二限と三限の間
「ヤキモチって妬いたことあります?」
先ほどの授業で配布されたどこかの博物館のチラシで折り鶴を折りながら、頬杖ついて窓の外話眺めている藤ヶ谷君に話しかけた
「正月に毎年焼くな、俺は磯辺焼きが好きなんだ」
「さっきの授業が古典だからって、古典的なボケはやめてくださいよ」
「それは悪かったな。人間だし、嫉妬の一つや二つぐらいあるさ。それがどうかしたのか」
「いえね、漫画とかで嫉妬した女の子がぷりぷりと可愛く起こるシーンあるじゃないですか」
「まぁ、あるな。現実じゃまずありえないが」
「そうですフィクションです。古典の作品でも嫉妬するシーンとかありますけど、高確率で殺人に発展しますよね。同じフィクションなのに」
「確かにな、さっきの授業でやったのもそんな感じだったな」
「もうちょっとこう女の子が可愛く嫉妬して、藤ヶ谷君のバカ、もう知らない、そんなにおっぱいの大きな人が良いならその人のところに行けばいいじゃない、みたいな一昔前の媚た美少女モノみたいにすればいいと思いません?」
「例えで俺の名前を出すのは止めてほしいし、勝手に巨乳好きのイメージもつけないでくれ。まぁ、何の面白みのない回答をするならば、当時はそれが受けたんだろ」
「受けたんですかね、なら貴族社会においてそういう変わった趣味を持っている人が多かったんですね。当時は紙なんて貴重なものは貴族しか手に入らなかったんですよ、つまり誰彼構わず書けるわけでもないから作品の数自体少ないし貴族社会でしかそういった読み物は流行ってなかった、そして高確率で嫉妬した人間は人を殺している。イコール、そういう趣味の人が多かったってことじゃないんですか。愛憎劇がそんなに面白いですかね」
「面白いんじゃないのか。大体、お前の言う美少女の可愛さを前面に押し出した、毒にも薬にもならないラブコメが市民権を得てきたのって、割と最近じゃないのか」
「古典の物語も、その毒にも薬にもならないもうちょっと砕けた感じにすればいいと思いません?美少女とかたくさん出してハーレム系みたいな感じで」
「源氏物語とかハーレムじゃないのか」
「流石に母親を恋愛対象にする主人公はちょっと。それに読んだことないですけど、あれってたしか男がメインですよね。私はもっとかわいい女の子たちがメインの、言わば日常系ゆるふわ四コマのようなものが良いんです。月刊誌で連載されているような」
「そんな作品が当時書かれていても、現代まで残ってないだろうに…いや、毒にも薬にもならないと言えば、枕草子とかは清少納言の日記みたいなものだから、お前の好みに合うんじゃないのか」
「春はあけぼのってやつですよね。あれって、気取ったOL感があって苦手なんですよ、こんな日常的な風景でも私はこんな素敵な捉え方をしちゃうわ、みたいなオーラを文章から感じ取れちゃいますよ。絶対Twitterとかに、頭の悪い意識高いツイートとかしそうじゃないですか。青空の写真をアップして、空じゃなくて宙って書いてそうじゃないですか」
「何なんだお前、清少納言に恨みでもあるのか」
「毒にも薬にもならないってそういう感じじゃないんです。もっとこう、可愛いのが仕事、みたいな感じが良いんです」
「古典文学にそれはないだろ。そもそも、求める先がおかしいだろ、古典にしろ現代文にしろ中身があるからカリキュラムで取り上げるんだから」
「その中身で何を学べって話ですよ。物語はほとんど愛憎劇か男が片っ端から女を落とすものかイキった日記くらいですよ」
「確かにお前の言う通り、身も蓋もない話をすれば、歴史のある作品だから、という理由だけで評価されているものがほとんどだろうな」
つまり私が毎日つけている日記も、数千年の時が経てば教科書に載るかもしれない、ということですか
登場人物が四人しかいない寂しい日記が世に出回ってしまう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます