第3話
俺と父さんはすぐ王城へ行く準備を整えて、足早に王城へと向かった。
王城に着くと、前回と同様に門番の方に検問され、王城で給仕をしている女性の案内に従って、とある場所へと向かう。
俺はてっきり王城の中にある謁見の間へと向かうと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
父さんもその事については不思議に思っているらしくて、
「すみませんが、どちらに向かっているのでしょうか? 今日は陛下に直ちに参上するようにとのことで王城へと来たのですが、どう考えても謁見の間に向かっておりませんよね?」
父さんは案内してくれる侍女に優しく問いかける。
「はい。謁見の間には向かっておりませんので。本日は国王陛下の執務室にそのまま連れてくるようにとの指示を賜っているので、安心して私についてきてください」
その言葉から察するに、謁見の間で陛下に会う、という公式的な形で面会するのではなく、執務室にてあくまで私的な形で面会するという事になるのだろう。
まぁ、王女様の結婚に関わることではあるし、それに王女様がまだ幼いということで、公にしたくないという意図もあるのだろう。
俺と父さんはその旨を理解し、黙ってその侍女についていく。
王城の中は外観からみて分かる通り、とても大きいので、執務室まではかなり遠い。
父さん曰く、謁見の間は二階にあるのだが、国王陛下の執務室は4階にあるということだ。
それも1階、それぞれの高さが尋常ではないので、かなり高い位置にあるという。
そんなこんなで俺と父さんは侍女に付き従っていくと、大きな扉が目の前に迫っていた。
「この先に国王陛下、王妃様、そして王女殿下がお待ちしております。くれぐれも粗相のないようお願いします」
「うむ。ここまでの案内ご苦労であった。それでは失礼する」
父さんが入ろうとすると、父さんが扉を触れてはいないのに、扉が勝手に開き出した。
なぜ開いたのかというと、向こうで控えている侍女たちが開けてくれたからであり、自動ドアのようなシステムではないみたいだった。
父さんと一緒に入っていくと、そこにはお披露目会の時にいた、金の王冠を被った爺さん、国王陛下と俺があげたネックレスをつけた銀髪の女の子、この国の第二王女のルイーゼ。
そしてもう1人、ルイーゼをまんま大人にしたようなとてつもない美人、王妃様がいた。
この国の中では、神を除けば最高権力者たちの前なので、俺も父さんに習って、頭を下げる。
俺の父さんは膝を立てて、首を垂れながら、
「グロービル伯爵家当主バラン・グロビールただいま参上いたしました。早速ですが、今回の件は誠に申し訳ございませんでした。如何様な罰でも受ける所存でございます」
父さんが俺に代わって早速、謝罪を口にした。
父さんが謝罪するのは当たり前のことである。
なんたってこの国の王女様に、自らの息子が勝手にプロポーズをしたのだから。
それもこの国の慣習も知らず、その気無しにに出会ってすぐに。
父さんとは馬車に乗ってここにくる前までに色々と話をして、対処法をいくつか決めておいた。
まずはこの事に関して、誠心誠意謝罪をすること。
これは何に対しても大切なことである。
どんな些細なミスも誠心誠意しっかりと謝罪する。
そして、その失態によって課せられた罰を甘んじて受けること。
まぁ、死刑とかだったら、流石にゆうちょな事は言ってはいられないのだが……
父さんの予想では、まだこの事実は公にされてはいないし、死罪など極刑のような罰などは絶対に下されないということ。
あってもおそらく領内の増税くらいで済むということだ。
だが謝罪をする時は多少は大袈裟に謝罪をした方が、相手に罰することによる罪悪感が生まれて、処罰を抑えることができる。
ちなみに、これは俺の経験則だ。
とりあえず謝って、相手の同情心を煽る、これが俺の常套手段。
俺も潔い父さんに見習う形で、
「国王陛下、この度は自分の無知のあまり、この国の慣習も知らずに王女様にプロポーズをしてしまったこと、大変申し訳ございませんでした。自分の罪を認め、どんな罰でも受ける所存でございます」
俺は精一杯に誠意をこめて、謝罪を口にした。
すると、俺の発言を聞いた国王陛下は言質は取ったぞといった、といった感じにニヤリとした笑みをみせた。
「そうか、そうか。どんな処罰でも受けるのだな?」
「「はい、そのつもりでございます」」
その言葉を聞いた国王陛下および、王妃様、そして王女殿下が目を見合わせて頷き合う。
「お主らへの罰は—————と、する」
えっ!? なんて!? 今、この爺さんはなんて言ったんだ? 俺の耳が遠くなってしまったのかな?
