弱々天使ちゃん
諏訪野ヒロ
第1話 天使ちゃん降臨
俺の家になぜか天使がいる。
先週の金曜日、やっと1週間が終わったと思いながら帰宅。その日は疲れて夕食を食べることもせずそのまま寝た。
寝たはずなんだ。その時、誰かが家にいたわけもなく、扉もちゃんと鍵は締めていたはず。
この状況で、次の日、朝、目が覚めると俺の隣で天使が寝ていた。
「まずはじめに聞こう、君は何者なんだ。後その羽は本物なのか?」
「なんで寝ていたかが最初の質問じゃないのですね。ま、大した理由じゃないのですが。私は、ソフィアス。天使だ。あ、羽も本物だ。ほれほれ」
といいながら、彼女は羽を動かし始めた。
「空とか飛んじゃう感じです?」
「ん?空くらい飛べるだろ、何を当たり前のことを言っている。って、あぁ、人間は飛べなかったのだったな。すまない」
「は、はぁ。あー、あとどうやって俺の部屋に入ったんだ?鍵は閉めてたはずだし、窓もしまってたはず」
「直接来たぞ」
「ん?直接?」
「こーんなかんじで」
「ん!?」
天使とやらがなにもない空間をちょんと触った。すると、俺もよく利用しているコンビニの目の前の光景が出てきた。これは出てきたと言うより、つなげちゃったという感じなのだろうか。
「ほれ、行ってみて」
「繋がっちゃってるの?」
「繋がっちゃってるのだ」
「映像とかではなく?」
「だから行ってみろというのだ。人間の技術じゃまだ映像の中にも入れないのだから、ちゃんと繋がってることがわかるだろ」
いや、映像の中にはいれちゃうのかよ。
「は、はぁ、行ってみます」
靴を取ってきてその空間に足を踏み込むと、たしかにいつもいっているコンビニの駐車場に立っていた。試しになにか買ってみよう。映像なら買うことはできないだろうし。
『いらっしゃいませー』
もうなんでもいいや。おにぎりにでもしよう。
「これ、お願いします」
『はい、おにぎりとシュークリームで合計450円です』
ん?シュークリーム????
「ちょ、お前!」
この天使。さらっと自分が欲しい物も入れてきやがって。
「しー。私の姿は君以外には見えないようにしているからヤバイやつ認定されるぞ」
『どうかしましたか?』
「あ、いえ何も。あ、代金」
『はい、ちょうどいただきました。ありがとうございましたー』
「あのなぁ、勝手にレジに持っていったこともそうだが、どうしてこんな高いシュークリーム買っちゃうのかなぁ!?あのコンビニには150円くらいのシュークリームだって置いてるのに」
「シュークリームおいちい」
「真面目に聞けよ、クソ天使!」
「おっと、クソ天使呼ばわりはやめていただきたいな。ソフィアスと呼びたまえ。人間」
「はいはいわかりましたよ。ったく天使ってのは本当なのかよ・・・」
「君たちの幻想の中の天使像を本物の天使に強要するのはやめていただきたいな。天使というのは君たちで言うところの"人間"みたいなものだ。天使ってのは総称だけで個々の名称ではない」
「あっそ」
「てか、なんで来たんだよ」
「あぁ、それを言うのを忘れていたな。私は君の願いを叶えるためにやってきたのだよ」
今更天使っぽいこと言い始めたな。
「それはつまり、なんでも叶えてくれる的なやつ?」
「まぁそうだが、厳密には違う。願われた願いを叶えるために来たのだ。願いを聞きに来たわけではない」
「は???」
「君は先日、『気兼ねなく話せる友達欲しいなぁ』と願っていたではないか」
「あー、あれ。あれはただの独り言のようなものなのに。てかそんなことのためにわざわざ来たのかよ」
「いや、こちらにもメリットがあるのだ」
「なんだ?人体実験とかか?」
「なんでそんなことをしなければならないのだ。違う。君の友達を作る、私が友達がになれば、私に友達ができたってことだろ」
