15.陸戦型バニラトラック

「メインシステム、セントウモードキドウシマス」

 俺の後で突然、アーマードでコアな感じの戦闘ナビゲーショの音声がこだまする。

 振り向くと、キッドのボディの色々なところが割れ、引っ込み、付き出し、ものすごい勢いで、そう、

 ”変形”

を開始した。

 あっけにとられて見守る一同。

 れ、練習したんだなぁ…

 呆れとも感心ともつかないつぶやきを発する俺。

 僅か数秒の高速変形によりそこに現れたのは、アーマードな方かと思いきや、ストックのない巨大なマシンガン、左手に先端の尖ったスパイクシールド、顔はかっこいい武者面に二本の金角。

 紺と白を基調とした身長18メートルの陸戦型でシローでアマダな方のリアルロボットが忽然と姿を現した。

 胸の装甲部分にはちゃんとバニラトラックのエンブレム、札束とピンクのギャルの絵柄と高額収入の文字が燦然と刻まれている。

 キッドが成し遂げたその変形は、トランスフォームなあれではなく、むしろリアルロボットな方に一方的に傾いて成し遂げられたようだ。

 俺の伝え方が悪かったかな。練習の仕方が悪かったのかな。

 一瞬そう思うも、まあ、ヒノノニトンのことだし仕方ないか。

 いや、がんばった。がんばったよ、キッド。バニラトラックなのに。

 一同、唐突に現れた巨人を見上げて呆然としたのもつかの間、キッドがいきなり胸部装甲に付いている閃光弾を発射。炸裂する閃光弾が迫り来るグールどもの足を止めると、今度は、腕に持つ100ミリマシンガンを一斉射。

 100ミリとは、10センチである。10センチをその場で物差しかなんかで確認してみよう。で、でかいよね?それが口径だよ?その10センチ口径の強大な弾丸というよりかは砲弾が連続して音速の4倍位の速度で発射されるのである。たまったものではない。相手はジオンの陸戦型ザクやグフカスタムではないのだ。所詮、生身?のグールやジャイアントや兵士だ。

 100ミリ砲弾の連射に、グールだかジャイアントだか装甲兵だかもうわからないくらい肉塊と化して吹き飛んでいく。

「嵐の中で輝いてその夢を、諦めないで♪傷ついたあなたの背中の天使の羽、そっと抱いて、抱いてあげたい~♫」

 思わず口ずさむ俺。あの歌カラオケで歌うと盛り上がるんだけど、男子は高音がついてけないんだよねぇ。まあ、カラオケ行ったら必ず歌うけど。

 さすがに慌てたシャムがグール化光線をリアルロボット化したキッドに斉射。

 しかし、そのアナハイムエレクトロニクスでたぶん開発された、ルナチタニウム合金製?の装甲は、シャムの怪光線をなんなく弾いた。ルナチタニウム合金すげーな。魔法もはじくか。さすが、ガンダム系列機。

 陸戦型バニラトラック、ヒノノニトン、キッド。略して陸バ二。

 ポーン♪、俺は、こう呼ぶことにしたよ(メレブ風)。そのうち、カスタムとかEZ-8とか付く日も近いだろう。

 すかさず、腰にマシンガンを収めた陸バ二が、右ふくらはぎの外側からビームサーベルを抜くと巨大なピンク色の光の剣と化したそれを、一方的にシャムに叩きつける。

 流石のシャムもその巨大なピンクのエネルギーの束は危険と察知したらしく、高速で上空に後退。

 色々な魔法攻撃を放つも、陸バ二はスパイクシールドで簡単に払いのけ、胸部バルカンを斉射して逃げるシャムを追撃。

 その煽りを喰らって吹き飛んでいくシャムの軍勢達。

 たまらずこちらに怪光線を放ったビボルダーが引きつって硬直した。

 や、やっちまった。逃げれば良かった。

 高度な知能を持つビボルダーはそう思ったのだろう。

 ゆっくりと向き直る陸戦型バニラトラック。

 その圧倒的な偉容に思わずのけぞるビボルダー。

 陸バ二は一歩踏み込むと、基本に忠実な連邦モーション、バトオペさながらの下格闘でサーベルをビボルダーにたたき込んだ。

 プラズマティックウォールで防ごうとしたのだろう。

 一瞬、ビームサーベルがビボルダーの前で火花を上げたが、そのままビボルダーに直撃する。

 あっけなく両断されるビボルダー。

 暴れ回る陸戦型バニラトラック。モビルスーツってほんとすげーんだなと思わせる戦いぶり。強大な質量を持つ巨人が暴れると大変なのね。

 シャムは上空高く飛び上がると、白の尖塔へと高速で移動を撤退を開始した。

 見上げる陸戦型バニラトラックことキッド。さすがにあそこまで攻撃できる武器はないかなと思っていると、ドスンッ!という音と共に、背中のウエポンラックを地面にパージ。中から巨大なロケットランチャーを取り出した。

 380mmミサイルを6発も装填できちゃう巨大なミサイルランチャーだ。

 あー容赦ないね。それで、やっちゃう?やっちゃうの?

 陸バ二からターゲットを多重ロックオンする音声が聞こえ、あっという間に連続発射を開始する。

 ミサイルが発射される衝撃で俺たちは思わず耳を塞いでその場にかがみ込む。

 ド派手な火花と煙をまき散らし、6発全弾発射されたミサイルの内、3発がシャムに連続で直撃。

 あー、あれは死ぬな。

 シャムの姿は影も形もなくなるくらい四散した。

 かわいそうに…思わず嘆息する俺。

 そして、外れたミサイルが城の尖塔やらなんやらを容赦なく次々と粉砕していく。

 カーレの城郭は複数の攻城用カタパルトで粉砕されたようになってしまった。

 キッドはロケットランチャーを置くと、マシンガンに持ち替えて、そこら中に乱射しながら突進を開始。

 俺たちも鬨の声を上げてそれに続く。

「フォロー!ミー!」

 思わず叫ぶ俺。

 シャムの軍勢はリーダーが逃げ出したこともあり総崩れとなり、我先にと城へと撤退していくが、これを好機とみた俺たちは、ドラゴン、フランカー、サムス達と、キッドの開けた城郭の大穴から城内にそのまま突入していった。

 

To be continude

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