第4話 お嬢様との登校

 ピンポンと呼び鈴が鳴った。今日は月曜日の朝だ。特に人が来る予定などなかったはず、誰ともなく母が出る。

「理比斗~花嶺さんよ~」

 母が言ってきた。

「ブー」

 と飲んでいた味噌汁を霧状にしながら吹き出しそうになってから一気に飲み込んでしまう。咳き込み、胸を叩きながら急いで水を飲み、一息ついてから玄関へ向かう。

「おはよう」

 花嶺高子は言った。

「おはようじゃない。ずいぶん早いな。それに後ろにあの時の3人もいるし、今日は何だ。朝から」

「何だじゃないわよ。迎えよ。迎え。今日からあなたも一緒に登校するから。私の方から迎えに来てあげたの」

「あげたって偉そうに、そんな事頼んだ覚えはないぞ」

「あら? そんな態度をしてもいいのかしら?」

「ぐぬぬ」

 お嬢様の後ろに目を向けると大理と目が合った。ここで騒がれては困る。

「一緒に行くのは分かった。が、早すぎる待っててくれまだ飯も食べてない。それに見て分かる通り、準備も終わってない。だからちょっと待て」

「仕方ないわ。私を待たせる事を許可するわ。これからはこのような事がないように」

「へいへい。事前に連絡ぐらいしてほしいものですね」

「おい!」

 大理が前へ出て来たのを右手を横に出してお嬢様が止めた。

 くそう。こんな事なら花嶺さんやお嬢様とは今後絶対に呼んでやらん。高子だ。高子。呼び捨てだくそう。

「さあ、さっさと準備してきなさい」

「へいへい」

 表面では必死に取り繕ったが、心臓はバクバクだ。何されるか分かったもんじゃない。

 リビングへ戻ると母がニヤニヤしながら、

「何かあったの? あの花嶺さんと」

 と言ってきたが、

「話は後で、帰ってきてから」

 とだけ言って残りのご飯をかきこみ、簡単に着替えを済ませて荷物を持ち、

「行ってきます」

 と言って家を出た。

 今までにない速さだったと思う。

「遅かったわね。いえ、思っていたよりは早かったわ」

「ああ一応は高子の部下だからな」

 高子という言葉に大理がピクッとした気がしたが今はスルーだ。

 迎えを本人がしてまでこんな時間から一体何をするというのか。

 しかし、どうという事はなかった。

 ただ登校しただけだった。

 それから毎日、朝早くからの集団登校が始まった。

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