第5話 訓練開始
早速裏庭にやってきた二人は、模擬戦の準備を始める。
二人はまだお互いの実力を知らない。マインは、村の道場で一番の腕だったという。そして、ソウは7歳から魔物を狩りに行くほどの実力。お互い同世代に比べたら圧倒的に実力者であることは理解していた。
そして、二人は向かい合った。模擬戦ではあるものの、独特の雰囲気が周囲を包む。この時、マインはソウからこれまでソウが努力してきたものの大きさを表すような雰囲気を直感的に感じ取っていた。ただそれは、特に戦闘に影響を与える程ではなく、気を引き締める。
「いくぞ!」
初めに均衡を破り、動いたのはソウだった。素早い動きだし、無駄のない足運び、少しでも油断すれば、剣により体が斬られるそんなことを思い起こされる。しかし、マインも油断しない。型通りの綺麗な受け、そしてそこから少しソウの剣を流し、次のカウンターを繰り出す。ソウの服を掠めた。
「やるな!」
「そっちもね」
「じゃあいくぞ!」
これから本気を出すかのような、そんな言葉をソウが言ったことに少し驚きの表情をマインが浮かべる。そして、その言葉は間違いではなかった。ソウの動き、練度、スピード、パワー全てが一段上がった。
「なっ!」
マインは、ソウのギアアップに防戦一方にならざるを得ない。そして、それも限界に達し、ソウはマインの首元に剣を突きつける。
「俺の勝ちだな」
「うん、すごいな」
ソウとマインの努力の差が出た結果となった。こうして初日の模擬戦は終わった。
それから、わずか1ヶ月後のある日。
恒例の模擬戦を行なっていた。裏庭にはもはや名物となりつつある、マインとソウによる、模擬戦の音が響いていた。
「くっ、やるな」
ソウの苦しい声が最近は多くなってきている。
「俺の負けだ」
「やった、初めて勝てたよ」
この1ヶ月間ソウとマインは毎日模擬戦を行なっていたが、初めてマインがソウに勝ったのだ。しかし、それはまぐれの一勝ではないことはソウにもマインにも分かっていた。ソウも実力はついていたが、確実にマインの方が早い速度で実力がつき、ソウの剣の腕を超えたことになる。
「さすが、上級剣術、身体強化魔法持ちというところか」
マインはこの1ヶ月、上級剣術での才能そして、第1階級身体強化魔法を使いこなせるようになっていた。ソウは幼少期から相当の苦労をしてきたが、それが1ヶ月という期間で抜かされてしまったのだ。
「ごめん、やっぱり身体強化魔法と上級剣術のギフトは相性が良すぎるよね」
「おい、謝ったりなんかするんじゃない。それはマインの才能なんだからな」
ソウはその日、初めて魔物の狩りと打ち込みの練習をサボった。同世代の友人に敗北した。それは今まで誰にも負けない努力をしてきたソウにとっては相当の衝撃だったに違いない。それもわずか1ヶ月でだ。
「俺も今までの努力はその程度だったということなのか」
良いギフトを二つ。もちろん上級剣術と身体強化魔法なんていう良い組み合わせのギフトをもらうやつなんてほとんどいない。そんなことはわかっている。でも、もし自分もそのギフトをもらっていたら。そう考えないわけにはいかない。
「どうすればいんだ」
布団の中でソウは、考え続けた。絶対に報われるものだと努力をしてきた。しかし、それはもう通用しないかもしれない。これからはもう今まで積み上げてきたアドバンテージなしで戦わなければならない。どう戦っていけばいのか。マインに勝てることはもうないのかもしれない。そんな現実が頭を駆け巡る。Legend級なんて果てしない。寿命が1000年くらいないと、俺には無理かもしれない。だって、ギフト「才能」がないんだから。少しネガティブになる。今までのソウにはなかった負の感情。
一日中考えても答えは出なかった。しかし、今まで通り最大限の努力を続ける。それ以外道はないのかもしれないとはソウは気付いていた。せめて才能がないのだから、努力の量だけでは誰にも負けないように。そう心に強く誓った。
マインは、初めて模擬戦に勝った翌日、少しソウが落ち込んでいるかなと心配そうにソウを見る。しかし、ソウの表情はむしろ普段より熱意のある表情。そして、なぜか何か物凄いオーラをソウに感じた気がした。しかし、そのことを特に口には出さず、マインはソウに魔物討伐のことを話す。
「ソウ〜、今日から僕も魔物討伐毎回参加してもいい?」
「ああ、もちろん歓迎だ。」
これまでもマインは時々参加していたが、ソウの足手まといになりたくないと、あまり多く参加しないようにしていた。しかし、ソウに勝ったことでマインが魔物討伐に毎回参加するようになった。これはソウにとってもマインと毎回魔物討伐に行けることは喜ばしかった。一人で行くより二人の方が断然楽しいのだ。
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