02 お邪魔
次の日の学校。
「おい聞いたか!サッカー部の新しいマネージャー、超可愛いらしいぞ!外部入学は男のロマンだよなぁ〜。」
葵が学校に着いた途端、ある1人の男子生徒が話しかけてきた。彼の名は、我妻(わがつま) 宗佑(そうすけ)。彼もまた、葵の小学校からの幼馴染みである。
「そんな可愛いの?……ふむ。これは男として、一度見ておかないと。」
「でも、お前には渚ちゃんがいるもんな。あんな可愛い子、見捨てちまうのはもったいないぜ。」
「だからあいつは昔からなぜか着いてきてるだけで──」
すると、2人の会話を聞きつけたのか、教室の隅にいた女子生徒が近寄ってくる。手に持っているカバンを、葵の頭にぶつけ、一言。
「悪かったわね。お邪魔で。」
艶やかな黒い髪を、運動しやすいようなショートカットにしている小柄な彼女は、一ノ瀬(いちのせ) 渚(なぎさ)。沙月の妹である渚も、葵たちと同じクラスなのだ。
「誰も言ってないだろ。……別に呼んでもないけど。」
「はいはい。もう近寄りませんよ〜。」
幼馴染みとは思えないほど冷たい態度をとる2人の顔を、宗佑は気まずそうに何度も見返した。
「……お前ら、こんなに仲悪かったっけ……?」
「あいつ、俺が野球辞めてから日に日に荒くなってんだよ。……野球部ではどうなの?」
渚は野球がとても好きな少女だ。沙月と渚、二人揃って女子プロ野球選手になる。これが2人の夢だった。中学生の頃からは、男子と混ざりながら野球部で活動をしている。
「中等部から変わんないよ。相変わらず誰よりも練習しちゃってさ。試合出られないのに、本当よくやるよ。」
「へ〜。宗佑も負けてられないな。頑張れよ。」
葵は宗佑の肩を軽く叩き、教室を出る。それと入れ違いになるように、今度は体格の良い男子生徒が入ってきた。教室を見回し、宗佑の姿を目にした途端、話しかける。
「我妻。ちょっといいか。」
「なんだよ谷津(やつ)。また連れションか?」
「いいや、真剣な話だ。」
いつもとは違う顔つきに、少しの恐怖を感じた宗佑。
「な、なんだよ。」
彼が恐る恐る用件を聞くと、少しの間をおき、口を開いた。
「……あいつを、葵を野球部に連れ戻そう。」
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