邂逅

金曜日

邂逅

「あぁ、頭いてぇ。くせぇ。。」


頭痛で目覚めると便座に涎を垂らし、

便器の中には4.500円240分食べ飲み放題でお腹に詰め込んだ成果がたっぷりと詰まっていた。

これだから会社の飲み会とか嫌なんだよなぁ。

トイレで目覚めるとか最低かよ。

まぁ、見る限り自宅であることだけが救いか。


「よし。水。水」


気合いをいれトイレを出てキッチンへ。

適当にグラスを取ると、冷蔵庫からミネラルウォーターを取りグラスに注ぐ。

グラスに口をつけながら寝室へ向かう。


「ぶふっ。。げほっ、げほっ。。」

えぇ・・・・だれぇ・・・・・?


乱れたベットに誰かが寝ている。


それ僕のブランケット。などと訳の分からないことを考えながら水を含み落ち着きを取り戻すことに努める。

あの髪の長さ。崎島先輩かな。やたらボディタッチしてきてたしな。

でも、彼氏いるって言ってたしな。

警察呼ぼうかな。でも、あんまり騒ぎになってもな。

べとつく体が気持ち悪い。とりあえずシャワー浴びて、でてきたら消えててくれないかな。

干してあるバスタオルとパンツを取るとシャワールームへ向かう。

蛇口をひねりお湯が出るまの間に服を脱ぎ洗濯機へと放り込む。

シャワーヘッド取り損ねると左足の小指を直撃する。

寝ている女性に配慮し声を押し殺す。訳が分からい配慮。

声にならない声で「いてぇぇ」とだけ呻くと、体を流しシャワールームを出る。

バスタオルで体を拭きながら、柔軟剤のいい匂いで少しだけ気持ちを調える。

パンツを履き歯ブラシに歯磨き粉を付けると、ベットの様子を窺う。


まだいる。


スマホを片手に<朝起きる 知らない女性>で検索を掛けると、

<昨日の夜一緒に寝た女性とは違う女性が寝ていた>という怖い話が出てきた。

スマホを置き口をすすぐと、意を決して声を掛けに寝室へと向かう。

肩のあたりを揺すると彼女は部屋を見渡し一言。


「Is this Japan?」


一瞬自分でもここ日本だよなと部屋を見渡す。

いつも夜お世話になっているブルーレイのパッケージを見て冷静に日本だと確信をもった。


「えっと、じゃ、じゃぱん」

「日本ですか?」

「はい、日本です。」

「日本語上手ですね」


いえ、そちらこそお上手で。。。


「私なんでここにいるですか?」

「いや、起きたらベットに寝てて」

「昨日結構飲んでてタクシー乗った後から覚えてなくて。ここ武蔵野ですよね?」

「え?まぁ、武蔵野です。え?飲んでて記憶ない。実は俺も結構飲んでてまさか。。。」

「タクシーは一人で乗ったのでそれは。。マンション名ってディオグランデ武蔵野?」

「はい」

「えっと、、402号室?」

「えっと、、403号室?」

「あぁぁ。すみません隣入っちゃったんだ。えええ。スマホどこだろ。鳴らしてもらえます?」

「あの、番号わかんないっす」

「あ、そか。あああ、キャリーバックどこだろ」


気が動転して気にも留めなかったが、確か玄関に大き目なキャリーバックがあった気がする。


「たぶん、玄関に」


玄関に向かう女性。

良かったと言いながら部屋にキャリーバックを持ち込んできた。

なんで持ってきた?

おもむろにキャリーバックを寝かせると開きだす。

最初に目に飛び込んできたのは、水色の下着の上下セットだった。

彼女が恥ずかしそうに下着を隠すと、これ良かったらと袋を手渡してきた。


「海外のインスタント麺です。食べてないんで分かんないですけどおいしいですよ」


食べてないのにおいしいとは。

とりあえず、受け取ってしまったのでお礼をいった。

その後、迷惑お掛けしたので今度ご飯でも奢らせてくださいと言われLinesを交換した。

荷物をしまい手を振り部屋を出ていく彼女。


見慣れた後ろ姿を見送る。

レンタル彼女をこんな風に使う玄人は俺くらいだろう。

前日からの宿泊料とシチュエーションを仕込むための費用8万円。

なかなかの値段だが楽しかった。今度は冬のボーナスでしよう。


今回費用

会社の飲み会費用          4,500円

レンタル彼女1泊          60,000円

キャリーバック           5,000円

私物を入れてくれと頼み込んだ費用 10,000円

海外のインスタントラーメン       500円


ピロンッ

初めての出会いって突然で素敵なものですよね。 武井


「きもっ」


ぴend

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邂逅 金曜日 @kinyoubi

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