19.ノーム王の永久窟の横穴
「ピーパッパッ、パラッポ、パッパ、パラッポ、パラララ♪、ピーパッパ、パラッポ、パッパ、パラッポッ、パラララ♫」
暗く湿った洞窟を、俺は元気良くスキャットマン・ジョーンズを歌いながら歩いていた。
いやぁ、怖い、怖すぎるはこの洞窟。
「ピーパッパ、パラッポ、パッピッぽぉっっ!?!?!」
何か物音がする度に、手に持ったランタンを鋭く突きつける俺。
歌でも歌わんと前に進めんのよ。
ゾンビとかグールとか出てきたらどうしようほんと。
ええ?どうしのたかって?
前回更新が2020年の10月28日。約3ヶ月半ぶりの更新である。作者もストーリーを忘れてしまったのではないかと思われるかもしれない。
なんで突然更新しようと思い立ったかというと、TWでバレンタインに素敵でセンス抜群の「ドラゴン(名前はまだ無い)」の絵をいただいたのだ。
サケ@象の居る(@Sa5UIkczLuXHhsI)さん、本当にありがとうございます。
おじさん、感動してしてまって、良い年をして浮かれ上がってしまいました。
頂いた絵はこちら。ドラゴンのイメージにぴったり。
https://twitter.com/Sa5UIkczLuXHhsI/status/1360807821042884616/photo/1
飲んべえで生意気なドラゴンもワイン片手に喜んでおります。
さてさて、俺たち特攻野郎Aチームもとい、赤い全身タイツの宇宙海賊に変化しているオレこと俺、五反田から俺と一緒にOZの国に飛ばされイグアナからドラゴンに転生したドラゴン(名前はまだ無い)、喋るバニラトラックで変形すると陸戦型ガンナムなキッド、悪の大魔法使いにして今は藁の詰まったかかし娘のクーガ、えーとあと誰だっけ?ああ、レッドアイの族長の娘のビビ、あとこちらも悪の大魔法使いシャムに裏切られたフランカー達近衛兵と共に、陸自の強化外骨格の様な偉容のウィンキー国王、ブリキの木こり王と相対することとなった。
軽い気持ちで会いに行ったのに、なんかいきなりケンカ売られたんだよね。
後に控える無数の機械化兵団も気になったが、こちらには「嵐の中で輝いてその夢を諦めないでぇ~♫」で有名な陸戦型ガンナムのキッドがいるのだ。
ビームサーベル、ロケットランチャー、180mmキャノン等々であっという間に駆逐することができるだろう。
「どうやら、力でわからせないといけないようだな」
ブリキの王がチタン製外骨格の王が巨大な斧を掲げると、背後に控えたサイボーグ達が一斉に戦闘態勢に入る。
「キッド!やっておしまい!」
ドロンジョ風に叫ぶ俺。
「御意」
途端に変形を開始して、派手なバニラトラックから、派手な陸戦型ガンナムに変形を果たすキッド。
さあ、謝るなら今だぞ、ブリキの王よ。
俺は自信ありげに、ブリキ王を振り返った。
二つの眼を赤く光らせこちらを睥睨するブリキ王。
その能面のような機械化された顔面からは何の感情も伝わってこないはずだったが、不敵な笑みがこぼれたような気がした。
「なるほど。そういうことなら、我々も全力を持って戦わせていただこう!」
ブリキ王が大空に向かって右腕を掲げた。
「眠りから覚め起動せよ!我が僕にして、白銀の巨人よ!」
な、なんか嫌な予感。
ブリキ王と機械化兵団後方、緩やかな起伏のある丘の方から唐突、地響きが起こり始め、丘がみるみる崩れ始めた。
土煙の中からゆっくりとその巨大な偉容が起き上がり始める。
鶏冠状の長い角の付いた優美な頭部。重厚感と繊細さが同居する、美しい白銀の全身フォルム。赤い十字のついた巨大なベイル。
そっちかぁ。そっちから来るかぁ。幻影騎士団かぁ。いやあ、大好き。大好きですよほんと。まじ、かっこいいよねぇ。そっかぁ、そっちかぁ。いいなぁ。ほんと、いいなぁ。
その美しいフォルムの巨人をうっとりと見上げる俺。
すると、コクピットの辺りに華奢な女性が現れ、
「マスター!」
かわいらしい声でブリキ王に呼びかけた。
見上げたブリキ王が跳躍して、女性と共にコクピットに消えた。
あーやっぱり。いるんだぁ。いいなぁー、かわいいよなぁ。いいなぁー。
更に心の底からうらやましがる俺。
ええい、こっちだってアイナとかカレンとかシンシアとか出てくるもん!
