いつもそばに居る

 やけに肩が凝る。また憑いたのか。

 別に心霊スポットを訪れたわけではない。

 ただ思わせぶりな態度を見せつつも一線を越えないでいるだけ。

 生霊は祓っても祓ってもまた憑く。

 私はいつもの瓶と御札とを用意して、私に憑いた彼女の生霊を封じた。これでまたコレクションが増える。

 秘密の本棚に並ぶ瓶の端に、今封じたばかりの彼女の生霊をそっと置く。

 壮観だ。

 これは彼女の恋心の記録。どの生霊も愛おしい。

 瓶を手に取り眺めていると彼女の嫉妬した表情が透けて見える。お気に入りの表情は、私の誕生日のときの顔。

 でも今日は封じたての君だ――瓶を食卓へと置き、グラスを傾ける。

 ああなんて素晴らしいひととき。


 その翌日のこと。

 いつもより肩が重い。

 もしかしてと彼女のことを想った矢先、お節介な友人から連絡が来た。彼女が亡くなったと。

 生霊を閉じ込め過ぎて本体の魂が弱り果てたのか。

 となると今この重みは生霊ではなく亡霊か――このまま瓶に封じたらもう二度と、私に憑いてくれる彼女は現れない。

 そう考えると切なくて、重たい肩にそっと自らの手を重ねた。




<終>

亡霊

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