<ショーン>

 部屋を出ると、トンッとドアに背中を預ける。


 自分でも信じられない。

 あんなに頭にきてたはずなのに、あの子の……レイの金色の瞳をみたら、そんな感情はふっとんでしまった。

 印象的な瞳もそうだけれど、メガネや地味な髪型に騙された。

 目の前にしてみたら、頬をピンクに染めたレイの綺麗な顔立ちが、俺のハートを簡単に撃ち抜いていた。


 大学校で一年付き合ってた彼女が、気が付いたら俺のルームメイトと浮気していた。それを責めたら、そのまま離れていった。

 凹んで母親のところに戻ったら、父親の言った通り、新しい恋人ができたからと、追い出された。

 いい年して、ふざけんなよって、思った。

 そんな最悪の気分で父親の屋敷に帰ってみたら、当然自分の部屋だと思ってたところが、レイに侵食されていた。


 俺だって、自分でもガキだと思う。

 だけど、長い時間をかけて帰ってきて、疲れ果てていたせいもあって、感情のコントロールなんてできなかった。


 でも。


 レイの顔を見たら……もう、そんなのどうでもいいかもって思えてしまった。

 レイに撫でられた頭に手を触れる。あんな風に他人に優しく撫でられたのは、いつ以来だろう。

 自然と口元に笑みが浮かぶ。


 「ふぅーっ」


 俺は大きく深呼吸すると、気持ちを切り替えて、廊下を進む。

 空いている部屋がどこにあるのか、メイドの誰かに聞かなきゃなぁ、と思いながら。

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