[短編集] Against 〈human〉:傲慢なる〈人〉への反逆 リベレイターズ

とざきとおる

世界観

 万能粒子テイル。あらゆる物や現象をその場で無から創りだすことができる。何もないところからいきなり金を生み出すことは容易く、炎を再現したり、レーザーなどのSFフィクションも理論上再現が可能であるということ。


 自分の思ったままの物を創造する。まさに神の所業とも言える行為をテイルは可能にしたのだ。そしてそんなおとぎ話のような万能粒子は、自然界の資源ではなく、人体で生成されている。


 残念ながら、使うにあたっていくつかの制約はある。


 これまで述べたことを行うには、専用の機械が必要になる。


 次に、物を創造するための原料となる体内粒子数は限られている。規模の大きなものを創ることは現実問題として難しい。


 そして何よりの制約が、テイルで創り出すには、頭の中で創りたいものをイメージしなければならないこと、そしてイメージが正しく具体的でないと、自分が求めていたものとは全く違うものができてしまうことだ。


 例えばリンゴを作り出そうとしても、外見を思い浮かべただけでは中身のない皮だけのリンゴができる。正しく食べるためのリンゴを創るためには、中身にある物質、そしてその性質を細部に至るまで正しく理解した上で、それを正しくイメージできなければ、求めているものは創れない。


 しかし、それは逆に言えば、正しい想像をできたならば、体内のテイル粒子を使って、どんなものでもその場で作ることができると言うことだ。







この、テイルの存在により人々の生活は大きく変化した。







 日本ひのもとは現在、戦乱の時代となっている。


 人間が誰しも、想像を現実に変える力を持った時代、


 当然すべての人間が良きものとして使うことはなく、悪人が武力によって悪行を行使し始めて、善人もまた自己防衛のためにテイルを武力として使い始める。


 そしてその世の中では、法治国家は成り立つことはなく、一時は弱死強生の世界が実現してしまった。


 倭における旧時代の終わり、現代の始まりは、その生存が保障されない世界の中で特別に強い力を持る〈人〉のの登場だった。


 見た目は同じでも人間に比べあらゆる能力が平均的に秀でていて、さらに万能粒子である〈テイル〉を人間より多く持っているが故に、栄養を得るための食事すら必要がなくなった生物として人間より完璧に近い存在。


 彼ら〈人〉は戦乱の世を、圧倒的な力で勝ち進み、その中で特別な力を持つ華族は領地を持ち、自分達の敷いたルールをもって他の多くの〈人〉を支配下に置き、平均的に能力が劣る人間を〈人〉の間に生きる奴隷と同等の扱いで迎え入れることとなる。


 ただし〈人〉は人間と違い自分でテイルを生成できない。故に、〈人〉は下位種と断定している人間たちを支配、管理し、彼らが生産するテイルを奪うことで、テイルによって成り立つ自分達の生活を謳歌している。


 テイルが存在しなかった旧時代が終わり500年、今はまだ〈人〉の時代。


 かつて生物系で最も繁栄した人間の時代はすでに、〈人〉に必要な財産として管理されることが常識である時代となっていた。


 12の華族、冠位かんいの最高峰、徳位の12家が己の求める理想を叶えるために、他の家と戦いを繰り広げる第二次戦国時代。華族という支配者の存在により、領土内での命の奪い合いはなくなったものの、未だ戦いの時代は続いている。


 そして人間は、一部地域を除き、20歳までの生存可能性はわずか10パーセントという厳しい生存条件で今日を生き続けている。


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