「つまりお前も?」
「あぁそうだ伊達に5000年もぼっちで生活していない。そろそろ寂しいと感じてき始めておったのだ」
「でもあの願い、ただの気の迷いから出てきただけだから、気にする必要ないぞ。あと、天使とやらが暮らしていけるのか?人間とそのた動物しかいないぞ」
「だからソフィアスと呼びたまえ。そこに関しては問題ない。ここに住む予定だからな」
「は、何いってんの。そのシュークリーム食べ終わったら帰ってくれよ。気の迷いで友達がほしいとか言ってたけど、別にいらないから。あと、そんなの関係なしに、お前はめんどくさそうだ。顔はかわいいが無理だ。住む宛がないなら段ボールくらいならくれてやる」
「段ボール?」
「あぁそうだ、ご丁寧に"拾ってください"とまで書いてあげる大サービス付きだ」
「え、それって・・・・」
「気にすんな、保健所に連れて行かれたら見に行くくらいはしてやる。引き取りはしないが」
「完全にペットを捨てるようなクソ野郎の動きというかそれ以下じゃないですか!?貴方は悪魔ですか!?」
「いや、人間です」
「た、たしかに、悪魔でもここまではしないもんね・・・・。っておい、早速段ボールを用意するのをやめたまえ!」
「ちょっとしか関わってないが、本能がお前は面倒だと告げている。お前を飼うくらいなら、ペットショップに行ってハムスター連れてくるわ」
「飼うって言い方!!!!」
「お手」
ぽすっ
「いや、あの、これは条件反射というかなんというか」
「なるほど多少の言葉は通じる、と」
「いやいや、さっきから話しておるだろ!?」
「な、なるほど、住むなら対価がほしいというわけだな」
「いいです、帰ってください」
「なんでちょっとしか経ってないのにこんな嫌われてるの!?」
「さっきも言ったろ、お前は面倒事を持ってきそうな気がする。いや、お前そのものが面倒事の根源か?」
「そこまで言うことないだろ・・・・。まぁいい、対価は私の全て。これでどうだ」
「いいです、帰ってください。顔は好みだが、お前は関わったら確実に面倒になる気がするので。何度も言わせないでください」
「なんでも言うこと聞くから置いてくださいお願いしますぅぅぅぅ」
「ほう、今なんでも聞くって言ったよな」
「は、はい」
「よしわかった、今すぐ自宅へ帰れ!そしてもう来るな!」
「なんで、シュークリームをレジにこそっと置いただけじゃん」
「いや、なんでも聞くっていうなら潔く命令どおりに帰れよ。俺の日常にお前みたいなイレギュラー要素はいらないんだよ」
「あ、なら、シュークリーム代返すから!!!私、実は帰れないの」
「知らん、300円くらい、もういいから、帰ってくれ」
「あ、あの聞いてました?私、帰りたくても帰れなくて・・・・」
「なるほど。仕方ないなぁ」
「まって、段ボールに"拾ってください"って書き始めないで!!!お願いだから!!!」
「えぇ、ならもうそろそろ警察呼んでもいいですかね?」
「ん?別にそれは構わんぞ。ただ、君がヤバイやつって思われるだけに終わってしまうと思うぞ」
「チッ」
「今舌打ちしました!?」
「あぁしたぞ」
-5分後-
「・・・・・・あぁぁ、もういい、めんどくせぇ、いいよ!いてもいいよ、めんどくさい」
「ほ、ほんとですか!」
「ただし、部屋を貸すだけであって、食事とかは一切出さないからな。あと面倒事を持ってきたら帰ってもらう・・・あ、帰るところがないなら段ボールか」
「は、はいっ。って、段ボールは嫌ですよ!?」
「大丈夫だ、気にするな、いつでも入れるように準備しておいてやるから」
「ま、まってくださいぃぃ」
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