「よくばりな犬」リライト

野良 にゃん歩

第1話

 ある日、魚をくわえた猫が橋を渡ろうとしたところ、橋のたもとにいたカエルが言いました。

「もしもし猫さん、私はこの橋の番人です。ここを渡るには通行料が必要です。その口にくわえた魚を置いていきなさい」

 猫は困りましたが、ここを渡らなければ家に帰れません。

 仕方なく魚を置いて行きました。


 カエルは魚を”パクリ”と食べて、家に帰っていきました。


 その様子を陰から見ていた犬は、ニヤリと笑い思いました。

(これは良い商売だ。よし、あのカエルを食ってしまい、橋の番人はオイラが引き受けよう)


 あくる日、犬が橋を渡ろうとしたところ、橋のたもとにいたカエルが言いました。

「もしもし犬さん、私はこの橋の番人です。ここを渡るには…」

”ゴックン”

 犬はカエルを一気に飲み込んでしまいました。

「通行料はいただいたよ。ごちそうさま」

 

 その日からこの橋の番人は、犬になりました。


 しばらくしたある日のこと、カメの親子が橋を渡ろうとしたところ、橋のたもとにいた犬が言いました。

「おい、カメ、オイラはこの橋の番人だ、通行料を置いて行け」

 カメは、甲羅の中から小さな虫を出しました。

 それを見た犬は、不満そうに言いました。

「たったこれっぽっちでは、ここを通す訳にはいかないな」

 カメの親子は困ってしまいました。親子の持っている食料はそれだけだからです。


 すぐ後ろに並んでいたクマが、見かねて言いました。

「ならば、この肉をやるからカメさん親子も一緒に通してくれないか」

「ふん、そんな小さな肉ではダメだね…」

「...ならば、この大きな肉ならどうだい」

(これほどの肉は...)

 犬は、よだれを垂らしながら満足げにうなずいて、カメの親子とクマを通しました。

  それから、犬は肉を加えて家に帰ることにしました。

 ふと、橋の下を覗いてみると、別の犬が大きな肉をくわえていました。

(あっちの肉の方が大きいな!....しめしめ、あの肉もいただいてしまおう)

「おい、そこの犬」と言ったとたん、くわえていたお肉が...

”ポッチャン”

 川に落としてしまいました。

..........ところで、歩みの遅いカメの親子。

 その姿を見て、お母さんカメは言いました。

「あらあら、川に映っていたのは自分なのに、”よくばる”から損をしたのね」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「よくばりな犬」リライト 野良 にゃん歩 @noranyanpo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る