アイナと、ふ、風呂だって入っちゃうもん!
こ、ここにはいないけど…
その白銀の巨人は、ゆっくりと立ち上がり、そして俺たちの前までその瀟洒で重量感のある美しいフォルムの足で、ズシンッズシンッと歩いてきた。
ブウォンと言う音共にビームサーベルを引き抜く陸戦型に変形したキッド。
光剣を眼前にかざし騎士の礼を取る白銀の巨人。
一礼の後、巨人達の壮絶な戦いが始まった。
両者の激しい戦いは八時間に及んだ。
その間の俺たちはと言えば、戦いに巻き込まれない位置に観覧席を設けて、機械化兵団の方達と酒を酌み交わしながら、この巨人達の戦いを見守るという、なんとも微笑ましい和気あいあいとした展開となった。
機械化兵団の騎士団長であるダイモン団長は騎士道精神にのっとった堅物ではあったが、打ち解けるとなかなか話の分かる男の上、酒が入るとすこぶる良い人になってしまう。
まあ、飲んべえ同士話があったってことで。
一度打ち解けると、こちらも酒豪揃い。
既にどんちゃん騒ぎである。
団長の号令でウィンキー国の城にある酒保も解放され、飲み放題、食べ放題、歌いたい放題。
巨人達の戦いをそっちのけで盛り上がっちゃう始末。
「団長!さいこぉー!」
津軽海峡冬景色を朗々と歌い上げた団長に向かって俺が拍手する。
「いやあ、なんのなんの。では次はクーガ殿ですかな」
「よーし。カーレの悪い魔女が歌っちゃうぞぉ」
いつの間にか用意されたカラオケセットのタブレット型液晶を操作しだしすクーガ。
やんややんや。
ん、そういえばなんか大切なことを忘れていた気が。
朦朧とする頭と眼で、ふと遠くを見やると、そこには片膝をついた陸戦型バニラトラックでガンナムのキッドと、それを直立不動で見下ろす白銀の巨人の姿が眼に入った。
あれ、負けちゃったかな?
