第40話 マイア―ル男爵家訪問
マイア―ル男爵の家には、週末に行くことになった。
そして今、私は、男爵家を目の前にしている。さすがに貴族のご令嬢には見えないかもしれないけれど、マリエッタさんが気合をいれて着飾ってくれた。
「……でかい」
同じ王都にあっても貴族街と、私たちが住んでいる平民街では街並みが違う。大きな商会の商会長のサカエラのおじさんのお屋敷も、かなり大きい部類には入るけれど、やっぱりお貴族様となると、また違う。
貴族街の下級の貴族が集まる地域の中でも、マイア―ル男爵家の屋敷は特に大きい感じがするのは気のせいだろうか。
「さっさと挨拶して、さっさと帰ろうよ」
「ああ、そうだな」
おじさんと私だけでよかったのに、心配だから、と、強引についてきたショーンさん。確かに、ショーンさんの言う通り、私もさっさと帰りたい。
この大きな屋敷の前にいるだけだというのに、なんだかすくんでしまう。まるで、この家が私をとりこもうとしているかのように見える。
サカエラのおじさんが門衛の人に、来訪を伝えるとすぐに中へと伝わったのか、随分と年老いた感じの執事が現れた。
「サカエラ様……と、レイお嬢様……ですね」
私と目を合わせた時、一瞬驚いたようだったけれど、すぐに視線が外される。
「……どうぞ、お入りください」
大きなドアが開き、エントランスホールへと足を踏み入れる。昼間だというのに、どこか薄暗い屋敷の中、使用人たちの視線が私たちへと向けられる。しかし、誰一人として頭を下げるでもなく、ササッと消えていく。
「……」
思わず顔を顰めるのは仕方がないと思う。男爵家であれば雇い入れられているのだって、私たちと同じ平民であるはず。それなのに。
――その態度はどうなの?
この様子からも、雇い主の考え方が薄っすらと透けて見えてくる。こんなのが身内の可能性があると思うと、ゾッとする。
私たちはサロンらしき大きな部屋へと案内された。
「しばらくこちらでお待ちください」
そう言われて、私たち3人は年季の入ったソファに座る。ついキョロキョロと見回しているうちに、若いメイドがお茶を出して下がっていく。
「……屋敷のメイドさんたちのほうが、上手だよね」
「……ああ」
思わず、ショーンさんにこそっと言ったら、彼も渋い顔で返事をした。
はっきり言って、薄いし温い。ここの躾はどうなっているんだろう、なんて思っているうちに、サロンのドアが開いた。
「待たせたな」
マイア―ル男爵の声とともに入ってきたのは、マイア―ル男爵本人とその妻らしき中年女性。そして、だいぶお年を召された老女が、先ほどの執事に手を引かれながら現れた。
私たちはその場で立ち上がり、男爵たちが座るまで待った。
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