13.レッドアイ居住区とマグナム弾と火あぶりの刑

 カーレの中心街から少し外れた、レッドアイ達の居住区。

 石材で作られた三階建てほどの建物が長く軒を連ね、日中でも路地にはあまり日が差さない。

 人通りの少ないレッドアイ達が暮らすそのエリアはカーレの他の住人達はあまり近づかないようだ。

 スライムイーターを倒した後、俺たちはレッドアイ達が持ってきてくれた変装用のフードをかぶると、一旦彼らの居住区に隠れることにした。

 キッドは目立つので下水路に残してきた。

 一人で大丈夫かと心配する俺に、

「大丈夫だスパイク。この機会に例のロボットとやらに変形できるように練習しておこう」

 練習って…そんなんでどうにかなるものなのか?

「次に会うときは、私の新たな姿をお見せしよう」

 自信たっぷりで受け合うキッド。

 うん、まあ、あれだ。無理はすんな。

 練習しすぎのキッドが、自分のバンボディを曲げてしまって元に戻れない姿を想像する。

 まあ、本人ががんばるというのだから良いか。

 俺はキッドのボディをバンバンと軽く叩いた。

 念のため、何かあったときには知らせが来るようにサムスが魔法をかけてくれる。

 聞けばサムスはクーガの弟子の一人だったらしい。

 そうそう、スライムイーターから逃げてきたレッドアイの娘は、ビビと言いサムスの妹だった。

 レッドアイ達は、暗黒神を崇拝し、基本好戦的で人の財産を奪うことを神の推奨する行為としているやっかいな連中だ。

 他の種族に対してもかなり冷徹なレッドアイ達だが、妹を救ったことでこちらを好意的にみてくれているっぽいね。略奪の相手としてはみていないようなので、とりあえず良しとしよう。

 サンサス達の救出作戦にも手を貸してくれるという。

 クーガの呪いを解き、カーレ主に戻すことが条件だった。

 俺は約束してやったけど、サンサスはどうかな。それは俺の責任ではない。まあ、呪いはかけた本人が解除するのが一番手っ取り早いらしいからな。

 サムス達はカーレの支配者だったクーガのことをとても尊敬しており、グールになったかかし娘に対しても、かしずくようにして何かと面倒をみている。

 とは言っても、グール化して徘徊するだけなので、仕方なく腰に鎖をつけて丁重に引き連れてきた感じだ。

 サムスは銀のブーツの魔法を俺が無駄に?使ったことを始めはひどく怒っていた。なんでもブーツの魔法はある条件を満たさないと使えないらしい。その条件は、東の魔女かクーガくらいしか知らないそうだ。

 銀のブーツの魔力の次の使い方が分からない限り、俺も暫く金髪の宇宙海賊のままか…

 まあ、いいか。ちょっとやそっと刺されたり、吹っ飛ばされても大丈夫なはずだし(設定では)。しばらくこの金髪二枚目、筋骨隆々男の姿を楽しむとしよう。

 一応、キッドの貨物室を物色してコルトパイソン・357マグナムは持ち出してきた。九ミリパラベラム弾より遙かに重量感のある弾丸。そして本体は1キロを超える黒光りする4インチモデルだ。たぶん、あの宇宙海賊も4インチだったはず。

 この最強宇宙海賊の体なら片手でマグナム弾撃っても大丈夫だろう。

 マグナム弾って何?って思ったことはないだろうか。

 デザートイーグルとかけっこう有名なのに、マグナムというと通常の弾丸より強い弾くらいしか知らない人が結構多い。

 マグナム弾とは、ライフル弾のネックを落として拳銃で撃てるようにする加工というと語弊があるかな。

 ようは、拳銃でライフル弾が撃てるようにすることだ。

 先にも説明したが、ライフル弾は拳銃弾に比べて、破壊力、貫通力が桁違いだ。そのライフル弾を拳銃でも撃てるようにしたのが、マグナム弾=マグナムだ。

 拳銃なので、銃創も短く、火薬も調整されているので、パワーの点ではやはりライフルに劣るが、それでも拳銃でライフル弾を撃てるというのは、かなりの脅威だと思う。

 マグナムが始めて開発されたのは、アメリカの禁酒法時代。

 マフィアの武装化が凄まじい勢いで進んだ当時に開発されたというのも頷ける。

 禁酒法時代のことを知りたかったら、「アンタッチャブル」を見てみてね。柴田とザキヤマの方じゃないよ。ケビン・コスナーが輝いていたときの名作映画。ショーン・コネリー、ロバート・デ・ニーロ、アンディ・ガルシアも共演する、ある意味かなりのドリームマッチ映画。

