爆ぜることなく枯葉のワルツ

エリー.ファー

爆ぜることなく枯葉のワルツ

 これらの問題に対して幾つかのアプローチがあるものの、その多くは期待できないものばかりである。

 研究段階であることは言うに及ばないが、それ以上の理由が含まれていることはここに記さない。詳細については補論について読むこと。

 今後、この研究が日の目を見ることはなく、またこの研究に費やされた時間や費用は一切回収されず、報われることはないと覚悟をしておくこと。

 この研究に注目をするような機関が現れるようなことはない。本来であれば、研究の出口を決め、利益を見込める状態になってから行うべきであったことは間違いない。しかし、これらは事象についても些末であると最初期に決定されてしまったため、後手に回ってしまったことは大きな問題となった。

 研究において、特にどのような人員が回されたのかは重要な点ではあるが、この部分については記述を避けることとする。幾つか理由はあるが、今後、つまりは私にとっては未来であるが、この問題に取り組んだ者たちが差別される可能性が非常にた高い。この点については、後程説明することとするが、その可能性を鑑みての配慮と考えて欲しい。

 方針としては、この研究は三十九の段階に分けるエストル方式を採用することとし、記録に関しては映像と文章、そして記憶という本来であれば例外的なパーツを利用することを推奨する。

 禁止事項について、多くの障害があるもののこれらは無視することを推奨する。理由は幾つかあるが、この研究施設内で実験が行われる以上、この禁止事項を破った場合による損害を受けるのは当事者であり、封鎖することによってそれらの封じ込めは可能であると考えられる。

 このような形の文章を残すことは、この文章を読んだ人間に対して覚悟を問うようなものであると思われるだろうが、それは間違いである。正確にはこれは強制である。この研究を知り、そして研究員として存在している限りはこの行為は正当なものとして定義されるべきであり、また先に進めないことを研究者として恥と認識するべきと考える。

 提示された情報の少なさは間違いないものの、それらの記録もまた貴重であることを胸にとどめて欲しい。

 これは、未来の研究者たちへの挑発であり、避けて通ることのできない挑戦である。


 この枯葉は多くの人の骨を貪ることで成長することが分かっている。

 また、貪る度に微妙に形の違う枯葉、つまりは自分の分身を作り出し、使役するという能力を持っている。使役という言葉の通り、枯葉の群れとなった場合、使う側と使われる側が存在することとなる。この中では、この使う側である最初の一枚目の枯葉を親とし、それ以外の枯葉を子とする。親は枯葉の群れの中心におり、その周りを無数の子の枯葉がかくまうという形をとる。親を粉々にすることによって子は普通の枯葉となり、一切の特殊な動きをしなくなる。

 決して人を襲うようなことはなく、あくまで人骨のみに反応する。例えば人骨の周りを布やビニールなどが覆っている場合は決して吸収しようと近づくことはないし、無理に枯葉の群れに入れても避けるのみである。このような点から危険性は低いと言える。

 枯葉たちには人間のような意思は一切なく、あくまで種の保存と繁栄のみを行動の第一目標として捉えていると考えられる。また、枯葉が特殊な電波を出していないことなどから、意思の疎通を図っているとは考えられない。むしろ、枯葉たちは一つの大きな意思を持っている複数の物体に分かれた生き物と定義するべきと考えられる。

 枯葉を捕食しようとする生き物はいるものの、それらはいなされることが分かっている。このことから、普通の枯葉ではないと認識されることは間違いないが、あくまで捕食者の立場ではなく被捕食者であることが明確に認識されているようである。このことからこの枯葉は突然生まれた存在ではなく、生物ピラミッドのどこかに長年位置していたことがうかがえる。今まで確認できていなかった点を考えると、枯葉たちは何か特別な事象、自然の起こす災害的なものと考えるべきだと思われるが、それをきっかけとして人間にも認知可能な存在となったと考えるべきである。また、そのことが枯葉たちの目的によるものであるか結果としてそのような状況になってしまったのかは確認できない。

 枯葉を一枚ずつ調べたが、雄や雌の区別、共通した外見的特徴、本物の枯葉との差異などは一切見つからなかった。火を付けるとどちらも燃え、土に埋めておくと同じペースで地中のバクテリアに分解された。

 この点については未だ研究中である。


 枯葉たちはある瞬間から研究施設内の備品を取り込むと驚くスピードで増殖した。中に取り込まれた研究者たちは生きてはいるものの、そこから出ることができず枯葉たちのなすがままとなっている。この状態を保管するために、該当研究施設は一部隔離されることとなった。このような事態に陥った理由として、何度か研究者たちが枯葉を外部に持ち出そうとしていたからではないかと考えられている。持ち出そうとした研究者たちは皆、枯葉の研究を行っていなかった者たちであり、外部の研究者と共同で研究を行っている者に多かった。


 枯葉の貴重性については、極秘事項とする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

爆ぜることなく枯葉のワルツ エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