「あのー、国王陛下。失礼ながら、もう一度聞いてもよろしいでしょうか。なぜか、今日は耳が遠いようで……」
「あぁ、よいぞ。もう一度言ってやろうではないか。よーく、聞いておけよ。お主らへの罰は責任を持って、儂の娘、ルイーゼと結婚すること、とする」
「……………」
「……………」
と、2度言われてもよく理解できない俺と父さんは、
「なぁ、カインよ。今、俺には幻聴が聞こえたような気がしたのだが、お前はどうだろうか?」
「えぇ、えぇ、父上。僕にも同じく幻聴が聞こえたようです。おそらくこれは幻惑の魔法だと思われますね……どうしましょうか……」
俺と父さん、2人は突然のことに理解が追いつかず、お互いにコソコソと話していると、どうやら内容が国王様にも届いていたようで、
「おいお主ら。これは幻聴なんかではないし、幻惑の魔法など一切使っておらぬ。そして、言っておくが、お主らに拒否権はないぞ!」
国王の一言によって、無理矢理な形で王女様と結婚することが決まったのだが……
正直、無理矢理でも王女様を俺のお嫁さんにできるのは嬉しいのだが、それでも俺には納得いかないことが一つだけあって、
「国王陛下、勝手ながら一つ奏上したいことがございます。僕にとっては王女様を妻として迎えられる事にはなんの問題もありません。いや、むしろご褒美と言ってもいいでしょう。ですが、果たして、王女様の気持ちはどうなるのでしょうか?」
これは相手が国王であったとしても、言っておかねばならないことだ。
何より大切にすべきなのは、王女様の気持ちなのだから。
王女様は王女様である前に、1人の女の子なのだから。
「それはだな———」
「あなた、それはあなたから言ってはダメよ!」
何か話そうとした国王に対して、先程まで、黙って静観していた王妃様が突然言葉を発した。
「ルイーゼ、あなたはちゃんと言うべきことがあるでしょう? あなたの口から言わないと伝わらないわよ」
王妃様の言葉にはちょっとだけ怒気が含んでいて、
「お、お母様…………そんな……」
ルイーゼはというと、王妃様のことを瞳をウルウルさせて見上げている。
「ダメよ、ルイーゼ! あなたの口からちゃんと言いなさい。でないと、あなたはいずれ後悔する事になるわよ?」
「は、はい、わかりました。お母様」
ルイーゼは母に叱られて、覚悟を決めたように見えるが、どこか緊張しているようだったが、次には思わぬことを口にしていた。
「あ、あの……カインくん。わ、わたしはカインくんのことがす、す、すきなようです。よかったらわたしをカインくんのお嫁さんにしてもらえませんか?」
ルイーゼは言い終えた後、俺の返事を待っているようで、どんな答えが返ってくるのか不安で泣きそうな顔をしていた。
けれど、俺にはそんな歳相応の不安げな顔がどこか可愛げに見えた。
将来この子は絶対に、今ここにいる王妃様のような美人に成長するし、性格も悪くない。
多少の人見知りはあるだろうけど、俺的にはなんの問題もない。
こんな子と将来結婚できるというなら、こっちとしても大歓迎で、ウェルカムカモンである。
「はい、僕で良いのであれば、よろしくお願いしますね。—————ルイーゼ」
「は、はい! ありがとうございます!」
結局、ルイーゼの告白を俺が承諾した形で、ルイーゼ、この国の第2王女と俺は、6歳にして婚約することが決まった。
途中、王妃様がルイーゼを諫めたのは、このままだと王家という権力を振りかざして、俺と無理矢理、結婚するような形になってしまうため、その事態をなんとか避けたかったらしい。
そして、それは第一に王家の威厳を保つためではなく、ルイーゼが大人になって後悔しないようにするためであった。
