#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
影迷彩
A hundred suns
俺は夜の灰色の砂漠でテントを張り、星空を見上げていた。
風が寒く、肌をチリチリと刺してくる。
荒涼たる砂漠の丘を越えて、俺は夜空を見上げる。
流星群が地平線の彼方に消えていく。
それはまるでいくつもの命、幾人もの夢のようでもあった。
座席の後ろにありったけの食料と燃料を詰めて、故郷を旅立ってから長い時間が経つ。
俺は故郷で生きる目的を見失った。もう一度生きる意味を探すため、新しい夢と場所を追い続けている。
テントの扉を開き、外で火を炊く。
沸かしたお湯に安物のコーヒー豆を淹れて、俺はそれを飲み身体を温める。
味はとても苦く、喉を通るその刺激が空を見上げるとスッとした気持ちになる。
空を見上げて思う
いつまで旅を続けてようか
もう一人になって時間が経つ。
時々、別れた友の顔を思い出す。
彼と美味しいコーヒーを飲み合いながら、都会の空を一緒に見上げていた。
ずっと隣にいて、互いに支え合ってきた、俺の大事な人だった。
友が俺の前からいなくなってから、俺は生きる目的が何なのか探し始めた。
だけど一人で旅する大地は果てしなく、俺に道を指し示さない。
目を閉じても、外と見える世界は変わらない。
どこまでも道の終わりが無く、どこまでも変わらない光景。
何を追い求めて旅を続けているのか、度々思い続ける。
俺はテントの外に出た。
地平線に一閃の光が差し込み、大地との境界線のように空を区切っている。
青色の空が、裂けた雲の隙間から覗き込んで見える。
今日も一日が始まることを、身体に浴びる日差しから感じ取った。
それを知らせる太陽は、俺にとって明日への希望であり活力だと思い立った。
テントを畳み、俺はバイクに跨がった。
目的地は未だ見えない。生きる意味も未だ見えてこないが、走り続けようという気力は灯火のように湧き上がっている。
この日の出を、友にも見せたかったと思う。
俺と一緒に苦しみ、叫びあった君は俺の隣にいない。
俺はこれからも、一人で道なき旅に終わりを探し続ける。
何故友が隣にいない世界で俺は生き続けるのか、その理由を探し続ける。
夜明けの空の下、俺は砂漠をバイクで走る。
オレンジの大地を、友との思い出を背にして走り続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます