内臓が出てくると自殺掲示板に書かれていて本当かどうか知らないが窒息死は諦めた。

遺体の処理で俺みたいな人の為に迷惑をかけるわけにはいかない。

火で死のうと思ったが周りにまで被害が及んだら申し訳ないと思い諦めた。


なかなか自分で死ぬのは難しい。


ピンポーンとチャイムが鳴った。

「あのすいません。居ますか?」

「あ、はい。なんでしょうか?」

「隣の高橋と言うものなんですが」

マンションの隣の人とはあまり関わりがないから初めてみた。

年齢は俺と一緒ぐらいでとても綺麗な女性でしっかりとしているような雰囲気がある。

「夜ご飯を作りすぎてしまって良かったら食べてもらえないですか?」

日は落ちていて夜と言える時間になっていた。

この人は俺が今から死のうと思っているなんて思わないんだろうな。

腹は減っていた。まだ生きるのに執着しているらしい。

「では少しもらっていいですか?」

「せっかくですから私の部屋で食べませんか?喋る相手がいた方がいいですし」

少し迷ったがどうせ明日には死ぬんだ別にいいだろうと投げやりな気持ちで彼女の部屋で食べることにした。


彼女が作ったのはカレーでとても量が多く一人で食べられる量では無かった。

「一人暮らしなんですか?」

「あ、はい」

「女性の部屋に男なんて入れていいんですか?」

「いいですよ。別に見られるものもありませんし。狼さんにも見えないですし」

俺は少し呆れて緊張がほぐれた。

「さてカレーを食べましょう」

彼女が皿によそったカレーを食べた。

「おいしい」

心からの感想だった。

「でしょ。私カレーめちゃくちゃ好きなんだよね。だからめちゃくちゃ研究したんだよね」

さっきまであったしっかりとした雰囲気はなくてお茶目な女性が現れた?

「悩み事でもあるんですか?」

「え?」

「いえ最初死んだような顔をしていたので」

「別に大したことないではないんですよ。ただ少し死のうかなと思って」

驚くでもなく無感情で俺の話を聞いた。

「死ぬのは辛いですよ」

まるで経験したような顔で言った。

「いえ、すいません。冗談です。カレーありがとうございました」


なんで俺が自殺しようとしていることを言ったのかは分からないが明日にはこの世界から消えることだ深く考えても仕方がない。

明日死ぬ方法を考えよう。


次の日隣の部屋の高橋さんは消えていた。

大家さんにとなりの部屋のことを聞いても知らないと言われた。

「知らないってことないでしょ。だって昨日カレーを食べたし」

「知らないんだよ。一年前から隣の部屋は事故物件だよ。そういえば確か亡くなった人は確かカレーが好きだったって言っていたっけ?」

「なんで亡くなったんですか?」

「そこまでは知らないよ。ストレスでも溜まっていたんじゃない?自殺だし」


呆気を取られた俺はその日から「死」と言う言葉を使うのやめた。




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