無事にルイーゼとの婚約が決まり、特に今回のプロポーズに関する件の処罰はなし、ということで、軽く王族の方達と世間話をしたのちに、俺と父さんは用件は無事に終わったと思って、執務室から去ろうとした————のだが……
「まぁ、まぁ。2人とも待ちたまえよ。今日お主らを呼んだのにはもう一つ要件があってな……」
俺と父さんが国王様の執務室を立ち去る寸前。
国王様から待った、の声がかかった。
呼び止められた俺と父さんは逃げ足、忍足をやめて、
「へ、へ、陛下。もう一つの用件というのはいったい何のことでしょうか? カインが何かやらかしたのでしょうか?」
父さんは恐る恐る陛下に問いかける。
「そんなに警戒しなくてもいい。今回の件は失態とかではないからな」
陛下曰く、これからの要件に関しては処罰とかそういうことではなさそうだ。
ではいったい何なのだろうか……
「陛下、それでは用件について伺ってもよろしいでしょうか」
「うむ。では、話すとしよう。カインよ、あのネックレスはお前が作った、と聞いたのだがそれは本当なのか?」
陛下が指すのは今は翡翠色に輝いているルイーゼがつけているネックレスのことだろう。
もう一度見ても、初めてにしては結構良く出来たと思われるので俺はかなり満足していた。
まぁ、なんたって、この世界の幻の宝石を使っているのだから、結構というか、かなり貴重なものなのだろう。
まぁ、まだまだ改善の余地はあるのだけれど……
こういう質問が為されることは、馬車の中で話していたのでそれほど驚くことではなかった。
可能であればネックレスの件については尋ねられることなく、上手く立ち去りたかったのだが……
国王様に聞かれたとなれば、その臣下である俺と父さんは返答せざるを得ないので、
「はい……あのネックレスは僕のこの魔眼の
俺の解答に陛下は驚いているようで、
「そ、そうなのか……では、ルイーゼの言っていたことは嘘ではなかったのだな。
それはいいとしても……あれほどの物が創れるとなったら国王として、お前のことを放っておくわけにはいかん。あのネックレスはなんたって等級が
陛下の
「お、おいっ! カインっ! 俺はそんなことは聞いておらんぞ? 俺が聞いたのは幻の宝石を使ったことと、付与をしたということだけだぞ!? ふ、
確かにあのネックレスの等級は、確かに
なんで、チユキはその事を教えてくれなかったんだろ……
もしかして、チユキは俺のことを謀ったのか?
(ねぇ、チユキ〜……なぁ〜んで、この事を教えてくれなかったのかな〜? ってか、等級って他にどんな物があるの? 慣習に関しても、等級に関しても教えてくれなかった罰はちゃんと後で決めるとして、今は等級について教えてくれるかな〜?)
『ヒィッ! ま、マスター! お、落ち着いてください。わ、わたしはマスターがいつでも有利になるように考えております。だから、今回はわざと教えなかったのです。私のお陰で無事に王女様と婚約できたでしょう? だ、だから、許してください……なにとぞ、慈悲を〜〜』
(まぁ、罰の件は後にして、今は俺の質問に答えてくれないかな?)
『は、はい、わかりました……この世界の武器、および装飾品などには等級という物が存在します。まず、下から下級、中級、上級とあって、その次に超級、超絶級とあって、次に国宝級、伝説級、神話級、そしてあるかどうかもわからないとされている夢幻級、そして、その上をいく創世級という順になります』
(ふーん。そうなんだね。こんな大事な情報をチユキは黙っていたんだね? そうかい、そうかい……やはり罰は必要みたいだね!)
