第2話 サンプルAはコストがかかる
採血したから、サンプルAの体調チェックをしよう。このボディチェックメガネで!!
ドラキュもん 開発グッズ その10
ボディチェックメガネ
メガネ型の体調確認ツール。メガネを通して、体調確認したい対象を見ると、体調を知ることができる。決して服が透けて見えるとか、そのようなハレンチなグッズではない。僕は紳士なのだ。
「さぁ、サンプルAの体調確認するぞ!」
僕がボディチェックメガネをかけてサンプルAを見ると、サンプルAは恥ずかしそうに体を隠した。
「気持ち悪い。すごく気持ち悪い。ああー気持ち悪い。あなたは悪趣味すぎるわ」
気持ち悪い3連発。こんなに短期間で気持ち悪いと言われた人間はそうはいないと思う。
「気持ち悪いって君の体調を確認しているだけだよ」
「嘘つき!そのメガネでわたしの裸を見てるんでしょ!目つきがエッチだもの!」
元からこんな目つきなのですが……僕は元からエッチな目つきなのかな。つらい……
「裸を見てるんでしょ!だからモテないのよ!」
「モテないけど、それ関係なくない?!裸を見てるんじゃなくて、体調を見てるんだよ。」
「やっぱりモテナイのね」
サンプルAは小馬鹿にした目線を僕に向けてくる。ああーなんだか変な気持ちになってきた。もっと僕を蔑んで女神様。
駄目だ駄目だ。業務に集中せねば、、、
よし、信じてもらうためにサンプルAにボディチェックメガネをかけてもらおう。
「じゃあ、メガネかけてみてよ」
メガネのサンプルAもかわいいな。
「きゃっ・・・本当ね。なに身体隠してるのよ。」
「なんか一瞬、エッチな目で見られてた気がする……」
「そんな訳ないでしょ!……本当に体調がわかるわ。あなたすごく体調悪いわよ。ちゃんとご飯食べてるの?」
えって僕のこと心配してくれてるの?僕のこと好きなの?ツンデレのデレきたの?
「うっうん。ちゃちゃちゃんと食べれてないから、たたったたたたた食べるね。ししんしんしし心配してくれてありがとう」
「確認しただけで心配してないわよ。勝手に勘違いして気持ち悪い」
本日、4回目の気持ち悪いありがとう!
さて、メガネを返してもらい、体調確認をする。
やはり、サンプルAは日々の血液採取で栄養失調気味だ。どうにかして、体調を整えないといけないけど、コストが合わないな……
メディブラッド1本あたりの血液含有量 500 ml。その目標原価が250円。サンプルAから1日に取れる血液が50 lだから、1日あたりにかけられる原価は25000円。原価の内訳は採血くんのメンテナンス費とサンプルAの体調管理になる。
採血くんのメンテナンス費としては、1回に採血くんで取れる血液量が500 mlで、50 l 採取するためには、1日に100回採血くんを起動する必要がある。採血くんを使用する毎に、針の交換および血液が通るチューブの洗浄工程が入り、その費用は200円かかるから、採血くんのメンテナンス費は1日20000円となる。
サンプルAの体調管理としては、サンプルAが血液を作るための栄養補給として、1日に食事代1000円と増血剤の20000円がかかる。ここにサンプルAの衣住費1日2000円が足され、1日23000円。
だからメンテナンスと体調管理で合計 43000円かかる。
1日18000円の原価をオーバーする。このまま販売すれば大赤字だ。
サンプルAはコストがかかる。
「コストが合わないから、栄養補給も減らさないといけない。どうしたものやら……」
「それ口に出すのやめてもらえる?」
「あっしまった!今のなしで!」
「聞こえてるわよ。増血剤の直接投与は、毎日針を刺されるからつらいわ」
「う~ん。じゃあ、直接投与を減らして、血液を作るのに適した食品をつかって、食事での摂取にしよっか。そっちのほうがコスト安だと思う。大量に購入すると安くなるから、レバーを主食にしよう!レバニラ炒め、レバーパイ、レバー餃子、レバートマト煮、レバーカレー……しばらくは僕が腕によりをかけて作るよ!」
「レバーばっかりじゃない!それと、レバーの甘辛煮が抜けてるわよ!王道は外せないでしょ!それとなんで、2個目がレバーパイなのよ!」
「パイ好きだから……」
「確かに美味しいわよね」
この後、めちゃめちゃパイの話で盛り上がった。
「本当は、時間とコスト削減のために、喉の奥にチューブを入れて、焼いたレバーを直接胃に流し込みたかったんだけど、可愛そうだからやめておくね」
「わたしはフェラガモ製造のガチョウね……それも口に出すのやめてもらえる。よくそんな悪魔的発想ができるわね……」
僕は、悪魔ではなく、ドラキュラなんだけど、人間からしたら、どっちも似たようなものか。
「あとは取得する血液を増やすために、体重を倍に増やせば1日の食費をあげられると思うんだけどどう?」
「もうこの話はしたくない。頭がおかしくなる」
しばらくの沈黙の後、サンプルAが質問してきた。
「ドラキュもんは今していること、どう考えているの?」
「う~ん……実はこんな仕事はしたくないんだけど、仕事をしないと生きていけないでしょ……それと頑張るとリリス部長や社長がすごく褒めてくれるんだ。こんなに褒められたのは、母様以来だよ。それと出世して、みんなを見返してやるんだ!君には悪いけど……」
「そう……」
サンプルAはしばらく考え込んで、小悪魔的な表情で口を開いた。
「あなたの名前は?」
「えっドラキュもんだよ」
「可愛い名前ね」
「えっそう?はじめて言われた!母様がつけてくれたんだ!いろんな秘密道具を持つアニメキャラみたいに、みんなの役に立つドラキュラになってほしいと思ってつけてくれたんだって」
「そうなんだ。だから、わたしが採血を痛がってたら、痛くないように、採血くんを作ってくれたり、体調を心配してくれたりしてたのね」
「うん。そうだよ!」
「優しいのね。優しい人って好きよ。わたしはシオンっていうの。改めてよろしくね。ドラキュもん」
はい。好きいただきました!好き確定です。ぼくのコミュニケーションスキルを持ってすれば、どんな女もイチコロだぜ~
「シシシシッウシシオンって名前なんだ!よよよっよよよろしくね!」
「シオンよ。もっとドラキュもんのこと知りたいわ。どんな幼少時代を過ごしたの?」
ぼくは、サンプルA改めシオンと仲良くなれて、ただ、すごく嬉しかったんだ。だってこんなに人と話したことなんて今までなかったから。
だから、この小悪魔的な表情の裏に隠された企みについて、一切知る由もなかったんだ。
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