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第553話 F級の僕は、激しい違和感と既視感に圧し潰されそうになる
第553話 F級の僕は、激しい違和感と既視感に圧し潰されそうになる
6月21日 日曜日B2
「まあいいわ。とりあえずは、
そう前置きしてから、ティーナさんが自分の意見を口にした。
彼女は、もし
そしてそれを踏まえた上での、
「私がTakashiなら、すっとぼけて、“動画って、何の話ですか?” って逆に聞き返すかな……ってTakashi? どうしたの?」
怪訝そうに問い掛けられたけれど、僕の方はそれどころでは無くなっていた。
―――なぜか僕は彼女の語る内容全てを既に“知っている”!
「Takashi?」
ティーナさんが、僕の顔を覗き込んできた。
僕は一生懸命、心を落ち着けながら、言葉を返した。
「ごめん。なんでもないよ」
「なんでもないようには見えないけれど……」
ティーナさんが心配そうな表情で、僕の額に手を当ててきた。
「熱は無いみたいだけど、もしかして今日、体調悪いんじゃないの?」
「体調は……バッチリだよ」
そう口にしながら、僕はやや自虐気味の笑みを浮かべてしまった。
身体の調子には問題無いはずだけど、頭の調子には、多大な問題が発生している可能性が有る。
ティーナさんが、再び心配そうな顔で話しかけてきた。
「今日はもう休んだら? なんだったら、私がここで看病してあげてもいいけど」
僕は努めて明るい口調で言葉を返した。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。ところで
言いかけて、またも激しい違和感が襲い掛かって来た。
―――僕は今から交わされる会話の一言一句全てを既に “知っている”!
はたして、そこからの一連の会話の流れは、僕の“記憶”の中のそれとほぼ一致していた。
目的は僕では無く、恐らく田町第十での
会話を終えたティーナさんに、僕はとりあえず提案してみた。
「一応この件に関しては、井上さんと関谷さんの意見も聞いてみたいからさ。二人がもう帰り着いているか、聞いてもらってもいいかな?」
ティーナさんが怪訝そうな顔になった。
「帰り着いて?」
僕は
「だってさっき、ティーナが僕抜きでグループトークしていた時って、井上さんと関谷さんは、お昼を食べに車で……」
自分でそう話しておいて、僕は顔が引きつるのを感じた。
―――僕はどうして、二人が今、車で外出しているのを知っている?
「Takashi」
ティーナさんが真剣な表情で問い掛けて来た。
「もしかして未来視みたいな能力、或いは、目の前にいる相手の思考や記憶を問答無用で読み取る能力、獲得してない?」
口が異様に乾く。
「そんな覚えは無いよ」
ティーナさんはしばらくじっと僕を見つめた後、首をすくめる素振りを見せた。
「ま、よく考えれば、Takashiの特殊性、今に始まった話では無かったわね」
そして改めてたずねてきた。
「どうする? Inoue-sanとSekiya-sanに連絡、取ってみる?」
そこからの一連の流れは、細部に違いは有れど、ほぼ僕の“記憶”通りに進んで行った。
グループトークモードの『無線機』で連絡を取ってみると、井上さんと関谷さんは、やはり昼食を食べるため、車で外出していた。
僕は二人に相談したい事がある旨を伝え、井上さんから、家族はしばらく帰ってこないから、ワームホールを設置して、彼女の部屋を訪れても大丈夫だと教えてもらった。
そしてティーナさんが謎の留学生エマに変装する時間も含めて、10分後に井上さんの部屋を訪れる事になった。
その後、鈴木の面接についてティーナさんと相談して、鈴木には午後3時半に僕のアパートの部屋まで来るよう、チャットアプリでメッセージを送信した。
鈴木からの返信を確認した僕は、予定通り、エマに扮したティーナさんと一緒に、ワームホールを使って井上さんの部屋へと向かった。
皆で合流後、早速、
これも僕の“記憶”通り、まずは僕以外の仲間達が僕の代理人として、
一応、その場で
それから、均衡調整課が持ち込んできた富士第一専従チームの話に対する返答を皆で考え、いくつかの条件と、地球防衛軍Xの名称使用を提案する事になった。
井上さんと関谷さんに別れを告げ、再度スマホのチャットアプリを確認してみたけれど、
僕とティーナさんが、ワームホールを使って僕の部屋まで戻って来た時、時刻は午後3時10分を少し過ぎていた。
僕の心の中の違和感は、もはや極限状態と言えるほどにまで膨れ上がっていた。
先程、井上さんの部屋で交わされた会話――曹悠然からのメッセージにどう対処するか、そして均衡調整課からの申し入れにどう返事をするか――を僕は既に体験済みである、と五感全てが訴えていた。
しかしその一方で、僕の“理性”は、状況から考えてそんな事はあるはずがない、と叫び続けている。
僕の様子がおかしいのに気付いたのだろう。
ティーナさんが、もう何度目かになる声掛けを行ってきた。
「Takashi?」
僕は無理矢理な笑顔を作って言葉を返した。
「どうしたの?」
ティーナさんは探るような視線を僕に向けてきた。
「どうしたのって、それ、私のセリフよ?」
そしてすっと僕に寄り添ってきた。
「ねえ、
「何かって?」
「実はまた、Ereshkigal絡みの大きなevent体験して来た、とか」
別にそんな記憶は……いやしかし待てよ?
僕は一応、再度今日の記憶、特に一度向こうに戻ってからの記憶を
向こうに【
……別段、イスディフイでの記憶に怪しい所はない。
「特に何も無かったはずだよ」
そう言葉を返してから、僕は話題の転換を試みた。
「そうそう、もうすぐ鈴木が来るから……」
そこまで話した時、僕は急に今から起こる出来事を“知っている”事に気が付いた。
そして同時に、これから必ず起こるはずのその出来事の後、何が起こるかは“知らない”事にも。
僕は、最初に想定していたのとは別の言葉を口にした。
「今の内に、外の郵便受け、チェックして来るよ」
今から起こるはずの出来事――聞こえて来る拳銃の発射音――は部屋の外で発生するはずだ。
ならば今、外に出てしまえばどうなるのだろう?
僕は一人、玄関に向かい、扉を開けた。
冷房の効いている室内とは違う、むわっとした熱気が僕を包み込んだ。
そのまま外に出た僕は階段を下り、アパートの集合ポストへと向かった。
その時、僕はアパートの前に、窓にスモークが貼られ、内部の様子が見えない黒いセダンタイプの車が停車している事に気が付いた。
ちょうど僕がその車に視線を向けるのとタイミングを合わせたかのように、ドアが開き、一人の小柄な人物が下りてきた。
仕立ての良さそうな黒っぽいビジネススーツを身に着け、サングラスをかけた女性。
彼女が僕に視線を向け、サングラスに手を掛けた次の瞬間……!
―――パン! パン!
彼女の頭が
ゆっくりと地面へと崩れ落ちる彼女に向かって、僕は慌てて駆け寄った。
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