『ま、マスター! どうか、慈悲を———』
流石に今回ばかりはチユキにちょびっとだけイラッと来てしまったため、チユキに罰を与えることを決めて、チユキとの念話を切った。
「申し訳ありません、父上……結婚の慣習の時と同様、何も知らずにこのような物を作ってしまいました……」
俺は家族の皆にわざわざ自分の事を隠してもらっているのに、自分の失態で正体を暴かれかねない事態になった事を深く反省する。
「はぁ……まぁ、こんなことになるのも早いか遅いかの違いだっただろうがな……」
父さんはもはや若干諦めている様子だった。
ところが、父さんは突如、キリッとした雰囲気に変わり、
「陛下! この夢幻級のネックレスを、私の息子が作成したと聞いて、息子をどうするつもりなのでしょうか? ことによっては————」
父さんが俺を守るために、陛下に対して圧力をかけ、その意思を示す。
だが、そんな父さんの威圧を国王様がさらりと躱して、
「なーに、心配するでない……儂は義理ではあるが、息子になるものを利用しようなんては思ってはいない。今回は真偽を確かめたかっただけなのだ……まぁ、一つ忠告しておくと、お主の持っている
陛下からは意外にも、俺の家族たちと同じような返事が返ってきた。
この陛下の答えには父さんも十分満足したようで、
「陛下、先程は大変申し訳ありませんでした……ですが、息子は何があろうとも守って見せると誓ったものですから、いてもたってもいられませんでした。それと今回は本当にありがとうございます」
「あぁ、今回のことはもちろん不問にする。それと、今日はここに泊まっていくとよい。せっかく、我が娘、ルイーゼの婚約が決まったんだ。今宵は家族で宴にしようではないか」
「はっ! かしこまりました」
結局のところは自分の正体はばれることなく、恩恵についてもさほど追求されることなく、無事に面会が終わった。
おそらくだが、俺のことを考えて敢えて追究しないでくれたのだろう。
俺は少しばかりか、陛下にも王妃様にも感謝の念を抱くのであった。
そして、その夜は王族の人達と楽しい夜を過ごした。
⭐︎⭐︎
ルイーゼとの婚約が決まり、王城に泊まった翌日。
王城にある大きな庭の木陰にて、俺とルイーゼは隣に座りながら、一緒に魔法の練習をしていた。
何故、ルイーゼに魔法を教えているのかというと、それは昨日の夜に俺が魔法を使えることをルイーゼに言ってしまったからだ。
別に魔法を使えるのは当たり前なのだが、俺みたいに全属性を使える人は滅多にいないらしく、王族の方達もかなり驚いていた。
その中でルイーゼはというと、目をキラキラ輝かせて、
「カインくん! 明日、私に魔法を教えてくれませんか!?」
と、言ってきたのである。
特に断る理由もなかったので、俺はそのルイーゼの申し出を受けることにした。
そんな経緯があって、俺とルイーゼは木陰にて魔法の練習をしていた。
『ねぇ……マスター……わたし、面白いことを思いつきました。是非、マスター聞いてくれませんか?』
(……………)
『ま、マスター無視しないでくださいよぉ〜! あれは本当にマスターの事を思ってなんですよぉ〜! あそこである程度だけでも、マスターの能力の片鱗を見せておけば、今後はもっと自由に行動できると思ったんですよ……』
なるほどね……確かにチユキの言うことも一理ある。
だが、それは結果論に過ぎないような気もする。
何が俺のためにするとしても、連絡だったり、相談くらいはして欲しいものだ。
まぁ、かなり反省しているみたいだし、せっかくだから聞くだけ聞いてやるか。
(あぁ、いいぞ。聞くだけ聞いてやるよ)
『マスターひどいですぅ〜……でも、話します。私が今回提案するのは、それは『ルイーゼチート開拓その1』です。まず、ルイーゼを強くすることによって、ルイーゼの安全をある程度確保することができます。それに加えて、マスターが今後、旅に出かける際も、なんの問題もなく外に出られるようになります。そして、この提案はなんといっても楽しい、面白い! ということです。どうですか? マスター、私の案は———』
(ちっ! 今回ばかりは面白い提案をしてきたのに免じて許してやろう。でも、チート開拓って一体なにをやるんだ?)
