第7話 脱部下作戦最終戦
黒子に関しては調査しても何も思い浮かばずにいた。本人に聞くも、
「ワタシは別に」
だし、
「採寸はどうやってしたの?」
「巻き尺を持ってますので」
携帯してたし、
「別にこれは作ってもらわなくて結構です」
釘を差されたし。
「用がないならそれでは」
そして、とっとと去ろうとする。仕事ができるやつは違うな。だが、ここで何も得られずには帰れない。
「待った。速さだけで十分かな」
「どういう事です?」
「高子を守るのに力は必要ないか? と聞いているんだ」
「別に、それは大理さんの仕事ですから」
「そうか。分かった。ありがとう」
「失礼します」
ああ、どうしたら。そもそもの時点でつまづいている。
仕方なく考えるのを辞め、とりあえず作ってみた。今は黒子を何とか研究部屋に呼び出したところだ。
「ウサギの耳ですか?」
ネタ切れだ。うさぎも飼いたいが飼えないんだ。理由は詳しくは知らないが父のトラウマらしい。
「ああ、速さを活かすにはどこでも指示が聞こえた方がいいだろ? 春美の猫系アイテムを改良、改善していて思いついたんだ。スマホでもいいが高子の手をわずらわせる事になる。この屋敷中ならどこにいても声が聞ける品だ」
「どこでも?」
「ああ、どこでも」
「じゃあ受け取れません」
「何でだ?」
「流石にプライベートな部分までは侵入しません」
侵入という言葉を使うからにはプライベートへの深入りに罪の意識があるのだろうか? しかし、
「問題ないだろう?」
「い、いえ、う、うーん。まあ断言はできませし、確かにお嬢様はそれをお許しになるでしょう」
「じゃあ、何で?」
「分かりませんか? ワタシは男ですから」
「そうか。それなら仕方な。え?」
「え?」
妙な沈黙。
え?
もう一度、今度は頭の中で疑問を唱える。聞いてないぞ。
「知らなかった」
口から出たのは心からの感想だった。
「本当ですか!?」
目を大きく開き口も同じように開いた黒子、驚きを表しているのだろうか? 黒子の頬は段々と紅潮している。
「ああ」
「いや、てっきり知ってるのかと。なら、いや、でもその、そのうちバレた事でしょうしね」
早口で何かを言っている。
「隠してたのか?」
「え? いいえ! 最初から知っているか、お嬢様からお話があったのかと思っていただけです」
「え、てことは皆知ってたの?」
「はい」
「そうか。知らなかったのは僕だけか。まあ好きな格好するのはいい事だと思うよ。僕はラクな格好が好きで着てるし」
僕は夏は半袖半ズボンが基本スタイルだ。
「はい。好きです」
「え?」
「この格好。それにカチューシャの見た目も」
「あ、ああ、それなら良かったよ」
ウサギの耳のカチューシャを見て、目を輝かせていた。という事は可愛いものが好きなのかもしれない。
「似合ってると思うし、可愛いと思うよ。まあ言いたい事はそれだけだ。飽きるまで続けろよな、僕も発明でそうするから」
「でも」
「機能ならオフにしとくから大丈夫。安心して使ってくれ」
「ありがとうございます」
「いいのさ」
笑っている。とても嬉しそうな顔だ。まあ、いいか。別に不快にさせたいんじゃない。僕がやりたいのは役に立つ物を全力で作ったが力が及ばなかったシチュエーションだ。
あとは言い訳するなら黒子は喋っても、端から見ても女の子だし、学校ではセーラー服で普段はメイド服だし、気づけってのが無理だろ。
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