向こうから赤い太陽を背負いながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる人影というかロボ影が一つ。その後には華奢な女性がかしずくように付いてきている。
「き、貴様ら…」
我々のどんちゃん騒ぎの様を見たブリキ王が怒りに震える声で言った。
「な、何をしている?」
「まあ、まあ、こっち来て飲みなよぉ。じゃあ駆けつけ五杯で!」
ノリノリでリンドバーグかなんかの懐メロメドレーを歌っていたクーガが、空気を読まずにブリキ王を手招いた。
機械化兵団員達がさっさっと、ジョッキに注がれたハイボールに似た飲み物をブリキ王の前に用意する。
「ぐぅーっといってみよ。ね、ブリキのだんな。ぐぅーっと」
ブリキ王の横に座り込み、俺が先にジョッキを空けてみせる。
「・・・」
強引なノリに弱いのか、ブリキ王がジョッキを一気に傾けようとしたとき、
「マスター」
冷たい声でファティマな感じの女性が声をかけた。
「違うっ!貴様達何をしているのかぁ!この俺が必死で戦っている最中に!」
我に返ったブリキ王が叫ぶ。
流石に事態を察した団長と機械化兵団達が立ち上がり直立不動の姿勢をとった。
「この者達を引っ捕らえろ!」
こうして、俺たちはご機嫌な酔っ払いのまま捕まることになった。
ノーム王の永久窟。
縦穴に落ちてしまうと永遠と落下する運命にあるブラックフォール的な穴。しかし、その永久窟には横穴があったのだ。
その横穴の先にあるパンドラの箱から新しい何をとってくるというのが、我々を解放する条件となったのだった。
しかも、俺一人で。
これでも、団長がかなりブリキ王のことをなだめてくれて、温情裁量の入った結果なのだった。
危うく全員生きたまま渦巻く溶岩に投げ込まれるところだったのだ。
まあ、それでも生身で入って生きて帰ってきた者はいないというノーム王の永久窟の横穴。
そして、更に、運の悪いことに、俺は横穴に入ってすぐに赤い全身タイツの宇宙海賊の変身魔法が解けてしまったのだ。
洞窟の中のせいか、赤いブーツの魔法が一切効かないのだ。
武器は腰に差したコンバットマグナムと予備弾倉のクイックローダーが二つ。それと心配そうなビビが持たせてくれた、おかかと梅と鮭のおにぎりが三つ。水筒に入った暖かいお茶。
凶暴化したゾンビが数体走ってきたり、ハンターとかリッカーが来たら終わりである。
1番ゲージの装填された散弾銃かM32グレネードランチャーと榴散弾とか欲しい。どこかにアイテムボックスかなんかないかね。セーブ用のタイプライターと。
そういえば、YJGamesさんのリメイク版バイオハザードのプレイ動画見ていて思ったんだけど、だいたい、ゾンビが走るってどうなのよ?まじありえない。
しかも、一度倒した後安心して通ろうとする、凶暴化して復活、走ってくるわ攻撃が激しくなるわとか、ほんと「ハー、マジの、ハー」だよ。
不幸中の幸いは、サンサスに切り落とされた左腕だけは元にもどったこと。
なので、左手にランタン、右手にコンバットマグナムを持って進むことができる。これ重要。
たしか、パンドラの箱って、すべての悪と災いを封入した箱のことだよな。最後に希望が残るっていう。
ブリキ王はそのパンドラの箱から、自身の強化外骨格と機械化兵団、そしてあの白銀の巨人ロボットを手に入れてきたそうだ。
そのパンドラの箱から何かしら手に入れてこない場合は、捕まっているドラゴン達仲間が、溶岩の谷に落とされるってことになっている。
いわゆる人質ってやつだね。
あ、どうやって横穴に入ったかというと、何故かドラゴンバスターな曲に合わせて垂直落下していく途中で、壁を△飛びして横穴に入ったんだよね。
そう、三角飛び。ほら、画面の端とかでよくやれるでしょ?
いや、まじで。ふざけてないって。
「真っ暗な縦穴に飛び込んできっかり10秒立ったら、十字キーを右上に入れる感じでAボタン、そのすぐ後に左に十字キー入れてAボタンだ」
真顔?で言うブリキ王を馬鹿面で見つめながら俺は聞いていた。
なるほどね、まず10秒数えて、右上に入れてAボタンと。
ボールペンでメモしようとして、俺はメモを地面に投げつけた。
気にする様子も無く、ブリキ王は
「貴様が失敗したと分かったら、メリーゴーランド山脈にある溶岩の谷に仲間達を投げ込んでこよう」
淡々と言うブリキ王にかつて心優しき賢王と呼ばれた面影は無かった。
ノーム王の永久窟はノーム王の大迷宮の近くにあるらしい。
というのは、申し訳なさそうなダイモン団長に連れられて城内の地下に連れて行かれると、床一面に光り輝く渦を巻く部屋がそこにあった。
「では、御免!」
団長がノリノリで俺のことを蹴り飛ばし、俺はポータルから永久窟へとダイレクトに落下していったのであった。
To be continued.
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