『って、マスター! 舌打ちは酷いじゃありませんか? まぁ、そうですね。ルイーゼの恩恵は【魔法剣士】で、適正属性が水・風・土の三属性です。これだけでも、この世界ではかなり上位の才能と言えます。ここで、恩恵を変えることもマスターなら出来るのですが、魔法剣士自体を変えるのは後々めんどくさい事になるので、適正属性を全属性にして、努力をすれば、するほど強くなるようにするのはどうでしょう。あくまでルイーゼの頑張りに委ねる形で』
(そうだね! 恩恵を変えたらヤバそうだもんね……よし、それで行こうか)
ルイーゼの適正属性を全解放して、追加として、剣術の方も剣聖まで行けるように解放。そして、努力すればするほど強くなれるという成長系も追加してっと。
後は変更した事をバレないように修正っと。
————————————————————
名前:ルイーゼ・マリファーナ
年齢6歳
種族:人族
lv1/80(∞)
【HP】500/500
【MP】600/600
【筋力】150
【物攻】100
【物防】100
【魔攻】250
【魔防】250
【敏捷】200
【知力】600
————————————————————
恩恵:【魔法剣士】(【取得経験値10倍】【取得熟練度10倍】【必要経験値1/10倍】)
加護:魔法神の加護lv.5 武神の加護lv.4
生命神の加護lv.3
(剣神の加護EX)
————————————————————
【スキル】
礼儀作法lv.3
魔力感知lv.2
————————————————————
称号
マリファーナ王国第二王女
カインの婚約者
————————————————————
こんな感じにできた。
じゃあチート開拓もできたし、本格的に魔法の練習をして行こう。
先程までの時間でルイーゼは魔力感知は覚えれたので、次は魔力操作を教えることにする。
「ルイーゼ! 君は要領がいいみたいだから、次の練習に移ろうか。ルイーゼは魔力を感じることができるようになったでしょ? それが出来るようになったら、次は魔力を自由に動かせるようにするんだよ」
俺が次のステップについて説明をすると、
「カインくん……魔力って自由に動かせるものなの?」
ルイーゼは可愛らしく首をコテンと倒してハテナ顔をしている。
「うん、動かせるよ。じゃあ、僕が魔力を動かすからルイーゼはそれを感じてみて! じゃあ、いくよ」
俺は体中の魔力、および大気中の魔素を自由自在に動かしてみる。
そして、魔力で魚の大群が泳いでるかの如く、演出して見せた。
けれど、ルイーゼの感知のレベルはまだまだ未熟なようで、俺の壮大で豪華な演出はしっかりと確認は出来ていなかった。
ルイーゼは漠然と何かが動いたということが分かったとのことだった。
「すごいね、カインくんっ! 私にも出来るようになるかな?」
「うん、ルイーゼなら頑張れば必ず出来るようになるよ」
なんたって、俺がルイーゼのことをチート開拓したのだから。
「じゃあ、早速やってみようか。最初は体の魔力を血液と一緒に動かすイメージだよ?」
俺が言ってみるものの、イメージや感覚がわからないのか。
「カインくん……どうやってやるの? 全然わからない……」
ルイーゼは俺がやって見せたように、何度もやろうとするが失敗してしまう。
ルイーゼはやっても出来ない情けない自分に嫌気がさしているようだった。
どうしようかと考えた俺は感覚を掴んでもらうべく、ある手段を取ることにした。
それは体験してもらうということだ。
「じゃあ、僕がルイーゼの魔力を動かすからそれを感じとって参考にして」
「うん、わかった。って、カインくん。どこ触って————」
「じゃあ、行くよ————」
俺は下腹部あたりを触って、ルイーゼの魔力を掻き混ぜる。
そうすると————
「いやぁん♪ やだぁっ♪ なにかが、なにかかまくるぅぅぅ♪」
ルイーゼはなんだか体を真っ赤にして悶えていた。
体の魔力を人に掻き混ぜられるなんて感覚は初めてみたいで、終わった後は息絶え絶えになって、顔をトロンとさせていた。
「あぁ、ちょっとやりすぎちゃったみたい」
ルイーゼがノックダウンしてしまったために、魔法の練習は続行不可能となった。
けれど、俺がかき混ぜた甲斐があったみたいで、ルイーゼの魔力感知はlv.6に上がり、魔力操作のスキルは追加され、さらにlv.5まで上がっていた。
俺は汗ぐっしょりになって、憔悴したルイーゼをお姫様抱っこしてルイーゼを運んだ。
意識は辛うじてあるみたいで、顔を俺の胸にグリグリとしてくるあたりがとても可愛らしかった。
直々に教えるのは今回だけだけど、全属性の適性を解放しておいたので、いつか誰かに教わることになれば、勇者の如くすくすくと育って言ってくれるだろう。
我ながら大満足といった感じで、王城を後にし王都内の屋敷に帰っていった。
「次に会う時が、楽しみだなぁ〜〜」
俺は最強の一角に辿り着くだろうルイーゼのことを思い浮かべながら—————
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