 デザートイーグルがなんですごいのかと言えば、それをリボルバーより弾倉数の多いオートマティックで撃てるようにしたことだ。

 リボルバーは仕組みが単純なので堅牢に作れるが、オートマティックは仕組みが複雑なため、拳銃サイズでマグナム弾の発射に耐えられる機構は難しい。

 そのうち、拳銃でミサイルを撃てるようになるんじゃないかなと。

 兵器というのは小型化がやはり一番開発費がかかると思う。

 爪の先くらいの大きさの核兵器とか想像するだけで恐ろしい。

 発見も困難だし、複数人に持たせて仮想敵国に潜伏させればそれだけで核の脅威を実現出来る。

 そうそう、Falloutで拳銃で核弾頭を撃てるModがあったけど、目の前で爆発する爆発の再現で処理落ちするのが面白かったな。

 ちょっと話が恐ろしい方向に向いたのでこの辺で。そのうち、そういったSFでも書くかな。

 話が脱線しすぎたね。

 ドラゴン、フランカー、サムス、そして、サムスの願いもあってグール化したクーガを交えて、俺たちは今後の作戦会議を行った。

 ビビがみんなのために食事を用意してくれた。

 うまそうな鳥の丸焼きは香草がたっぷりとかかっており、香ばしい臭いがあたりにたちこめている。脇に添えられたこんがりと揚がったポテト風の何か。ボールに盛られた新鮮なサラダと焼きたてのパン。

 大きめのボトルに入った赤ワイン(のようなもの)を、ジョッキになみなみと注いで乾杯する。

 ドラゴンも大分腹が減っていたらしく、ものすごい勢いで喰って飲んでるな。

 この体、少しは酔うんだけどすぐに分解される感じだな。身体のパフォーマンスが明らかに違う。もはや全身義体化といっても過言ではない。

 会議は、フランカーはやはり慎重論を唱え、サンサスの本拠地で武装や人員を整えて、カーレの攻城戦を行うように主張。

 一方でサムスは、オズのオズマ姫に謁見して救援を求めてはどうかと提案してきた。

 物語的にはオズの女王に会うのが筋かもしれないけどね。

 サムスの話では、オズの国全体に不穏な動きがあり、オズの女王のところでも何か異変があったと噂が入ってきているらしい。

「もしかして、ドロシー様が…」

 と言いさして、フランカーが口をつぐんだ。

 ドロシーはまさに救国の英雄。脳無しかかし、臆病ライオン、ブリキの木こり、犬のトトとの冒険談はもはや古の伝説だ。

 暗黒神であるクーガを崇拝するサムスでさえ、ドロシーの名を口にすることをためらう。

 今回、俺が東の魔女をバニラトラックでひき殺した(この言い方なんかとても抵抗がある)のも何かの因縁ではないかと言っていた。

 この世界に悪いことが起こらなければ良いなと。

 二人の意見を聞いて思うのは、どちらにしても時間がかかるということだ。

 もう少しこう、サクッと助けられる方法はないものか。

 あの美人のネーサンをあのままにしておくのは忍びない。

「しっ!静かに」

 窓の外を見ていたビビが振り返って合図する。

 この部屋があるのは三階だ。俺も窓の脇からそっと下の通りを覗いてみた。

 装甲兵と化したグールの集団が隊列を組んで向こうから進んでくる。

 隊列の後からでかい球体がフワフワと付いてきている。

 三メートルほどもある血走ったでかい目玉だ。その本体となる目玉から更に小さな目の付いた触手を幾つも生やし、目玉の下についた巨大な口からは鋭い牙が何本も飛び出している。かみ合わせが悪そうだなこいつ。

 ビボルダー。初出は、テーブルトークRPGのダンジョンズ&ドラゴンズ (D&D) に登場した怪物である。その後、ジャンプのバスタードで一般的に認知を得た感じがするな。

 「秩序にして悪」(ローフル・イビル)属性。知性は高く人間の言葉を解し高度な魔法を使うことも可能。目からは怪光線を発し、全ての魔法を無効化する。あ、この辺はWikiからの引用ね(笑)

 って、怪光線ってなんだよ。笑えるな。

 この怪光線で死ぬと、死体が残らないので、蘇生魔法が効かないらしい。

 また、マジックアイテムは魔法効果を失ってしまう。

 まあ、今の俺の敵ではないけどね。

「はっ!ミートボールにしてやるぜ!!」

 思わず立ち上がって決めぜりふ叫ぶ俺を、皆が慌てて押さえ込む。

 この宇宙最強海賊になってから、なんでか決めぜりふを吐く癖がついちゃったんだよねー。

 あ、ちなみに、ミートボールとビーチボールの違いって言える?

 隊列の最後のグールが何かビラのような物をまき散らして通り過ぎていった。

 おおよそ、どんな内容かわかるが、とりあえず持ってきてもてもらう。

 そこには、俺たちのあまり似ていない似顔絵と賞金額、そして今日の夕暮れまでに出頭しないと、サンサスとロータグを火あぶりの刑にするという内容だった。

 これはもう、オズ王に会ったり、サンサスの本拠地に行ったりしている場合ではないな。

 後数時間で指定の時刻だ。

 立ち上がる俺をみんなが見上げた。

「まあ、なんとかなるだろ。ごついお姫様の救出といこうぜ!」


To be continude

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