口の悪い子はキスに弱い

えまま

屋上にて

「あーくそあっちぃ……」


 彼女は制服のスカートをパタパタさせながら呟く。

 昼下がり、学校の屋上。

 屋上へいたる扉の前に、二人きり。

 五月とは思えないほど、太陽は辺りを熱する。


 そう暑くないと思うけど……。

 彼女は相当暑いようだ。

 あぐらをかき、隣でずっとスカートを盛大にパタパタしている。


 おかげで何回も下着が見えた。今日は黒か。


「なーなー、なんでこのクソ暑い日に屋上なんか来たんだ? 飯食うなら教室でもいいだろ?」


「……教室じゃ他の人が居て、落ち着けない」


 彼女の言葉に淡々と返す。

 口の悪い彼女。

 言いたいことはなんでも言うタイプ。

 不満があればなんだって言う。


「なー戻ろーぜー。こんなとこ居たっていい事ねーしよー」


「もうちょっと、我慢強くなったら?」


 わざと煽るように言う。


「あぁ!? ガマンできるならこんなこと言わねーよ!」


 彼女は沸点がとても低い。

 こんなことでもすぐ怒る。

 怒った彼女はめんどくさい。


 そんな彼女の怒りを鎮める方法がある。

 彼女へと距離を詰め――。


「だいたいよぉ、お前はいっつも……んぐ!?」


 一人愚痴っている彼女に、唇を重ねる。

 彼女は目を見開き、硬直。


 突然のことに驚いているのが見てわかる。

 舌を入れ、さらに抱きしめる。


「ん……ぐ……」


 彼女が手で押し上げようとする。

 けれどもまったく力が入っておらず、すぐに抵抗は終わった。


 十数秒後、脱力しきった彼女。

 互いの唇がついに離れる。


「おまえ、は、いっつも……」


 彼女が頬を赤らめ、視線を逸らしながら。

 満更でもない表情で言う。


「ずるいぞ……」


 彼女のこういう一面が、は好きだ。

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口の悪い子はキスに弱い えまま @bob2301012

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